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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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88 歪んだ愛の告白

俺は、母からの手紙を開いた。


俺が十二歳で、オリヴィアンに渡ってから一通だって手紙なんて送ってきたことはない。

もしかしたら、この手紙だって毒が塗られていたり、何か害のある粉末を紛れ込ませているかもしれない。


念のため布を取り出し、直接肌が触れないようにして手紙を開く。


ヘルマンと母のこれまでのやりとりは知らないが、俺と関係はそんな良い関係ではない。



ーーー


アルフレードへ


初めての手紙が、あなたにとって破り捨てたい内容であることをお詫びします。


あなたは今、私を――すぐにでも殺したいと願っているでしょう。それは当然のことです。私が幼い頃から今まであなたに対してしてしまった多くのことに、弁解の余地はありません。


そして、私は、あなたへの仕打ちだけでなく、新たな罪をも作ってしまいました。


ジュリアン王は、本来ならグリモワールを攻めるつもりはありませんでした。

ですが――私がフェリックスを殺してしまったせいで、彼は動かざるを得なくなったのです。


ヴァルトシュタインにとって、そして、即位したばかりの兄にとって、準備なくグリモワールを攻めることの利点はありません。

たた、わたしを生かすためです。


あの頃の私は自暴自棄でした。

グリモワールのすべてを焼き払い、最後はあなたに殺されることさえ望んでいた。


ですが、ジュリアンは兄であると同時に王でした。

彼は負け戦になるとわかっていても、それを利用しようとしたのです。

その結果、オリヴィアンまで巻き込んでしまったのだと思います。


――結局、すべては私のせいです。


グリモワールも、オリヴィアンも、ヴァルトシュタインも。

多くの犠牲を出したのは、私の行動が原因でした。

以前は定期的にあった連絡も途絶え、今回のことで、ジュリアンの立場まで苦しくしてしまったのです。


警戒心が強いジュリアンが、連絡してこないのは何か理由があると思っています。

可能性が高いのは、立場が苦しくなっているジュリアンとヴァルターが対立させられていないかということです。

私はそれが心配でならない。


今、ジュリアンには子がいません。

ヴァルトシュタインの後継候補に挙がるのは、私とあなた。

それにヴァルター、ヴィオラ、そしてまだ誰にも知られていない――あなたの赤ん坊。


しかし、ヴァルターは政治に向かない性格です。

利用されているなら止めなければなりません。


だから私は決めました。

ヴァルトシュタインへ向かう、と。


最後まで、あなたの母であることを選べず、国を取ってしまったことを申し訳なく思います。

あなたに手を下してもらうことすらできず、情けなく思っています。


赤ん坊は私とリリスの血を引いており、ヴァルトシュタインにとって利用価値があると同時に脅威でもあります。どうか、ヴァルトシュタインから必ず守り抜いてください。


もし、もう一度やり直せるなら――たとえ病で目が見えなくても、駆け寄ってきてくれたあなたをきちんと抱きしめるところからやり直したかった。歪んでいたけれど、私はあなたを愛していました。本当に、ごめんなさい。


もし再びあなたに会えることがあるなら――その時は、どうかあなたの手か姫の手で私を終わらせてください。


アンジェリカ=グリモワールより



胸の奥で何かが冷たくなる。

怒りと吐き気が混ざったような感情があふれる。

拳に力が入る。


「何独りよがりに書いてんだ……」


人に終わらせてもらおうなんて、ふざけるな。

自分で終わらせろ。

そんな言葉が喉から飛び出す。

破り捨てたい、燃やしてしまいたい衝動がある。

それなのに、もう一度落ち着いて読み返したい気持ちが同居している。


《歪んでいたけど、私はあなたを愛していました》


卑怯だ。

欲しかった言葉を今さら向けられても、重みはない。

今まで一度もくれなかったものを、どうして突然――。


目尻が熱くなり、ひと筋の涙が落ちた。

気づけば俺は、母の手紙でほんの少し冷静になっていた。


ヴィオラの無事を確認する。それが先だ。

ヘルマンの手紙にあったように、病の可能性は徹底的に排除しなければならない。

母に言われるのも癪だ。

でもその通りだ。


俺は皮肉にも、母の手紙で自分を落ち着かせることができたのが更に腹立たしかった



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