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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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56 俺が原因なのか?

王城ではまだ聞き取りが続いていた。

そしてヴァルトシュタインの手のものの捕縛も少しづつ進んでいた。


こんなことになってしまったのは、アンジェリカが城の権力を握り、人事も含めて王城のすべてを掌握していたからだ。


「思った以上に、ヴァルトシュタインの息がかかった人間が城に多すぎるな」


俺はため息を深くついた。


グリモワールの主要なポストについていたものたちは、皆エドガーについていたから、政治的な部分での影響は少なかった。


しかし、王とは別居中。

アンジェリカとヴァルトシュタインの関係を見張るものがなくなってしまっていた。


「結婚当初、私がまだ実権を握っていた頃は、アンジェリカとヴァルトシュタインのやり取りをしっかり見張っていたんだ。婚姻同盟とはいえ、関係がすごく良いわけではない。

だが、王をフェリックスに譲ってからはその関与も難しくなってしまっていた。

それこそ、アルフレードへの教育もその関与の一環だったのだよ。ヴァルトシュタインの教育を刷り込まれたら、ヴァルトシュタインのために動く王になるからな」


エドガーはそう呟いていた。


色々調べていって導き出された結論は、元々南部を落とす気なんてヴァルトシュタインにはなかったのだろうということだ。

ヴァルトシュタインから来た彼らは捨て駒だし、とにかくグリモワールの王都を破壊することが目的だったのだ。


きちんと知っていることを話せば、殺すことはしないことを告げると、ヴァルトシュタイン兵は、ボロボロ色んな話をする。

ジュリアン王に、命を捧げているというより、連れてこられた兵たちは半ば強制的に命令されたようだった。


ーーー


城の使用人たちの意見に共通したところをきいていくと...


オリヴィアンの特使がやってきた日に、夫婦二人で話をしていたようだ。

だが、特別怒鳴り声が聞こえるとか、激しい物音が聞こえるというものではなかったらしい。


むしろ、フェリックスは機嫌がいつもより良く、お酒がかなりすすんで、酔っ払っていた。

それでも二人は普通に和やかに過ごしていたようだったという。


だが、その晩、体調不良で別宅に戻れなくなった。

あれだけ飲んだら体調が悪くなるかもしれないという感じだったのでみんな、疑問に思わなかったという。

かなりグダを巻いていて、飲み過ぎをアンジェリカも指摘していたようだ。


別宅でフェリックス王の世話をする側近が何度か訪ねた。


「フェリックス王とお会いしたい。公務もありますし、とにかくお声だけでも聞かせてほしい」


だが、アンジェリカの対応は毅然としていた。


「なりません。かなり衰弱しておられます。医師の話では、

流行病かもしれないと。ですから会わせられないのです」


「流行病!!オリヴィアンから特使が来ていたと聞きましたが、まさか?」


「滅多なことをいうものではありません。いいですね。騒ぎ立てないように。王が戻られて、二国の関係にヒビが入るようなことを噂したり言ったりするんじゃありませんよ。」


側近も、いつもオリヴィアンのことを悪くしか言わないアンジェリカが、オリヴィアンを庇うので驚いたという。

更に...


「何のためにアルフレードが向こうの国に行ったと思ってるの?二国の架け橋になるように、幼い身で行ったのでしょう。王の側近のあなたがそんなことでどうするの?」


とアルフレードをあれだけ冷遇したのにあまりの手のひら返しに驚いたと話す。


それは俺も驚きだな。

アルフレードは目を見開く。


家臣のその時の反応は自然なものだろう。

オリヴィアンの国や特命大使が無実の罪で巻き込まれなくて良かったが。



だが、それを聞く祖父エドガーの憔悴ぶりはひどい。


――本当はすぐにでもオリヴィアンへ向かいたい。


気づけば二月も半ばを過ぎている。

あと半月もすれば雪解けが始まり、一ヶ月もすれば完全に道は開ける。


おそらくヴァルトシュタインは雪解けを狙う

なんとか雪解けまでに南部を抑えた。

今なら……間に合う。


けれど、祖父が王としてしっかり振る舞ってくれないと、国そのものが揺らぐ。

その姿を見ながら、ふと思う。


(意外だな……争っていたし、俺と同じで、父の死にも無反応かと思っていたのに)


俺自身は、父フェリックスに何の感慨も湧かなかった。

恨みすら――不思議と湧かない。

あるのはただ一つ。


――なぜ、俺はあれほど憎まれたのか?


その答えは、もう永遠に聞けない。

父は死んだ。

母アンジェリカと真相を語りあうこともないだろう。


だが、どうしても腑に落ちない。

目を失うまでは、母だって普通に俺と接していたが、その後の俺に対しての虐待は普通ではなかった。


身体的にも、精神的にも。

俺が生きる理由すら常に潰そうとしてきた。


体だって、オリヴィアンでしっかり食べさせてもらえるまでは小さかった。

教育も、弟の頭脳となるために学べと言われただけで、俺自身の未来のためじゃない。


俺への愛情は、ゼロだったはずだ。

それなのに、なぜ俺を突然庇ったり、オリヴィアンの特使が来た後に父を殺すことになった?


てっきりヴァルトシュタインの侵攻で父が討たれたのだと思っていた。

まさか、母の手で殺されていたとは。


三ヶ月前――何があった?


思い返す。

グスタフ王の死の直後、俺たちの国の特使がグリモワールを訪れるというのは聞いていた。

そして伝える話は――ヴィオラが王に即位し、俺が王配となること。


だが、それがそんなに衝撃だったか?

グリモワールは大国だ。

第一王子である俺が、小国に婿入りしたのに王配で終わる。


表面上は格下げに見えるが……実際にはヴィオラが立派な王として国を背負える。

俺は支えるだけで十分だと思っていた。


しかし、母アンジェリカは違ったのか。

プライドだけは誰より高い人間だった。

リリス王妃との仲が悪かった以上、その子どもであるヴィオラに“負けた”と感じたのかもしれない。


……だが、それで父を殺す理由になるか?


母アンジェリカの動きから考えてみる。


俺が流行病にかかったあの日、従僕に渡された布。

あれには病原が仕込まれていたに違いない。

父が仕組んだのだ。

わざわざ母が調べさせたのは、父の死と関係はあるだろう。


オリヴィアンの特使と酒を酌み交わした夜――母は父を殺した真相は、それしかない。


(俺が……原因なのか?)


父が俺を病に落とし、母はそれを知って父を殺した。


全部、俺がきっかけ……?


今さらになって、胸に冷たいものが流れ込んでくる。


――どうして、そんなことで父を殺したんだ。


俺と母の間にそんな愛情なかっただろうにーー


俺が欲しかった愛は全て弟に注いでいたじゃないか。

俺がオリヴィアンを旅立つその日までいじめ抜いたじゃないか。

俺がグリモワールから旅立つその日すら見送りにも来なかっただろ。

散々俺のことを、ヴィオラの手紙のことを、馬鹿にしていたじゃないか。


ふざけるな!!

こんなところで母親ヅラするなよ


俺は今、ヴィオラと腹の子が置かれている状況を考えると腹立たしくて、拳を爪が食い込むまで握りしめるしかなかった




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