69 港町フィレンタで娘詐欺!?
ヴィオラは、ヘルマン提督の娘として、都市国家群のフィレンタという都市に入っていた。
「この都市はオリヴィアンやグリモワールと交易がある国なんだよ。ここにいれば、アルフレードの情報も入りやすいし、会える距離だから」
ヘルマンは、周囲を注意深く見守りながら一軒のお屋敷に連れていく。
「ここは?」
「あー、どういえばいいかな?割り切った大人の関係の人の家だ」
ヘルマンは回りくどい?何が言いたいのかしら?
ヴィオラは首を傾げる。
「で、呼ぶのは、お父さん、お父様、お父上、どれがいいかしら?」
ヘルマンの動きが固まる。そしてなぜか赤くなる
「ええと、俺の娘ならお父さんか親父だろうか?未婚でパパとかいわれると、なんか照れるな」
勝手に一人で照れてちょうだい!
こっちは、初めての場所なのに、提督ったら港に着いて早々にいろんな人に声かけられてるんだもの。
「俺の娘」って提督が紹介した瞬間、女の人たちの狂気に満ちた顔を忘れない。
違います!他人です!この人、独身です!って叫びそうになったのに、提督だけけろっとしてるんだもの。
「疑問系で返さないでください。本当に娘でいいのね。あと、オリヴィアンの出身って伝えてもいいのね」
提督は気にしないけど、こっちは気になる。
なんで私がアルフレードならともかく、提督の女性関係とか気にしないといけないのよ!
拳を握りしめ、べーっと舌を出したくなる。
このたらしのおっさんめ!
「嘘ばっかりで固めると、一つの嘘からどんどん嘘が広がるからな。オリヴィアンの姫で、アルフレードとの子供がいるという以外は、むしろ嘘はつかない方がいい。」
提督はしれっとしている。
「提督の娘を演じるのがむしろ一番難しいわ。だって、提督がこの都市に出入りしてたことすら知らなかったんだもの」
そして、たくさんの恋人がいることも知らなかったわ。
アルフレードは大丈夫よね。
海軍の訓練で、いろんなところへ出入りしてたみたいだけど提督の真似してないよね、
ヴィオラは不安になる。
初夜から数日しか一緒に過ごしてないけど、慣れてたような....気もする。
誰にも聞けないから、わからないじゃないの。
一人で考えて真っ赤になる。
「海軍は、商船を海賊から守る役割もあるから、よく都市国家に出入りしてたんだよ」
そんなヴィオラの百面相をみながら、
「アルフレードは真面目な男だから、安心しろ。この辺りの物価やどんなものが売れるのかとかそんなものばかり調べてたよ。」
それを聞いて肩から力が抜ける。
ヘルマンはぷっと笑った。
「お店を回っては、ヴィラにお土産を買って帰りたがっていたがな。いつもやめてしまうんだよ。安物をつけさせたら恥をかかせてしまうって。婚約者でなければ気軽にプレゼントできたんだろうが」
ヴィオラはそれを聞いて泣きそうになる。
安くていいのに...グリモワールの王子が、露天でうるような安物をオリヴィアンの姫に渡したらいけないって思ったのね。
アルフレードらしいけど、そうじゃないのよ。
金額じゃないのに。
滲みそうになる涙をこらえて、鼻をすする。
それを見てヘルマンは微笑んだ。
提督は、玄関の呼び鈴を鳴らす。
派手ではないが、手入れがされたお庭が綺麗な家だ。
すると、30代ぐらいのお母様より若い女性が出てきた。
「久しぶりだな。お願いがあって来たんだ」
慣れたようにヘルマン提督は女性とスタスタ中に入ろうとするが、女性の目がヴィオラに釘付けになる。
「あ、あの」
て、提督!紹介してよ。
ヘルマン提督は女性の肩をスッと抱きながら、
「困ったことが起きちゃって、君の力が必要なんだよ」
といい、腰あたりをサワサワ触っている。
ぎゃ!!だめ!叫んじゃだめ!
「む、娘のヴィラといいます。こ、こんにち..は」
女性の目は一気に私に釘付けになる。
「む、娘……ぁ?」
次の瞬間、彼女の優しげな垂れ目が――キッとつり上がる。
――あ、これ修羅場の予感。




