小話『泡になった可愛い妹』
アタシには姉妹がいる。
二人の姉に一人の妹。
上の姉の水月、下の姉の水尾、アタシは水花。そして妹の水姫。
水月姉さんは綺麗な真ん丸い月みたいな金の瞳、水尾姉さんは綺麗な水色の尾鰭、あたしは美しい漆黒の髪、水姫は美しい声を持っていて、人魚の国では知らぬ者がいないほどの美人姉妹だ。
お淑やかな姉と人見知りがある大人しい妹。活発なアタシはよく色々な場所に行って姉に叱られていたからか妹は何をするにも遠慮がちで消極的な妹を見かねてアタシが連れ出したのがいけなかった。
よほど外の世界が楽しかったのかちょくちょくと逃げ出して冒険に明け暮れていたが、どれも美しい景色ばかりを見ていた。
アタシよりは安全立ったはずだった。
「水姫が人間に恋を?」
信じられない。
だけど、水姫は魔女と契約し、声を奪われ、その男との恋を成就出来ずに泡になり、いなくなった。
アタシは契約をした魔女を探したけどどこにも魔女はいなかった。魔女は海の中で見ることなどない。魔女は人間と同じ姿形をしていてアタシ達とは違うから普通は来ない。
アタシは妹を、水姫を探して海を駆けずり回ったがついに見つからずアタシは諦めて止めた。
大切な妹を諦めた。
アタシも姉さん達も結婚をした。
幸せな家庭を築いて、姉さん達は子供も出来ていた。
時間の流れと共に水姫を忘れていた。
妹がきっかけで人間との縁を切り、悲しみに暮れていたのが嘘のように忘れ去られていた。
「泡の姫は鮫と共に陸へと上がった」
ちょうど、その時に白金の魔女が現れた。くるくると海を二足の脚で器用に回る。異質で気味の悪い魔女。悪質とまではいかないが妹を泡にした魔女と同じ魔女。
「私との契約により人間の姿形に。そうでもしなければ結ばれる種ではないし、例え結ばれる種であっても力の差は歴然。相手は灰に帰す」
人間嫌いで一番海で有名な魔女。
白金の魔女。
「私に愛させてくれ」
異様な程に異常。
「あの人の夢や希望を、この私にっ、愛させてくれ!」
異常に美しい異物。
「何よりも望んでいるのだ、そうしろと煩くては叶わない」
異物だからこそ。
「美しい歌姫」
美しい。
ハッとその言葉に我に返る。同じ女に見惚れるなんて屈辱だ。
「破滅を呼ぶ鮫」
歌姫は妹を指す言葉だ。
鮫はきっと海の悪魔を言っている。
「君達に私の命運が掛かっている。呪縛から抜け出し、呪縛を解いてくれたまえ」
不気味な魔女。
思わずまた見惚れそうになるが狂いきっている。
ここで立ち去るわけにはいかない。
妹を知っているなら、アタシは絶対に聴かなければならない。もう諦めて忘れ去ったりもしない、アタシは今度は諦めないから、水姫に会いたい。
会って謝りたい。
「ちょっとアンタ、話があるんだけど」
水姫。