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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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70 愛を囁く声、嘘を重ねる声

「ヘルマン!あなたいつ結婚してたの?」


目の前の女性がヘルマンを今にも締め上げそうな勢いで、睨みつける。


「結婚なんてするわけがない。この子は...その、若い頃付き合っていた女性との子で、俺が知らない間に生まれていたんだ。その女性が亡くなったから引き取った子だよ。」


慌てたように、首を振り

「君がいるのに、違う人と結婚するわけないだろ」

とか囁いている。


基本的に一つの嘘をつくとずるずる嘘は増えるって言ってたじゃない。

どうしてそんなに、次から次から嘘をつくの?

アルフレード以外の男性ってみんなこうなの?

それとも、アルフレードもそうなの?


衝撃で、目の前の女性の腰をさわさわしている提督をガン見してしまう。


しかし、そういいながらなれた足取りで二人で家の中に入っていくので、追いかけていくしかない。

ヘルマンと女性の、恋の駆け引きをただ呆然と眺めながら、ヴィオラはとりあえず二人を見守る。


「まあ、お腹に子供が!」


女性はブリジットという。

フィレンタでも力のある60代の豪商に気に入られて10代で結婚はしたものの、それからまもなく病死したため、子供には恵まれなかった。


多くの財産は残されたが、20代前半の自分に周りを引っ張って経営することは難しい。その時に豪商や当時住んでいた豪邸を売ったり、この家を購入する手伝いをしてくれたのがヘルマンだったそうだ。


「そして、そのまま...その、恋仲に」


ヴィオラは思わず赤くなる。

アルフレードと自分の触れるのも不器用な恋を思うと、目の前の二人はイチャイチャ、ベタベタ。


二人は「そうそう」と頷いているが、怪しい。

本当にその夫が死んでからの関係なんだか??


「でさ、オリヴィアンは戦争に突入してるし、グリモワールも危ないって聞いて、娘を連れて逃げて来たんだよ」

「そうね、それは確かに安心できるところで出産したいわよね」

「そうしたら、君以外僕が頼れるところなんてないだろ?」


ヘルマンは聞いたこともない甘い声でその女性の両手を握りしめる。ブリジットと、時には唇を合わせながら...


キスしながらよく喋れるわね、

ヴィオラは目を見開く。


だが、そんな会話の中で、女性に迷いが見えていく。


目の前で私は何を見せられてるのかしら?

なんか、アルフレードと再会しても男性不信に陥りそうなんだけど。


そう思いながらも、ずっとヴィオラは二人のガン見を続ける。


「仕方ない人ね。ヘルマンは」

ブリジットは、たった10分で陥落した。

すごすぎる。提督にそんな特技があったなんて!


「あなたが一緒にここで過ごしてくれる間なら、この子も一緒にこの家で面倒みてあげるわ。お医者様もすぐに手配する。ただ...一つ困ったことがあるの」


敵認定を外されたヴィオラは、ここにいられるらしい。

正直、ただでさえお父様とお母様のことを知ってショックなのに、目の前の見たことがないヘルマン提督を見せられて、これ以上何も考えたくない。


せめてアルフレードは信じたい。


早く眠りたい。

お腹も張ってつらい。

なのに、まだ困ったことがあるの?


「私、出産も育児も経験ないのよ。だから何もわからないの。知っている人に色々相談をしたり、揃えてもらうものを聞いたり子供が産まれてもアドバイスできる人がいる方がいいと思うんだけど。いい人がいるわ」


ヘルマンはピタッと動きが止まる

「どんな人?」


「あら?女の人よ。ヤキモチかしら?噂によると、グリモワールの戦争から逃げてきた女性よ。出産経験もあるらしいんだけど、家が裕福な人みたい。でも夫は亡くなって、息子さんは戦争に駆り出されているらしいわ」


彼女の話によると、ここに来てくれるメイドとその女性のメイドは仲がいいらしい。

女性がフィレンタに来てから落ち込んでいるので、何か元気づけることができないかという相談を受けていたそうだ。


「息子さんが二人も戦争に行ってたら、気持ちも落ちるわよね。少しでも人と話した方が気も紛れるし、ヴィラさんも助かるじゃない?」


相談に乗れる人がいるのは助かるけど...

メイドさん口が軽すぎない?

でも、私がしたことは侍女を通じてお父様やお母様に筒抜けだったわね。

そんなもんかしら?


「グリモワールか。ヴィラは、グリモワールは行ったことがないよな」


ヘルマンがヴィオラに目で確認をする。


「ええ、グリモワールで知っている人は一人しかいないわ」


グリモワールで知っている人はアルフレードだけだ。

しかも、グリモワールの第一王子だ。


「なら、大丈夫か。医者とその人にアドバイスをもらって落ち着いたら出産準備を進めていこう」


ヘルマンの声にヴィオラはしぶしぶ頷いた。





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