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泡沫の乙姫  作者: 飛白
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閑話『夢は掴めない』

 痛かった。

 吐き気に襲われ、胸がとても苦しくて痛くて、声は何かにせき止められているようにでない。


 夕凪がわたくしをお嫌いになられた。

 近付くな、そういいわたくしを荒んだ目で見てくる。


 わたくしを愛していると優しい瞳で見てくださっていたのに、魔女のせいでわたくしの人生は崩れた。


 まるで全ては夢であったかのように、綺麗に消えてしまっていたのです。


 名ばかり、体裁だけで、わたくしはここにいることだけを許されている。手が届く位置にあるのに、透明な壁があるから手を伸ばしても触れられるはずがない。


 こんなに近くにいるのよ。

 夕凪をこんなに想っているのに、なぜ、同じ様に夕凪はわたくしを思ってくれないのかしら。


 心臓を締め付けるような感覚が苦しい。

 抉るような視線を向けられる。まるで犯罪者や仇を見るようなその視線が昔の出来事さえ無かったように思えて、わたくしの幸せは全て夢の中にあったと言わんばかりに消えてしまった。


 夕凪がわたくしに愛を囁き、優しい目でわたくしを見つめ、その腕で抱き締めて、唇で愛でてくれた。

 幸せな日々が死ぬまで続くのだとそう思っていたのに、いとも簡単にそれは崩れ去った。


 魔女は気紛れで信用してはならない。信仰してもならない。愛してもならない。


 魔女は悪魔で、災害の塊。


 夕凪はわたくしの傍にいても、遠くて触れられない。心が離れて行ったきりで決してもうわたくしの元には帰ってこない。


 わかっているのに、わたくしは離れられなくて、愛されることをまた夢見て、想い続けて愛し続けて尽くし従う。


「夕凪」


 愛していますわ。

 全てを捨ててもわたくしは傍にいさせてもらいたい。


 他の女性を愛しても良いから、わたくしと一緒にいてほしい。わたくしを捨てないで、側に置いてくださるだけでいいのです。


 まだ、夢をみていたい。

 とても幸せで幸福な夢物語を見ていたいわ。


「助けて」


 こんなのは嫌。

 もう戻りたくない。


「許して」


 もうわからない。

 わたくしは、わたしは、ナニガシタカッタ?


 何を、望んで。


 あの頃に戻りたい。

 何も知らない。


 災害に出会う前のわたしに戻りたい。


 夕凪。

 わたくしは、アナタの為なら、ナンダッテスルワ。


 だから、わたしをスクッテくれますわよネ。


 この赤いくさりを切ってください。


 頭がもう、グシャグシャ。

 もう、わからない。


 わたしの本当の夢はなんだったのだろうか。



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