第十話 始まり
「貴様、守るべき役目につきながら姫様に刃を向けるとはなんのつもりだ!」
模擬戦を終了した後、やってきた男に押しよられる。服装からして
近衛騎士であることが分かる。
「姫様に模擬戦を申し込まれたので。」
「姫様はこれからまた他国に向かわれるのだぞ!
それを真剣を扱っての模擬戦など……
申し込まれたなら断るべきだろう!」
他国?何のことだと思いつつも答えを返す。
「姫様は大層興奮なさっていたそうで。
もし断ったのなら城の中で襲いかかってきそうな勢いだったので
ここでする方がまだよろしいかと思ったので。」
「それならば、周りに止めるように要求すればいいだろう!
もういい、このことは陛下に報告する。」
そうまくしたてるようにいい騎士は去って行った。
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予告通り陛下に報告したようで陛下の御前に呼び出された。
騎士の言いようから俺に罰を与えるだろうから厳しい顔をしていると思いきや
厳しい顔をせずそれどころか柔らかな笑みを浮かべている。
またその周りの俺に突っかかってきた騎士を含めた近衛騎士は
苦い顔をしている。
「カイ・レヴィナブルグ参りました。」
「うむ、ごくろう。
先日、第三王女と立会人なしに真剣を使い模擬戦をした件だが……
不問とする。」
その言葉に周りがざわめく。
かくいう俺も驚きを隠せない。
陛下はそのまま言葉を続ける。
「まず、模擬戦を申し込んだのは王女であること。
次に周りにいた使用人の話からも王女は感情の制御が効いておらず、
模擬戦を断ったのならば城内でも始めかねないことが分かっている。
これらの事柄より、そちが王女を抑え込んだからこそ
城内に被害がでなかったともいえる。
よってカイ・レヴィナブルグに関しては不問とする。」
確かに辻褄はあっているがこれでは……
「次いで、第三王女の処分について。
高い地位にありながらその行動の重さを理解せずの行いは看過できないものとして
本来ならば共和国への訪問としていたが、それを第二王女に変更。
第三王女は一週間の謹慎の後、第八王女に代わって皇国への訪問とする。」
その決定により場がざわめく。
そして、一人の男が異議を唱える。
「陛下、皇国にいくのは危険すぎやしませんか!」
「そのための近衛であろう。
連れていくのは6人どれもが団長が選んだ精鋭だ。」
「近衛を軽視するわけではありませんが、
それでもあの国へ渡るにはかなりの危険を伴います!」
「ふむ、第三王女はさすがに兵力にいれられないしの、
あそこは人数をつれていっても質が伴わなければすぐ死んでしまうしの。
どうしたものかの。」
そう言葉を切り不意に俺の方をみてニヤリと笑う。
「お主にいってもらおうか。」
はい?
「陛下! ふざけないでください!
近衛以外の者から皇国に連れていくなど我々も面子というものがあります!」
「ふざけてなどおらぬ。 お主たちでは第三王女に勝てない。
しかし、そやつは怪我さえさせずに勝って見せた。
これだけで十分であろう。」
「うぐっ。 ……分かりました。
しかし、認可試合だけは我々のみでやります。」
「分かっておる。
では、カイ・レヴィナブルグ お主に皇国への同行を命ずる。」
諸事情によりこれから3月中旬程まで更新速度がさらに落ちます。
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