明日はきっと、猫好きに。
この話は「私は当分犬好きで。」の続編と言いますか、シリーズです。
この話だけ読んでも大丈夫だとは思います。
隣の窓際の席で、中原ネズ子がフィシュバーガーを食べている。
風上なので私の所まで魚の良い匂いが届く。
「これが、ネギがカモをしょって来る。と言う現象か・・・・・」
「え ? ねぎが ? 」
私の名前はヤナギ=アルトレオ=ド=モンフォール(以下略)。
通称「猫柳」
今の男子高校生という立場は仮の姿。本当は、頭上に灰色猫耳を頂く異世界人だ。
目下、私の使命は犬好きのネズ子を何としても猫好きにするという事。いや、「猫が好き」という言葉を口にするだけでも良い。
そうすれば異界のゲートを潜る権利が得られるのだ。
ネズ子。魅惑のハムスター似の女。一瞬で私を魅了し、惹きつけて離さない。丸く悩ましい目がキョトっと動くだけで、動悸がする。最初は病気を心配し、循環器外科を受診した。結果は異常無し。
今ならば分かる。これは『恋』と言う物だ。
この私が恋 ? 笑ってしまう。
しかし、ここまで来たら認めない訳にもいかない。
ネズ子の、あの白く細い首に噛み付き振り回したら、あの薄いが柔らかそうな腹を手で押さえつけ舐め回してやったら・・・・・・・そう思うと、口腔内に唾液が溜まる。
「王子、よだれ」
「何 ! 」
私は急ぎ口元に手をやるが何も無い。
「シマ。変な嘘を付くな。それと学校では猫柳と呼べと言っただろう」
「王子こそ。俺の事は、猫島でしょう」
まったく、ああ言えばこう言う。こんな従者連れて来るのではなかった。幼馴染なので、私に対して遠慮の欠片も無い。
「最近、王子変ですよね。もしかして発情期ですか ? お赤飯ですか ? 」
「失敬な。私は発情期なぞ関係なく常に臨戦態勢だ」
「はははははっ、下半身の犯罪は犯さないで下さいね ! 恥ずかしいんで」
「ふんっ ! お前のような、ゆとり教育の猫には到底マネ出来ぬことだろう」
「私と王子、一つしか歳違わないじゃないですか ? それに、マネしたくないです。恥ずかしいんで」
こいつを連れて来たことに、百数回目の後悔をする。
―――――休み時間。
ミッション【32】ネズ子を猫好きにする。を、決行する。
先日の失敗を考えて今度はちゃんと、授業時間外を選んだ。
教室を出てしまったネズ子を追って廊下を早足に急ぐ。渡り廊下の先の一室に入るのが見えた。
―― バンッ ! ――
私はドアを思い切り勢い良く開け、中に居たネズ子と向き合った。
「ネズ子。これを受け取れ」
「 ! ? なっ ! えっ ! ? 」
「美猫写真集だ。お前には少々刺激が強すぎるかも知れんが、これで少しでも『猫』に歩み寄って欲しい」
頭頂部の耳がピンッと、『立った』のが分かった。緊張しているのか ? この私が。
「あっあのあの・・猫柳君 ? ・・・・・ここは駄目だって、それに私はスズコ・・」
またもや否定の言葉。
これならば先日討伐した、やたらと大きいトカゲ(ドラゴン?)の方が容易かった。
お前なぞ、私の胸にやっと届く位の身長しかないくせに。
こんなに小さいくせに。何と手強いことか。
しかし私は諦めん。一国の王子で在り、騎士でも在るこの私に諦めと言う言葉は無い。
( 訳: 私は、かなりしつこい性格です。)
「頼む。感想文を求めたりはしない。だから―――― 」
「だから何だ ? 猫柳。・・・・貴様・・白昼堂々、痴漢行為とは・・(怒)」
後ろに赤い顔をした教師が立っていた。
「何を言っている ? 」
「お前は、ここをどこだと思っている ! 」
チラリと入り口の表札を見た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・女子更衣室」
そう言えば、女どもがキャー、キャー言っておる。
「猫柳、分かっているな・・・・・・・(怒)」
「くっ ! 生活指導室。了解した。・・またもや、ふかくっ ! 」
「どこの武士の人ですか・・・・」
ネズ子よ、私は武士ではない騎士だ。
そんなこんなだが、私は決して諦めない。
「猫が好き」と、必ず言わせてみせる。たとえどんな手を使っても。
ネズ子よ、明日はきっと猫好きに。
長編の方が辛くなって来たのでしょうか?短編の続きばかり考えてしまいます。短編も続けば長編なのに・・・・・あれ?訳分かんなくなって来た?