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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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82 夏の終わりに揺れる影

夏が終わり、涼しい風がヘルマンの顔にかかる


ヘルマンは思案していた。

もういつ出産がきてもおかしくない。

アン夫人の言う通り、そろそろ次の候補を探さないといけない。


「他の都市国家でも女遊びしてたんでしょ。ここの二の舞になるわ。それならグリモワールにいきなさい」

とアン夫人からいわれたが、俺もできればそうしたい。

早くアルフレードと合流させてやりたい。


ただ、アン夫人...

何者なんだ?

手に触れると姫のような剣だこはないし、こっちが気配を消したりしても気づいている様子はない。すごく運動能力に優れている感じもない。

「ペンより重いものは持ちたくないの。ヘルマン運んで」

と片手で持てそうなものすら持たない。

筋力もないし、特殊な訓練を受けた人間という人物ではなさそうだ。


一方で、まるで俺の動きを知っているかのような反応をする。

あれは、俺が姫の父親ではないことをもう見抜いている。

また、定期的に戦況の情報を仕入れさせる。

こっちとしても助かるからいいのだが、わざと俺が把握するように促してくる。


そして、必要時以外姫から俺が離れることを嫌う。

「あなた娘を守るためにここにいるんじゃないの?」

とあのゾクゾクする冷たい視線で睨まれるのだ。

もちろん、俺と離れたくないとかそんな理由ではない。


もちろん、姫から離れたくはない。

姫は腕が立つが妊婦だし、今は丸腰だ。

だが、そんな姫にも

「ヴィラさん、これ貰い物だから、身を守るのに使って」

と短剣を渡される。

その短剣には、まさかのグリモワール王家の紋章が入っている。


「夫が王城に出入りしている時にフェリックス王から賜ったらしいの」

「そ、そんな大事なものいいんですか?」

姫も動揺する。

「フェリックスのものなんて要らないわよ。護身用に持っておきなさい」


フェリックス王すら格下扱いか。

ただ、フェリックス王ということは、アルフレードからしたら敵側ではないのか?

それとも、逃げてこの国にいるし、フェリックス王を心から嫌っているようなので寝返ったのだろうか。

未亡人だというし、フェリックス王のせいで夫が亡くなったと思ったのかもしれないな。


「息子さんは、どちらの側につかれたのですか?」

さりげなく聞いてみる。

アン夫人はやっと聞いたのか?といわんばかりにため息を盛大についた。

「長男は、エドガー王、次男は南部の方よ」

「意見が分かれてしまったのか。それは...つらいな」


息子たちがお互いを殺し合っていると思えば、気分は滅入って当たり前だ。

ただ、フェリックス王のことを平然と悪く言うので、アン夫人はエドガー王の陣営に肩入れしているのだろう。


だが、どうも何か大きな秘密を抱えているようだ。

誰も見ていない時の憂いのある表情。

アルコールを飲もうとしては止まる手。

時々放つ深いため息。


思わず、俺の悪い癖で優しい言葉と態度をかけてしまい、手をはたかれたり、足を踏みつけられるのだが...

もちろん、初対面なら怒るが、一緒に暮らして、あそこまでガードが固く揺るぎない女性も珍しい。

未亡人だろう?女性が一人でいたら、どんな目に合うかわからない。

あれだけの金持ちのブリジットだって、後ろ盾がない不安から俺と恋仲になったんだ。


「だから護衛であなたを雇ったんでしょ。男を買った訳じゃないの。」

と蔑む目で見られる。


とはいえ、誰かの監視の目がないかは常に気にしているようだ。俺にも聞いてくる。

今のところ感じないことを告げるとホッとしたように、次の場所の目処をたてておけと、冒頭のようにグリモワールを勧められるのだ。


そして、ヴァルトシュタインの影響がなく、雪が降らない攻め込まれる時に逃げやすい中部を選べと。

まるで、俺たちがヴァルトシュタインから逃げているのを知っているかのように。


アン夫人はどれだけ調べても、素性がわからない。

素性がわからないということは危険なのだ。


だが当の本人が

「私が安心だなんて何の根拠があって思うの?常に疑っていなさい。」

と俺と姫に説教するんだもんな。


世間知らずだった姫は、アン夫人から色んなことを学んで、少しづつ高位貴族の夫人のような、いや頂点に立つものの視点を持つようになってきている。


また、アン夫人は、半端ない見識がある。

まるで持っている知識を全て渡すかのように、あの口調で、厳しく姫に教え込んでいる。

だが、姫は嬉しいみたいだ。

女から見た政治の転がし方までアドバイスする。


危険人物であるが、姫が王としての自覚を持つにはいい指導者なのだ。

だが、そんな知識を持っているのもおかしな話だ。

夫は王城に出入りしていたようだし、貴族の教育係だったのだろうか?

なんか面倒見が良すぎるし、憎めない女性なんだよな。


ヘルマンは高くなった空を見上げ、首を傾げた。






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