私は貴方を独り占めしたい
「会ったのですか、姉様に」
氷雨様の腕の中で私は不安に思った。
きっと氷雨様が会ったのは水花姉様だ。
お預け状態になってしまった氷雨様は私を膝の上に乗せて腕の中に閉じ込めて、すんすんと私の匂いを嗅いでいる。
突然と来た月の使い。不定期なそれが今の私を不安定にさせる。
「ん、話はしなかったがな。早く砂姫に会いたかったから無視した」
「そうですか」
ほっとする自分がいて嫌いになりそうになる。泣きたくなってしまう。
とても醜い。
姉様が気にかけてくれることは嬉しいけど、氷雨様に二人きりで会ったことが許せない。
私だけの氷雨様なのよ。
勝手に会うなんて酷いと思ってしまった。
「どうした、砂姫」
私を嫌いになるかしら。
こんな醜い嫉妬をする私を嫌いになるかしら。
私よりも姉様を取るのではないかと疑う私を軽蔑するのではないだろうか。
「氷雨様」
考えれば考える程に深見に嵌まって抜け出せなくなってしまう。
「どうした、砂姫」
最低の女だ。
私はどうしたら。
「氷雨様」
私は貴方を愛しています。
貴方の優しさを私は知っているから。
「愛してます」
好きです。
大好きです。
だから、こんな私を嫌いにならないで。
「砂姫」
優しい声。
「何考えてるか知らないがな」
ピクンと身体が震える。
「俺は砂姫を愛してる」
ギュッと力強く身体を抱き締められる。
「昔も今も、これからだって変わらない真実だ」
「氷雨様」
「君の愛を乞うためなら何だってしてみせる」
優しい声。
どこまでも私を愛してくれる人の声。
「それに不安なら吹き飛ばしてやるよ」
不適な笑みを浮かべて私を横抱きに抱えてベッドに向かおうとしていると気付いた時には顔が真っ青になる。
「やっぱり、お預けなんてねえだろ」
艶を帯びた顔が綺麗で、ドキッとする。
それに甘い声で囁かれたらどうしようもなくなっちゃう。
「シたい、砂姫」
「酷いです」
求められるのは嬉しい。
嬉しすぎてしょうがない。
「今度は私も連れて行ってくださいね、氷雨様」
姉様に会いたいわけではない。
会いたくないわけでもない。
ただ今は氷雨様といるだけで幸せで、そして二人きりだけの方が幸福。
邪魔されたくない。
私には氷雨様しかいない。
氷雨様でしか満たされない。
「絶対ですよ」
「ああ。わかった」
疑わなくてもいい。
氷雨様は絶対に私を愛していてくれる。
昔からずっと深い海の中のように、私に語りかけて見せてくれる。
新しい世界を、美しいものを、そして何よりも優しくて暖かい貴方の真摯な想いが、大好き。