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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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61 王の最後の命令

オリヴィアンの王都から、女性の子供を東の港町へ避難させろ。――さらに、ヴィオラを守れ。

もし私に何かあったら……。


そう王から託された言葉を、ヘルマンは何度も思い出す。


港町にたどり着いた瞬間、心底ほっとした。

正直、嵐の海で死にかけた時より緊張していた。


(王都の女と子供の命が俺の肩に。しかも、ヴィオラ姫まで……)


死ぬわけにはいかない。

なのに、この任務を誰とも共有できない。

思わず空を仰いで深く息を吐く。


「なんで俺なんだよ……」


だが港町は避難先として最適だし、姫を逃がすなら海路しかない。

そう考えれば、王の判断は正しい。


セバスティアン王は恐ろしいほど先を読んでいる。

あの王と、あの年齢で、国を背負うアルフレードやヴィオラ……。

あいつらの胆力には舌を巻くしかない。


「朝出たのにほぼ1日かかったな」


東の港町までは、馬の駆け足で一時間あればつける距離だ。

雪が降っていても二、三時間。

だが、これが女性と子供で、足やソリを使って、固まってない雪の中を歩くとなれば話は別。


女性や子供たちが雪の中で野営はできないから、なんとかその日のうちに到着できて助かった。


振り返れば、移動の途中は本当に地獄だった。

普段は男ばかりの船員に、女や子供の扱いなんてできるはずもない。

怒鳴るわけにもいかず、無理をさせることもできない。


だが――。

途中から、目の色が変わったようにヴィオラ姫の動きが変わった。


「みんな、大丈夫? もう少しで休めるから」


そう笑って声をかけてくれる。

疲れたものが増えると、休憩をとるように命じ、みんなを火にあたらせる。

雪を温めて、それを飲むだけで体の冷えがとれていく。


そんな、ヴィオラ姫に何度救われたことか。


そのおかげで水夫たちも接し方がわかったし、避難者の雰囲気も変わった。

やはりあの子にも、アルフレードと同じように人を惹きつける力がある。


……だが。


ヘルマンの胸に重いものが残る。

王から、ヴィオラ姫が「妊娠している」と聞かされた時の衝撃は忘れられない。

敵に知られれば命はない。



それでも、いざという時に彼女が素直に避難してくれるだろうか。

その時には、おそらくセバスティアン王の命もない。


(できれば、そんな未来は来てほしくない……)


グリモワールの援軍は望めない。

ヴァルトシュタインに勝つのは不可能に近い。

最悪の場合、俺は姫を連れて別の国へ逃げるしかない。


だが――どこへ?


グリモワールには海がない。

ヴァレンティアは同盟が失敗したと聞く。

いっそグリモワールの東側にある都市国家群を回って、直接交渉するしかないのか。


(……グリモワールが国を奪還したら、連絡を取って二人を会わせてやることができるだろうか)



ーーー


来ないでくれ!

そう願っているのに、非情にも王の最後の命令がくる。


「王と王妃が自害!全面降伏か!」


衝撃が走る。

籠城して、時間を稼ぐかと思っていた。

でも、城門を突破されたら多くの死者がでる。


自分たちの命で国民の被害を最小限にとどめたのか...


王城からここまでは、雪の中とは言え単騎なら2.3時間で到着してしまう。


どうする?ヴィオラに伝えなくてはいけない。

なんて伝える?


一番誰もやりたくない仕事じゃないか!!


もしもの時には、ヴィオラを連れて逃げる話は副提督のポンセとつけてある。

そして、選りすぐりの海軍兵を数人選び、確実に逃がせる人選を行ってあった。


王の命令を見せると、ポンセも言葉を失った。


「姫の身分を証明しないといけないから、王の命令を持っていく。これは一方的な負けではない。必ずヴィオラとアルフレードがオリヴィアンを取り返しに来る。ポンセ!後を頼む。ヴィオラには悪いが、騙し討ちで船に乗せよう。時間がない!」


二人は頷く。

ヴィオラには、避難民の物資をとりに行くのを手伝ってくれと声をかける。


ヴィオラは戸惑っていたが、動ける人間が動くのは当たり前と思ったのだろう。

「力はありませんが、お役に立てることがあるなら」

と頷いた。


乗員の海軍兵たちには、目配せで亡命を知らせる。


準備したのは小型の快速船だが、正直数人で回すのは無謀でもあった。

だが、目立つ行為は許されない。

みんな、ヴィオラ姫だけは必ず助けるという使命のもと覚悟を決めて船に乗り込んだ。




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