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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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51 呪われた王子の帰還

アルフレードは、ヴィオラから届いた手紙を震える手で握りしめていた。


――ヴィオラが、子供を……。


胸が熱くなる。

こんな時じゃなければ、どれだけ嬉しかっただろう。

どれだけ自分の生きる希望になっただろう。


すぐにでも帰りたい……! 

こんな、俺を切り捨てた国なんかじゃなくて。

俺を守ってくれた、俺の国に。

ヴィオラのところへ!


なのに。

どうして、この危険な時に……!


妊娠したヴィオラが剣を取って戦えるわけがない。

捕まったら最後だ。


「グリモワールの王子の子を宿した姫」が、無事でいられるはずがない。


「……許せない」


全てを奪っていく母が。

俺の幸せを踏みにじるグリモワールが。



怒りに任せ、迫ってくる兵を斬り捨てる。

どの顔も、自分のささやかな幸せを奪い去る敵にしか見えなかった。


(俺が何をした? どうして……!)


感情が渦を巻く。怒りなのか、悲しみなのか、焦りなのか、自分でもわからない。

ただ――早く進みたい。

早くヴィオラを守りたい。


投石が飛ぶ。

盾を合わせて避けるが、進軍は遅れる。

石が掠り、額から血が流れる。

矢や石が雨のように降り注ぎ、足を止められるたびに、苛立ちが募っていった。


(時間稼ぎか……! くそっ……!)


唇を噛みしめると血の味が広がり、痛みが頭を冷やした。


「アルフレード様、前に出すぎです!」

「お守りします、ここは我らに!」


家臣たちの声に我に返る。


その時、火矢が飛び交い、油の臭いが鼻を突いた。

「ま、まさか……! 城まで燃やす気か!?」


王城から放たれる炎。

「どうして自分の国だろ……!」

兵士たちの怒号が響き、混乱が広がる。


エドガーが低く叫んだ。

「アルフレード、下がれ! 放火は時間稼ぎだ、裏門が開く。そこを押さえるぞ!」


城下に進軍するにつれ、降伏する兵の数が増えていった。

矢も投石も、どこか形だけ。

すでに細かい指示はないようだ。

目的は、時間を稼ぐこと。

それだけにしか見えない


「……中は空か? いや、まさか……」


あの父や母、弟が、そう簡単に自害するだろうか。


「フェリックスはともかく……アンジェリカとヴァルターは、ヴァルトシュタインからすれば使える駒だ。まだ、どこかで匿っているはずだ。とにかく、王城を占拠する!」


兵が向かってくる。

剣を振るうたび、顔見知りだった家臣の顔が血に塗れていく。

全員が自分の元へ来てくれたわけではない。


だが不思議と、動揺はしなかった。

むしろ進めば進むほど――自分が「呪われた王子」になっていく感覚が強くなる。


広く大きい王城。

投降したものが多く、残された僅かな兵では守れるはずもない。


正面は炎に包まれているのに、裏門はあまりにあっさり突破できた。

「……罠か?」と疑うほどだった。


裏から入った先にあったのは、かつて自分が隔離された小屋。

崩れかけていたが、今も残っている。


「……やっぱり、この城に碌な記憶はないな」


吐き捨てるように呟き、アルフレードは城内へ足を踏み入れた。


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