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魔人諸島〜魔物になった者の生き方〜  作者: 飛鳥川碧希
第1章 魔物と人間編
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第5話 汚れ仕事

―波が激しく打たれている。天候はくもり。しかし、あの奥の島からは雲が黒く、よどんでいる。あの山を中心に…


「おいおい、あれが魔人諸島かよ?」


横手宏一よこてこういち。この五人のパーティーグループのリーダーである。斬った相手を焼き尽くすほどの斬撃を入れることができる。


「そう、あれが魔人諸島、通称、"悪魔の孤島"です」


槌屋恭平つちやきょうへい。この五人のパーティーグループの魔法使いである。回復魔法や呪い系の魔法を使うことができる。


「もー!もうちょっと緊張感もって下さいよ!」


中ノ瀬叶絵なかのせかなえ。この五人のパーティーグループの光の剣士である。この中で唯一鳳城騎士団に入団している。


「…」


花川直美はなかわなおみ。この五人のパーティーグループの双剣使い。グループ内一の素早さをもっている。


「いつもより禍々しいじゃねぇか!わくわくすんなぁ!」


桐崎幸太きりさきこうた。この五人のパーティーグループの拳使い。流星のごとく放たれる拳はコンクリートを粉砕するほど。


 このパーティーグループは、とある広告によって集められた人間で組んだグループである。

 魔物を倒して売るというのは、汚れ仕事である。そのため、魔物を売る人を集めるのは必要な仕事でもある。


 そうして辿り着いた、魔人諸島。


「ようし!これから狩りの時間だぜぇ!」


リーダーの横手の一声で、全員が武器を持ち、構えを取った。何一つブレがない、完璧な構えだ。

 そうしてその言葉に気づいた魔物達は、こちらを向いて睨んでいる。

 それを見て、横手は笑って言った。


「よぉし!行くぞぉー!」


腹から出た声を境に、五人と魔物は戦いを始めた。


 ―数分後、魔物は倒しても倒しても湧き出てくる。剣で魔物を斬る音、魔法を使って、魔物を倒す不気味な音。拳で魔物を殴る音、様々な音が響き渡る。


「オラァー!!」


横手が剣を振り下ろすと、剣から炎がでてきた。


炎天爆焼(えんてんばくしょう)!!」


剣を地面に突き刺すほどの振り下げると、爆発した。黒い煙がそこに舞い上がった。煙が消えると、そこには焼き焦げた魔物の姿がいた。


「おいおい、これじゃあ魔物が売れねぇじゃねぇかよ」


幸太が冷静にツッコんだ。


「ハハッ、すまんすまん。あまりにも多すぎてやってしまった!」

「それ、よりも!さっさと倒しきっちゃいましょう!キリ無いですから!」


必死に魔物を倒す叶絵。


光神天聖ルシファーブレイド!」


突如その言葉を唱えた瞬間に、辺り一帯が光に覆われた。その中で、叶絵は魔物の位置をはっきりわかっていた。

 まるで光のような速さで剣を振り、魔物を倒した。


「ふぅ…もっと頑張りましょう!」


反対側では、槌屋が杖を持って呪文を唱えた。


「呪の魔法、カース!」


突如、魔物の周りに檻ができた。


「カース、死への命(デス・トピア)!!」


ギュウウウウウン


突如そこには闇に包みこまれた。

 ―次に見えたのは魔物が何者かに噛み殺された形跡があった。


「あんまりこの技を使いたくはありませんでしたけどね」


槌屋は眼鏡を少し上げた。


そしてその時、直沙は双剣を使って、とてつもないスピードで魔物を切り倒していった。

 たまに、攻撃を先に振るってくる相手もいたが、それを軽々と飛び越え、攻撃した。ある程度の距離を走っていたはずだが、直沙は無言を貫いたままだった。

 そして数分後、辺りの魔物の討伐が終わった。


「これで終わりか!やっと終わったぜ!」

「流石に疲れましたねー」

「よし、みんな!あとは魔物討伐隊に任せるぞ!」


 ―魔物討伐隊。それは主に魔人諸島を中心に、魔物、魔人に関する仕事を行う隊。魔物の処理、魔人諸島の調査、魔物の主の登録、などを行う。しかし、どんな人がその隊に入っているのかはわかっていない、正真正銘の謎に包まれた隊なのである。


「…調査終了っと」


叶絵がスマホを取り出し調査報告を魔物討伐隊に送ったときだった。


ブォン


 魔物との戦いで傷一つつかなかった横手に、血が出た。頬に切り傷ができた。

これは、あの奇妙な音が聞こえたそのすぐ後だった。


「えっ…?」


横手が切り傷を手で触った。手にべっとりと、血が付いていた。


「えぇ…?」


ブゥンブゥン


 残像が辛うじて見える程の速さ。青白い何かが、五人の周りを飛んでいる。

 あまりの速さに突風が吹いている。そして、横手以外の人達にも切り傷ができ始めていた。


"ここにはなにかがいる…"


