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魔人諸島〜魔物になった者の生き方〜  作者: 飛鳥川碧希
第1章 魔物と人間編
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第6話 龍の宿りし拳

「で?あたしに何か用があるのかい?」


有紫亜が来たのは、さっきまで洋風が広がっていた家から打って変わって、まるで研究所のような場所。

 そんなところに、ある一人の人物をした人間がいた。髪は黒色で、髪形はポニテール。今は眼鏡をしてまるで研究員かの様な姿だ。

 彼女の名前は、美甘杏奈みかもあんな。鳳城騎士団の"唯一回復技を持っている"人である。

 失った腕なども、美甘の力を使えば治すことができる。しかし、一度死んでしまったものは生き返ることができない。


「はい。今回は、"喋る魔物"を入手したため、調べてほしいのです。」

「喋る魔物?そんなもの、大して珍しくもないのになんでそんな…」


嫌がる美甘に、有紫亜は静かに視線を送った。


「…わかったよ、ただし貸し一だから」

「わかってます」


さっそく体全体が傷だらけの暉を美甘の近くまで持ってきた。


「と、とんでもなく血だらけじゃないか…大丈夫なのか、これ」

「私のために戦ってくれた傷です…」


有紫亜は悲しそうに言う。

 そして、美甘がみたのは、とんでもない事実だった。


 ―美甘の回復能力というのは、体を治す、というよりかは、魂を癒やす、の方が言い方が正しい。魂というのは、生命力が低くなれば低くなるほど、小さくなり、光が弱くなっていく。美甘は、その魂を、自分の魂の光を相手に少し移すことができるのだ。

 そのため、一辺に回復することはできずに、回復能力を使うと美甘自身も魂の光が弱くなってしまうため、命の危険性もある。


「なんで、魂が二つあるんだ…」


 一つは、温かい光で包まれた人間の魂。こちらは、普通の魂よりも小さい。弱っている証拠だ。

 そしてもう一つは…どす黒い、悪魔のような魂。まるで魔物のような何か…しかしただの魔物ではない。下手をすれば魔神級の力を持っているのだ。


 魔神というのは、魔物の中からほんの極一部生まれるかどうかぐらいの生き物。今までに人間の前に現れたのは、約五体。ほとんどは古文にのっている伝説の生き物だが、その魔神がでる古文というのは、どの古文でも必ず人間に対して滅亡一歩直前ぐらいまで追い詰めているのだ。


「ま、前に、魔神が発生したことがあったよな…」


美甘は有紫亜に問いかける。


「えぇ。魔法系の魔神でしたね」

「あれでも大分滅亡まではいっていたんだ。東京がまるごと死への命(デス・トピア)を打たれて、東京そのものが檻となってしまっていた」

「あれは、鳳城剣也率いる鳳城騎士団特攻部隊によって、なんとか沈められた…ですよね?」

「そうそれ!」


美甘は投げやりになってしまっていた。


「つまり、あの魔神と互角、もしくはその上をいくほどの強さ持ってるぜ、こいつの体の中の魂は」

「じゃあ、暉になったり魔神になったりするのはなぜなんですか」

「簡単さ、魔人諸島にいるときに"なんらか"の方法で、魔神が体の中に入った。そして、魔人諸島にいた人間に腹部をがっつり斬られた。それのせいだろうね。魂が今、その傷を受けて死ぬかの、爆弾ゲームをしている!だから魂が入れ替わったりしているのさ」


そう。暉が魔物になったり人間になったりするのは、腹部の傷を受けて、二つの魂で、どちらが腹部の傷で死ぬかを決めているのだ。


「まぁだから、残念だけど。この子に回復能力は使えない。このまま傷有りで戦ってもらわないと、いつか魔神に入れ替わっちゃう」

「じあ傷が治ったらどうするんですか」

「傷が治ったらまた傷をつけるか、何らかの体に魂を移すしか、方法は無いだろうね」


有紫亜は辛そうに下を向いた。


「ありがとうございました」


有紫亜は暉を研究所の外へと持っていった。

 美甘は思った。


(確かに、喋る魔物、魔神は魔人諸島の核心に迫ることはない。だがあの二つの魂。本来なら一つの体に二つの魂が入ることはまずない。どうやってはいった?魔神は魔法をつかえるのか?あぁーもう!頭が回らない!)


