君は誰よりも美しい
髪飾りを買おうと思った。
最近、髪を良く結ぶようになった砂姫に贈りたい。
綺麗だ。
素直に思う。髪の結び方次第であんなに変わるとは知らなかった。
「砂姫」
やはり妥協は出来ない。
見栄えは大事だ。綺麗な砂姫を他の男が見るのは嫌だが、おしゃれは女の嗜みだと魔女は言っていた。
贈るなら、見栄えの良い物がいい。
高くても不格好な物は駄目だ。安くて見栄えが良くても壊れやすければ意味がない。
貯めていた金は大抵、俺の壊した物に消えてしまうが、それようの貯金であって、俺の自由に出来る金もある。
砂姫は花の種や肥料、家の花壇に使っていたりしているが、やはり消耗品と化した皿などを買ってもいるようだ。
まあ、俺はほとんど消耗品を買っていたが、今回は砂姫に身につける物を買いたい。
指輪は土いじりとかに邪魔になるだろうし、首飾りも考えたが、砂姫が髪を結ぶようになってからは髪飾りを買おうと決めた。
愛する人に贈り物をする。
したことはないが、女が恋人から何かをもらったなどということがあった。
「これ、包んでくれ」
銀細工の髪飾りだ。小ぶりな花がいくつか彫られていて、花の中に小さな真珠がはめ込まれている。
代金と引き換えに包装された髪飾りを受け取り後は気をつけて持ち帰るだけだ。砂姫の迎えに行ってすぐ渡すのは駄目だ。人目もあるし、愛を囁いても顔を真っ赤にさせるだけで囁き返してはくれない。
砂姫の働いている先に迎えに行くだけだ。俺としてはすぐに渡してしまいたいが雰囲気は大事だと散々言われている。
人前では恥ずかしいだろうし、俺にはよくわからないが、その仕草も愛らしい。誰にも見られたくないほどだ。
俺は砂姫を愛している。
魔女は束縛は相手を慈しんでいないという。自分の自己満足でそこには自己愛しかないと、愛を思っての愛ではないと言った。
相手の自由に、好きなことをさせるのが一番良いのだと、それを見守ることも手助けするのも必要で大事だ何だと長々と話していた。
砂姫は花を愛でるのが好きなようだった。土をいじり、水を毎日こまめにあげて可愛がっている。俺はその姿を見るのは嫌いではないが、それが俺に向けられていないのが癪に障る。
だが、何かを見るたびに何かを連想するらしい。俺が初めて歩けるようになって行った場所は魔女が言う粗末な野花の花畑だ。
一緒に花壇を見ていると度々その話をするから思い出すのだろう。
髪飾りも俺を思い出す品になる。そして毎日付けてくれるだろう。
「あ、氷雨様」
ふわっと笑う。
柔らかな微笑みは美しい。
「帰ろうか、砂姫」
「はい、ちょっと待っていてください。荷物を取ってきます」
そわそわと動く砂姫に近くにいた人間にからかわれていたらしく、頬を染めた砂姫がお待たせしました、と恥ずかしげに言った。
きっと似合う。
受け取る姿とすぐに髪飾りを付けてはしゃぐ砂姫を思い描くと自然に頬が緩んだ。
「何か良いことがありましたか、氷雨様」
「これから、良いことがある」
そう言えば顔を真っ赤にして俯き、人目がなくなったからか腕を絡め寄り添ってきた。
明日は髪飾りが髪に飾られるだろう。
今日は可愛らしい砂姫を愛でよう。
そして言うのだ。
誰よりも美しく綺麗だと。




