32 姫と内婿、戦乱のオリヴィアンを護るために
「ヴィオラ、さすがにこれはダメだよ」
女王になるくらいだから豪胆さは必要だが、これはやりすぎた。
アルフレードは、最後はお互い抱きしめてキスぐらいまでは許してもらおうと思っていた。
なのに、なんなんだ?
どうして牡蠣鍋にレバーの蜂蜜煮にトリュフ??
牡蠣やレバーや蜂蜜が精力増強に効くとは知らなかったけど。
なんか、毒味も厳しそうな精力剤とかグラスに注がれて。
王も王妃も、覚悟決めすぎだろう。
「王命よ」
ツンとすましてヴィオラは言う
「ほら、ヴィオラは男の子たちとずっと過ごしてきたから、男性視点に染まりたくないのね。要は勝ち気なのよ。でも、よく考えたら国内で結婚を考えないなら、その後は本人が望む関係じゃないし。誰のために純潔をとっておくのか?って話なのよね」
リリスも牡蠣鍋を食べながら
「あら、美味しい」
「ほんとね。お母様」
と淡々としている。
こう言う時女性の方が腹を括ると強い。
「セ、セバスティアン様...」
こんな貞操の危機の迎え方ってあるだろうか?
「もし、子供が出来たら、グリモワールの第一王子との子になります。その時にはオリヴィアンも危険に晒されます。」
「もし子が出来たら、申し訳ないが情勢が安定するまでは隠して育てるよ。」
セバスティアンは、毅然とアルフレードに伝えた。
「だが、私はアルフレードがグリモワールで戦う間、ヴァレンティアと同盟を結べないか検討に入ろうと思っている。
あの国も冬が明けたら次は自分たちだと思っているはずだ。
ヴァレンティアとオリヴィアンと、グリモワールで三国同盟を結べるなら、その時は子供がいてもむしろグリモワールとの結束の証となるだろう。」
「ヴァレンティアと婚姻同盟を結ぶ可能性は?」
「より強固な関係を目指すならそうだろうが、まあ...うちとは無理だろう。その時にはむしろヴァレンティアが大国のグリモワールの王子であるアルフレードと婚姻同盟を結びたがるんじゃないのか?」
「わ、わたしはヴィオラ以外とは...」
「ということだ。結局、それならどうあっても一緒なんだよ。むしろ、すでに床入りしている深い関係なら、ヴァレンティアの牽制になる」
「と、床入り...」
嫌ではないんだけど...
後で後悔しないのか?
おそらく、こんな初夜を迎える男は世界中探しても聞いたことがない。
今朝、覚悟を決めてセバスティアン王に話をしたのに、今夜はなぜか初夜になる。
しかも、こんなオープンに....
ーーー
部屋に戻ると、従僕が待ってましたと言わんばかりに、風呂に熱々のお湯を張り、体を磨き上げられる。
「ま、待て。今まで俺一人で洗ってただろ」
「何を言ってるんですか?汗臭いのヴィオラ姫に嫌われますよ」
これでもか?というぐらい、俺は磨き上げられる。
そして体に香油を塗られ...
うう、酔いそう。臭くないか?
「ち、ちょっとストップ。なんか多分絶対、ヴィオラ好きじゃないと思う。」
俺は体をくんくんさせながら大人すぎる香りにストップをかける。せめて石鹸ぐらいまでにしてくれ。
従僕は不満そうに、香油を拭き落とし、再度洗い直した。
「うん、もう新たな香りはいい。」
まだ心の準備ができてない。
眼帯に合わせられたのか?
いつもの清潔な寝衣に、黒いビロードに金糸の刺繍の入ったガウンを着せられ...
気づけばほら、ヴィオラの寝室の前だ。
もう、どうするんだよ。俺....
中世では牡蠣や蜂蜜、トリュフが貴族の滋養強壮に役立つ食材として使われていたようです。その他、いちじくや赤ワイン、アーモンド、卵なども好まれており、今回はありそうなメニューにしてみました。




