34 今日から王配になる
アルフレードが目覚めた時、そのベッドのシーツにはヴィオラの純潔の証があった。
ヴィオラはまだ眠っている。
色んなことがありすぎたし、初めて一線を超えたわけだから疲れていて当然だろう。
(ヴィオラから離れる選択をしたつもりだったけど...)
アルフレードはヴィオラの寝顔を見て思わず微笑む
こういう関係になったら、俺が何がなんでも戻る方法を考えるはずだって見透かされているようだ。
純潔の証は、家同士の重要な同盟の証だ。
結婚の成立を意味する。
もし、俺に何かあって、それでもいいと関係を持たされたとしても、そこに純潔はない。
俺のための姫...
(ヴィオラは本当に俺の妻になったんだ)
ーーー
ヴィオラが目を覚ましたあと、侍女が淡々と寝具を確認した。
純潔の証がついたシーツはそのまま持ち出され、宰相や軍の重臣たちに示される。
――これで婚姻は成立。
寝耳に水だった者たちは、間違いなくざわつくだろう。
その光景を思い浮かべて、俺は思わず口元を緩めた。
「何かおかしいことがあるの? 私は……正直、恥ずかしいんだけど」
隣のヴィオラが赤くなって俯く。
その仕草があまりに愛らしくて、笑いを堪えるのに必死だった。
国民や国外への発表は、まだタイミングを見て決めるらしい。
だが、俺をグリモワールに戻すのと同時に、祖父エドガーには確実に伝えるという。
つまりこれは――オリヴィアンが「婿を返す」のではなく、「婿を貸す」と宣言すること。
セバスティアン王とリリス王妃の覚悟を思うと、胸の奥が熱くなる。
……俺には戻れる国ができたのだ。
その夜、セバスティアン王と俺はエドガー宛ての書面について相談した。
ひとつは、俺がグリモワールへ戻ること。
もうひとつは、かつての臣下たちに「アルフレード」の名を使い、再び集結を図るよう伝えてほしいということ。
さらに――オリヴィアンの継承者との結婚により、両国の強固な同盟が成立したことを添える。
「……あとは、援軍か」
セバスティアン王が顎に手を当てる。
「アルフレード一人というわけにはいくまい。ヴァルトシュタインのジュリアンは相当な野心家で切れ者だと聞く。だとすれば...元軍師のゼノスはどうだ?頭はまだしっかりしているし、元々この結婚同盟を考えたのはゼノスだからな」
えっ!そうだったのか?
アルフレードがここにいるのは、ゼノスの戦略だったのかと驚く。
王としての冷徹な計算と、父としての温かい眼差しが入り混じる。
「あとは軍備会議にかけるが、アルフレード。今日からお前は、正式に継承者の王配だ。もう、誰も部外者だと思うものはおるまい。オリヴィアンの王族として会議に参加だぞ」
セバスティアンは微笑んだ。




