遠く、遠く
これから新しい生活が始まる全ての人に…。なんて大したものじゃないので、気軽に読んで下さい。
私はあと何年したら区切りがつくんだろう。
私は電車を待つ間、東京に来た時の事を思い出していた。
「頑張れよ〜!」
駅のホームに集まった私の友人達。
私は歌のオーディションを受けに行って、見事受かったのだ。本当に嬉しかった。昔からの夢が叶った。合格通知を受け取った私はその場で泣き崩れてしまった。
私はその為に東京に行く事になった。今日はその見送りにみんなが集まってくれた。
「東京行っても俺らの事、忘れるなよ」
「有名人と知り合ったら紹介してよ」
皆それぞれが私に一言言ってくる。私もちゃんと一言一言をかみ締め返事を返した。
そして私は生まれ育った町を出て行った。
それからの私は必死に頑張ってきた。でも歌もあまり売れず、所属事務所からもほとんど見放されてる状況。今はバイトの収入だけで暮らしている。
そんな日が続いたある日。親から電話がかかってきた。同窓会の案内状が届いたそうだ。
「どうせ暇でしょ?」
母のその言葉にカチンときたが、その通りだったので私は同窓会に行く事にした。
私は駅のホームのベンチに座っていた。手には一応家にお土産としてひよこ饅頭を持っていた。
そしてホームに電車が入ってきた。私は立ち上がった。
その時、私の目の前をある物が横切った。
桜の花びらだ。
気付かない内に春だったのか…。
その花びらを見て、私はあの東京に来る日のことを思い出した。
携帯を取り出し、家にかけた。
「ごめん。やっぱり私同窓会欠席するね」
携帯を閉じて私は歩き出す。
もう少し頑張ってみよう。遠くにいる私がみんなにわかるように。
いつかあの町に胸を張って帰れるように…。
元のネタは槙原敬之さんの『遠く遠く』と言う曲です。僕はこの曲は今の季節にぴったりだと思います。一度聞いてみて下さい。 余談ですが、ひよこ饅頭っておいしいよね。