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泡沫の乙姫  作者: 飛白
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貴方は私の自慢です

 ふぅと息を吐く。

 じんわりと吹き出す汗を手拭いで拭き取る。


「砂姫ちゃん、そろそろ休憩にしましょうか」


 花屋での仕事は充実している。

 魔力が増えたことで魔法の幅が広がったけど慣れないことはやはりとても疲れる。

 元が人魚であるだけに水と相性がいい。土や火は駄目ですが。


「それにしても砂姫ちゃんの旦那様は優しいわよね。いっつも送り迎えしてくれるじゃない」


 羨ましいわ、と続けられる。花屋でおばさま達に囲まれてそんな話をされると恥ずかしい。

 氷雨様はとても格好良くて優しくて素敵ですから。


「ちょっと顔は怖いけど」

「最初は最低暴力男かと思ったけど。砂姫ちゃん、いつも痣があったから」


 誤解を解くのが大変でした。その変わりドジっこになってしまいましたが、氷雨様が誤解されるよりは良いです。

 それより私は一度も氷雨様に怒られたこと何てありませんし、氷雨様の顔は怖くないです。


「氷雨様は私にとても良くしてくださいます」


 壊れ物のように優しく優しく。

 私は愛されています。


「アタシ達、前から思ってたけど旦那のこと様付けなんだね、砂姫ちゃん」

「はい」

「「「駄目だよ、そりゃ」」」


 揃ってだめ出しされてしまいました。

 何がいけないのでしょうか?


 首を傾げて考えても意味が分かりません。

 何か可笑しいのでしょうか?


「旦那になったんだから、呼び捨て」

「アナタ、なんて呼んでも良いんじゃない」

「旦那様だって結婚したら違う呼び方されたいんじゃない」


 違う呼び方。


「砂姫ちゃんの旦那、美形なんだから結婚してたって女が寄ってくるよ」

「そうそう、魔が差したなんてこともあるかもしれないじゃない。ちゃんと歩み寄らないと」


 歩み寄る。

 私は氷雨様に歩み寄ってなかったのでしょうか?


「後は砂姫ちゃん美人さんなんだから着飾ってたら男なんてコロッとまた惚れ直すわよ」

「夜はうまくいってるのかい?」


 もう顔を赤くするしかない。

 着飾るには金銭的な余裕はないですが、氷雨様に綺麗に見られたい。


 もっと私だけを見ていてほしい。


「まあ、毎日のように送り迎えに来てくれて悪い虫追っ払ってくれる健気な旦那様は砂姫ちゃんにぞっこんなんだろうけど」


 乙女のようにキャッキャッとはしゃぐおばさま達についていけない。


「そんな旦那と結婚出来て砂姫ちゃん幸せでしょ」

「はい」


 私の自慢の旦那様です、と言えば当たり前でしょと笑われてしまった。


「重い荷物は運んでくれるし、瓦礫は片付けてくれるし、本当に良くできた男だよ。家の旦那も見習ってほしいわ」


 やっと話がそれてホッとする。

 楽しげに雑談を楽しんでいる姿を見つめる。


 氷雨様は私の自慢の最愛の人です。

 それに嘘偽りはありません。


 私も貴方の一番であり続けたい。

 とりあえず、髪型を変えるところから始めましょう。


 だから、惚れ直してください。



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