それだけはわかっていたのだが、体が、動かない。これは、本能的な怖さだ。手が最初に動いたのは、直美だった。


「ハァァァァァァ!」


一つの剣を取り出して、その生き物を瞬間的に察知した。しかし、その剣は、何者かに止められた。


「…遅い」


それを止めたのは、残像だった。しかし、さっきのように広範囲に行動をしていない。四つある目は光らせ、青白い体がより分かりやすくなっている。


「くっ…」

「遅いんだなぁ、人間っていうのは。俺はここで生まれたばかりだからわからねぇが、人間は弱いってことはわかったぜ」


(人間の言葉を発することができる魔物、すげぇ、さっきまで戦っていた魔物達とは天と地ほどの差がありそうだ。本能がこいつと闘ってはいけないと感じ取っているだが、私には、もう一つ剣がある!)


もう片方の手から、剣を取り出した。


「くらええぇぇぇ!」


ザキン


真っ赤な血が、地面にポタポタと落ちた。これは魔物の血か?いや違う。これは…直沙の血だ。


「チッ、腕をまるごともっていこうとしたが、反応が早いな、人間」


腕の下からは血が大量にあふれ出ている。段々と血の出る量は増えていっていた。


「直美!!」


四人が大声で直沙を呼んでいた。

 直沙は、段々と意識が遠のいき、膝から崩れ落ちていった。

 これはまずい、と、その場にいる全員がわかった。船へ乗る、それが唯一残された選択肢。横手は直沙に肩を貸し、一所懸命に走り出した。


「みんな!船に乗れ!」


その言葉に、硬直していた三人は、落ち着きを取り戻し、船のあった方向へ走り出した。だが…


「逃さない…ここにいる全員、生きては帰さない」


 またブオン、という音とともに、全員が腹部に切り傷を負った。さっきの切り傷よりも深い。血がいっぱいでている。

 叶絵はその痛みで走ることができなくなっていた。


「えっ、無理無理無理…こんなの、勝てない…」


と絶望していた。死を覚悟していたのだ。


「くっ、カース!呪…」


ブオンとなった直後に、槌屋はやられてしまった。


「走れ!叶絵!」


その言葉も虚しく、幸太と横手は魔物にやられてしまった。

 それを目の当たりにした叶絵。さっきよりも目を大きく開いて、絶望した。


(神様…)


ポタポタ…ザァー


雨が降り始めた。豪雨。ザァザァと降っている。雨はまるで血を洗い流すかのように地面に流れ出した。横手、槌屋、叶絵、直沙、幸太、全員が血を出して倒れている。

 残像は、動くのをやめた。その直後、姿を現したのは、手と目が四つあり、骨のような体をしている魔物。


「俺は…勝ったのか…本気を出さずとも…人間に…」


魔物は物悲しそうに言った。


「さぁ、最後のトドメをささなくてはいけないな」


魔物は、叶絵の傍に行き、拳を作った。


(死ね)


拳を振り下ろそうとした瞬間、魔物の目に入ったのは、スマホだった。スマホの中には、"送信完了"という言葉が出ている。


「送信完了…?一体何を…まさか…!!」


魔物が後ろを振り返ると、そこには、黒髪の少年が、魔物に向かって殴り出そうとした。そう、その黒髪の少年というのは、暉だ。


「ううっ!」


 ザキッ、という鈍い音を奏でた。魔物は、暉の拳を受け、後ろに下がった。


「貴様…その手はなんだ…」


 ジュウウウと鳴る音には、まるで右手は龍の鱗をまとっていた腕をしている。どうやら魔物には、その腕で殴ったようだ。


「お前は…一体…なん…」


 突如、魔物の体は、真っ二つに別れた。


「俺は殴ったんじゃねぇ、お前を斬ったんだ。この、爪でな」


龍の宿りし手によって、魔物を切り裂いた。


「暉ー!ちょっと、早く行かないでよぉ…」


有紫亜も遅れてやってきた。


「うわっ、一体これ、どういう状況?」

「えっーと、もう、魔物、やっつけちゃいました」

「はあああああぁ!?」


有紫亜は暉が一瞬にして魔物を倒したことに驚いていた。

 ―その中で、骨の形を成した魔物は、体を再生させていた。

魔人諸島の掟

5.魔人諸島の中央の山にはどんな人でも近づくことは禁止されている。

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