第二話 ここでは
意識が目覚める
金髪の男性と女性が自分をのぞきこんでいるのがわかる。
「カイ、君の名はカイだ はじめましてカイ 君の両親だ」
そう言って覗き込んできた目は喜びにあふれていて、とても優しくて
心がとても安らいだ。
「はぁ、はぁ なんだってんだ畜生」
男は“何か”に追い立てられていた。
始めにいかにも表出身な男女を見たとき、歓喜に満ち溢れた。
取引に使えそうなものを表は絶対持ってるからだ。
しかし、そいつら近づこうとした瞬間、“ここ”で培った本能が警鐘を鳴らした。
その本能を信じ慌てて、離れていく。 しかし、離れても離れても悪寒がする。
そして、追いかけてきた気配が突然消える。
ドシュッ
止まった瞬間、胸から刃が突き出る
「畜生がぁ」
男は自身の不幸を呪いながら死んだ。 その背後に一人の少年の姿があった。
俺が生まれてから15年の時が経った。
ここは、元の世界でいうスラム街のようなところだ。
盗み、殺し、強姦……ここは暴力が支配するところだ。
そこで俺はひたすらに自分を鍛え上げ続けた。 殺しだってしたくなかったが
絶対に必要になることは、分かっていたから襲ってきた奴を殺した。
最初の頃は吐き続けた。 しかし今となってはもう生きるために躊躇わなくなった。
ここには、魔法が使える奴が強い。 そりゃそうだ、弱い奴らが群れても
一発の魔法で全滅することなんてざらだ。
残念ながら俺に魔法は使えない。 しかし、神様のおかげで身体能力も異常に高いし
刀も呼び出せるし、それを扱う才もあった。
刀はどうやら腕前で能力が変わるらしく、最初は単なる鈍刀だったが
才のお陰かどのように鍛えればいいのかわかるのでひたすらその感覚にまかせて
振り続けた。 すると、どんどん切れ味が上がってきて今では鋼鉄ですら斬れる。
刀の扱い方に関しては分かるが、戦いの運び方まではわからないので
ある男に師事した。 その男の教えとひたすら実践をこなすことで
かなりの実力を手にすることができた。
鬼についてはまだよくわかってない。 ただ、いままでから毒、呪いにたいして
絶対的な抗力があるらしい。 毒の耐性をつけるために、毒を飲んでみたが
なんともなく、一度致死性の毒や呪いをかけられたがなんともなかった。
死にかけたことも数多くあった。
男に師事したのもその男に完膚無きままに叩きのめされたからであって
生き残れたのも男の気まぐれに過ぎない。
だが、生きている。
男の師事する条件としての対等以上になったとき本気の殺し合いをすることも叶えた。
ぎりぎりで俺は命を拾い男は死んだ。
俺は今ではここらではかなり強い。 最強クラスだ。
おそらくここら辺に俺がいるとわかっていて手を出す奴はほとんどいない。
俺の両親に手を出そうとしたら、俺が来るのは有名なので手を出す奴はめったにいない。
さっき狩った奴はおそらく知らなかったのであろう。
今更だが俺の両親はかなり平和ボケしている。
ここにいて、未だに人は助け合うべきとか考えてそうだ。襲ってきても倒すだけで
殺しもしない。 盗みもしない。ならば何で生計を立てているのだろうか?
おそらく取引だろうが、何を取引してるかまで見えるほど近くに行かないし、
俺たちが住んでるところでは、俺が寝静まってから何かを作っているらしいが
教えてくれないので、あえて聞こうとしない。
しかし、俺の両親はなんなんだろうか。
表の住人にしても気品が違うし、どこかの没落貴族なのだろうか?
ここに長年住んでいるため、大体の情報しか流れてこず、どこかの貴族が
つぶされたなんて入ってくるはずがない。
なにはともあれ、両親には早くここに順応してもらいたい
もう無理だろうが