表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/191

5 十二歳の追放王子、眼帯の下を暴かれた夜

歓迎会ーー

表向きはそう呼ばれているけれど、その実態は探り合いの場だ。

まだ十二歳の俺、アルフレードにとっては胃が痛くなる時間でしかない。 


長旅の疲れもあるのに、笑顔を崩せば

「やはり頼りない王子だ」

と笑われる。


そんな中で――唯一の救いが、ヴィオラ姫だ。


紹介の場面になると、必ず彼女が間に入ってくれる。


「こちらは〇〇公爵さま。今年もお髭が素敵ですね。父もワインの出来を楽しみにしておりました」

「先日は美味しい梨をいただきありがとうございました。アルフレード様も来年はご一緒に」


にこやかに、特徴や話題を添えて紹介してくれるのだ。


……十歳にして、これだけの情報を全部頭に入れている。弟と同い年とは思えない。


――すごい。素直に舌を巻いた。


彼女がどんな本心で動いているのかはわからない。

けれど、この場ではありがたく頼らせてもらうしかない。

少なくとも、今の段階で俺に敵意を持ったり、陥れてやろうという雰囲気はない。


ーーもちろん、油断はしちゃダメだけど。


ところが、酒が入るにつれて空気は荒れてくる。


「十二歳では酒も飲めないのか? ははっ、腹を割って話せぬ相手など信用できん!」


「おや、大国の王子なのに、信頼できる家臣も連れてこられないとは?」


(……わざとだ。俺を困らせ、恥をかかせたいだけ。)


俺は心の中でため息をつく。


実際、自分についてきたのは従僕ばかりだ。

行列にいた祖父や父の家臣は、それぞれの思惑のもと、王との会談に行って戻ってこない。


俺を置いたままだ。声もかけて来ない。心配もしない。


(子供一人、捨て駒みたいな扱いだ……)


怒鳴られても、否定すれば言い訳になる。

だから頭を下げるしかない。


「無礼をお詫びいたします」


「ふむ、わかっておるならよい」


嘲りの声が聞こえ、やがて終わる。

そうやって、相手の溜飲が下がるまで嫌味を言われ続け耐える。


その様子を、王妃リリスはじっと見ていた。


(子供なのに……気丈にふるまっているわ。むしろ大人の方が無礼だわ)


だが、その空気をさらにえぐる声が飛ぶ。


「おや、その美しい顔立ち……もし両目が見えていたなら、グリモワールも手放さなかったでしょうな」


公爵ヴィンセントの言葉に、場が凍りついた。

十二歳の子供にかける言葉じゃない。

けれど皆、興味津々なのだ。

何か問題を抱えた子に違いないと。


横にいたヴィオラがわずかに震えながらも笑顔を作る。


「あら、私なんて“海の男みたいでかっこいい”って思ってましたけど?」


……小さな姫が、俺を庇った?


ヴィオラの震える指先が見える。

家臣は母アンジェリカに命令されたら俺を痛めつけることすらある。

けれど、この子は――。


俺は笑みを返した。


「流行病で幼いころに失明しました。ですが、片目が残ったおかげで、こうしてヴィオラ姫の可愛いお姿を目に残すことができたのです」


その言葉に、ヴィオラの顔が一気に赤くなる。

場の女性たちが「あらまあ」と微笑みをこぼす。


……だが、当然これで終わるはずがない。


「流行病か……今はどうなっている?」


酔ったふりをした侯爵レオン=マグナスベルグが、いきなり俺の眼帯をつかんだ。


「っ!」


黒いベルベットが床に落ちる。


次の瞬間――。


「ば、化け物……!」


場の空気が、一気に変わった。


俺のただれた眼窩を見て、誰もが息を呑む。

美少年と称された顔を、一瞬で塗りつぶすような残酷な現実。


その場にいた誰もが、息を呑んでいた。


ーーしまったな。完全に姫に恥をかかせてしまった。


思わず、ヴィオラも言葉と行動が止まってしまったのを目の端で確認する。

俺は、静かに床に落ちた眼帯を拾った。


はっと、ヴィオラは気付きどう答えようか迷っている。

王妃リリスに目で助けを求めているのを感じる。


どうしようか??

俺は途方にくれてしまった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