第七話 収集家
話し終えると同時に一人の男が侵入者に2本の長剣で飛びかかる。
「いやいや、せっかちは嫌ですよ。」
侵入者は余裕を持って自身の得物である身の丈ほどある鎌で
その攻撃を防ぐ。
「ふむふむ、この特徴的な二刀流に、隻眼 あなた“双牙”ですね。」
その問いに答えることなくひたすら攻撃を続けていくが
侵入者の守りを崩せない。
「ですが、残念ながらあなたでは私に勝てない。」
そう言った瞬間巨大な鎌を振るい長剣をはじく。
体勢を崩した男に返す刃で首を刈ろうとする。
キンッ
そこにすかさず衛兵のフォローが入る。
他の衛兵たちは何人かを残し
パニックに陥っている客たちをなんとか誘導して会場から出そうとしている。
うちの姫さんは俺の隣でおとなりでおとなしくしている。と思ったら
「カイ、お前あいつを狩ってこい。
ではな。我も加勢したいがこの格好と立場でわな。」
物騒なことを言ってきた。
「いやいや十分たりてるでしょう。」
「あほう、お前も分かってるだろう。あいつらは時間を稼いでいるだけだ。
ここにいる会場の衛兵全員でも勝てないことが分かっているからな。
お前がいればその時間が延びる。さすがに奴も軍隊とは戦わんだろう。
「知っているんですか。」
「お前が知らないことにびっくりだよ。この常識知らず。
奴はかの有名な“収集家-コレクター-”懸賞金2億6000万だよ。」
そう言って姫君が誘導に従い会場を出ていく。
さて本格参戦はしないけど援護ぐらいしてやるか。
会場では2本の牙が必死に死神の鎌を防いでいる。
それを援護していた衛兵も既に首がない。
双牙はいたるところに切り傷ができ、すでに息も上がっている。
奮戦も続くがそれを死神が許さない。
そして高速の鎌さばきで長剣を二本とも弾き飛ばす。
「今度こそ、さよならです。」
そう言って首をはねようとする。
が、突如そこから瞬時で離れる。
死神が先刻までいた場所には何本かのフォークが刺さっていた。
「悪いな。次は俺と踊ってもらうぜ。」
死神が目を向けた先には一人の刀を構えた少年が立っていた。
「おっさん、さっさと退却しな。」
「しかし、君一人では。」
「手負いであれの前に立てるか?
悪いがあんたはもう無理だ。」
「……分かった。」
そう言いながら双牙はしぶしぶ撤退する。
「ずいぶん紳士じゃねえか。
話終えるまで待っててくれるなんてよ。」
「あなたが全く隙を見せずにこちらに
殺気をだだもれにしてくるからでしょうに。」
「あぁ、悪いね。ちょっち気がたかぶるんでね。」
さっきから、久々の強者との殺し合いの匂いに昔を思い出す。
「そうですか。 しかし、こちらも撤退させてもらいます。」
「……俺の首を取りに来ねえのか?」
「それは非常に魅力的なんですけれど、
残念ながらあなたは強者だ。匂いで分かる。
あなたを殺すにはいささか時間が足りなすぎる。」
「では、さようなら。」
死神が去っていくのを何もせずに見送る。
ここで戦っているのを目撃されるのは面倒だ。
程なく援軍がくるだろう。
収集家かまた縁がありそうだ。
「双牙殿!」
「カイ!」
どうやらうちの姫さんもきたらしい。
ようやく長い一日を終えた。