美甘はどっかからチョコが入った箱をもってきた。


「やっぱり考えた後はチョコよねー!」


といいながらチョコをバクバクと食べた。

 有紫亜は窓のそばまで行き、少し吹く風にあたった。有紫亜にとって、暉は魔人諸島としても、人間としても大切。それを管理する方法が痛めつけることが到底許せないのだ。

 暉は依然として寝ている。有紫亜は暉の寝ている病院用ベッドを触って言った。


「私が、私が見つけてあげるから…」


 ―そして今、有紫亜と暉は魔人諸島の緊急要請を受け、魔物と戦っている。

 さっき暉の龍の宿る拳を受けた魔物は、真っ二つに割れていた。血は出ていない。しかし、ゴキッという音を出すと、魔物の体は治り始めた。


そう、魔物は回復魔法を使っていた。


(普通の魔物は回復能力なんか使えない。言葉も発することはできない。これはまさか魔神だとでも言うの!?)


「暉後ろ!」


魔物は再生すると同時に右上の拳を硬めて暉に放った。間一髪で攻撃を避けることに成功した。ただ、いずれ劣勢のまま。魔物の後ろには叶絵がいる。どうすればいいのか。


「木室!」

「はい!」


有紫亜が木室を呼ぶと、木室は地面に石を使って魔法陣を描き始めた。魔法陣が完成すると唱え始めた。


「目覚めよ!瞬間移動!」


木室は叶絵に向けて指を差した。

そうすると、叶絵と小石が瞬間移動をした。気づいたら、叶絵は木室の描いた魔法陣の上に倒れていた。そして小石は、叶絵のいた場所にある。


 これは木室の能力。瞬間移動。魔法陣を描き、半径五〇メートルの物体を指を指すことで、魔法陣内にある物と、指を差した物の場所を入れ替えることができる。これが木室の能力である。とくにデメリットはないため、様々な用途に使うことができるが、魔法陣を描くまでの時間がかかる。


「ナイス木室!」


有紫亜は褒めた。そして、残るは魔物のみとなった。

正直、勝てるビジョンが全く見えない。攻撃をしてもすぐ回復魔法を使われてしまったらせっかく与えた傷も意味がなくなってしまうからだ。


(まぁいい!攻めあるのみ!)


有紫亜は刀を取り出した。刀を上に上げると、そこに雷が打たれた。


「有紫亜さん!」


雷によって周囲は煙に包まれた。

 煙が無くなると、そこに立っていたのは有紫亜。そして、何の模様もなかった刀が黄色を帯びた刀に変化している。


「私だって鳳城騎士団の総隊長!これぐらいなんともない!私とスピード勝負をしろ!魔物!」


刀を魔物に向けて言う。

 それを聞いて、魔物は鼻で笑った。


「私に勝つ、私に勝つ…だと…?人間風情が大分強くでたな。後悔しても遅いぞ」

「それは!どうかな!」


有紫亜は腰を低くした瞬間、すぐに魔物の一歩近くまで来た。魔物に刀が当たる、と思ったが、魔物には間一髪でかわされた。

 そして、有紫亜の周りに残像を作り出した。


「私に移動勝負を挑むとは、バカだったな!」


魔物はより加速していった。


「死ぬんだな!人間!」


そして残像は八つに分裂し、有紫亜に襲いかかった。


「有紫亜さん!」


暉が大きな声で叫ぶ。


「大丈夫っていってるでしょ。私は、」


刀を上げると、雷がまた降ってきた。


ドゴーン


雷が落ちると、その雷を魔物の周りに、円状に雷を出した。


「総隊長だから!」


暉はツバを飲んだ。自分よりも凄いと感心したのだ。


(凄い…!)


有紫亜の目の前に現れたのは、さっきの魔物。しかし魔物は焼き焦げている。手は炎に包まれている。


「人間…少しは強いやつも居るようだな」


まるで有紫亜を褒めるように言った。


「だが、私には勝てない。どんな人間でも…」

「有紫亜さん!逃げて!」

「安心しなってヒカルン」


そういうと、後ろから宮久保がやってきた。


「言ったはずでしょ?有紫亜は鳳城騎士団総隊長。これぐらいじゃものともしないって!」


魔物は燃えている手をピクピクさせ始めた。そうすると、魔物は刀を作り出した。炎をまとった刀だ。


「これで君を殺す」


魔物は有紫亜に燃えている刀を向けた。そうすると、魔物は腰を低くした。

 その瞬間、炎が線上に延びた。

 そう。魔物があまりの速さで有紫亜に攻撃したからだ。


「なんだ、当たってな、い…」


プシャァァァ


気づいた時には有紫亜の腹部から出血していた。


「グハッ…」


口からも血を出した。血は止まることを知らない。有紫亜は崩れ落ちた。


「有紫亜さん!」


魔物は言った。


「私は人間よりも強い。私は、あの山から生まれ、山にお言葉を頂いた。」


魔物は溜めるように言った。


「人類を滅ぼせと」


魔物は静かにそう言ったのだった…

魔人諸島の掟


6.魔人諸島へ調査をしにきた人は、必ず魔物討伐隊に連絡してから帰ること。

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