第六話 祝宴にて
付き人となって少したったある日、姫から衝撃的なことを伝えられた。
「ぱーてぃー?。」
「あぁそうだ。 我も皇族としての責務を果たさなければならぬのでな。
大貴族の祝宴にはでなければならぬのでな、お前の顔見せにも
ちょうどいいし、ついてこい。」
「しかし、自分はまだ作法なども不完全なので
セリーヌさんをつれていくのはどうでしょうか?」
「あのな、我の付き人はもうセリーヌではないのだ。
お前なんだぞ。 黙ってついてこい。」
姫君はあきれたように言った。
「はい、それではついていかせてもらいます。」
「よろしい。」
…………4日後 舞踏会当日
ノースゴーダ家の長女の18の誕生祝いパーティにやってきた。
俺は黒一色の燕尾服をきて、メイドに着付けしてもらってる姫様を待っている。
会場内は既に多くの貴族で賑わっているだろう。
立場上、俺たちはあまり早く行くのは好ましくないから。
ぼんやりとそんなことを考えていたらどうやら着付けが終わったようで、
扉が開く。
出てきたのはいつもの荒々しい美ではなく、静かな美を纏う姫様だった。
青を基調としたドレスに姫の美しさを引き立てるような派手ではないが、
素晴らしい宝石を身につけ髪はいつものポニーテールを下している。
そんな姿はまさに“姫”だった。
「どうだ、我は。」
おとなしくない言葉づかいがいつも道理でだいなしだったが。
「言葉づかいでだいなしです。」
「む、いいではないか。 中に入ったら嫌でも変えるのだからな。
それよりどうだ、美しいか我は?。」
「えぇ、綺麗だと思いますよ誰が見ても。」
「三者の目ではない。主の目で見てだ。ん~」
ニヤニヤしながら聞いてくる。
「……綺麗ですよ。」
「よしよし。」
満足そうにうなずくとそのままスタスタと歩いていく。
「早く来い。」
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会場に入ると既に貴族たちでにぎわい
姫の姿を見かけると次々に賛辞をおくってくる。
姫はそれをいつものような威厳あふれる態度ではなく
あくまで招かれた令嬢として完璧に応対していく。
「意外か?」
その姿に驚いているのに気付いたのか姫がカイに話しかける。
「えぇ、正直おどろきました。」
「まぁ我とて一国の姫だからな、これくらいは造作もない。
見え透いた世辞はうっとおしいがな。」
「なら、どうして自分に聞いたのですか。」
その問いには答えず顔をそむける。
その横顔がカイには少し赤く見えた。
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姫が応対するのをぼ~と眺めていると一際会場が沸きあがった。
どうやら主役の令嬢が出てきたようだ。
紫の瞳と髪をもつ美人が前に会場の前方に出てくる。
「本日は私のためにお集まりいただきありがとうございます。
楽しんでください。では乾杯。」
「「「乾杯」」」
祝宴はひたすらなごやかに進んでいた。
だが警戒だけはとかない。
嫌な雰囲気がどこからか匂うからだ。
羨望、嫉妬、親愛、喜色 会場にあふれる様々な雰囲気を感じるが、
これだけは分かる。
殺意を持つ人物がいる。
小さな匂いだが確実にいる。
しかし特定できない。 かなりの手練と思われる。
姫君の後ろで警戒しながら誰かを探していく。
「あなたはどう思いますか?」
話しかけられ一瞬気がそれる。
瞬間、殺意が大きく膨らむ。
そして、
ガシャーーン
何かが割れる音がすると同時に声がする。
「こんにちはみなさん そしてさようなら。」
「フギャ。」
話し終えると同時に何かが来る姫君を押し倒し床に伏せる。
「我だって気付いていたぞ。」
何やらプンスカしている気がするが無視。
立ち上がると何人かは死んだようだがほとんどが護衛によって防がれている。
声の主が姿を現し周りを見渡しカイたちに気がつく。
「おやおや、まだまだ生きている人たちがいますね。
はい、喜ばしい事です。あなたたちは私のコレクションに加えましょう。」
我ながら展開がへたくそだ