26 王の命令、それは父の願い
「ヴィオラ、私の後はお前が王だ」
セバスティアンは、ヴィオラとアルフレードの前で宣言した。
ヴィオラは目を見開き、震える声で問う。
「は、本当に、女の私が王になってもいいのですか?」
セバスティアンは頷く。
「軍備会議で全会一致だ」
セバスティアン王は、アルフレードの顔を盗み見た。
ああ……笑顔が溢れている。
だが??
お前は王にならないのに、悔しくないのか?
「良かったな、ヴィオラ!」
「アルフレード! あなたが支えてくれてるからよ!」
二人、感極まって抱き合う。
えっ!!
「お、おい!!」
二人はハッと顔を上げ、抱き合っている自分たちに気づき、ぱっと離れた。二人とも真っ赤になっている。、
よかった……このまま目の前でキスでもされるかと思ったぞ。
セバスティアンはほっと息をつく。
(思った以上に仲が良いようだ)
政略結婚で形だけの夫婦も多い中で、この二人は奇跡に近い。
「アルフレード、君はこの選択が不服ではないのか?」
「えっ? なぜですか?」
アルフレードは本当に驚いた顔で見つめる。
(演技ではなさそうな顔だな……)
「君はグリモワールの嫡男だろう」
「それは過去のことです。ヴィオラが小さい頃から俺と同じくらい鍛錬を積んで、それでも女だからと見られて悔しい思いをしてきたのは誰よりも知っています。正当に評価していただけて嬉しいです」
アルフレードは迷いなく答えた。
ヴィオラも嬉しそうに微笑む。
そして二人で目を合わせて笑い、気づけば二人は手を繋ぎ、またイチャコラし始める。
ふうっ……
いつからこの二人、こんなにべったりに……まさか!!
「まさかとは思うが……お前たち、子供ができるってことは?」
二人は目を丸くしてセバスティアンを見つめる。
しばらく沈黙が流れる...
「はあっ?!」
「それは……子供を作れということですか?」
「お父様、結婚もしてないのにどうかしてますわ!」
なぜか責められるセバスティアン。
「ち、ちがう。仲が良さそうだから聞いただけだ。オホン。結婚は早くさせたいが、情勢が落ち着いてからだ。来月かもしれないし、10年後かもしれん……まだわからん」
セバスティアンは顔を真っ赤にして言い訳する。
二人は薄く笑ったが、空気はどこか引き締まった。
アルフレードの表情が情勢という言葉を聞き、急に硬くなる。
「セバスティアン様、私はヴィオラを支えます。だが、もし情勢が悪くなり、戦場になった時――前線で戦うことを許されますか?」
その言葉に、場の空気が吸い込まれたように静まる。
ヴィオラの黒い瞳が一瞬、大きく見えた。
「お前の腕は知っている。だが――」
セバスティアンは言葉を探した。
「私がここで後継を明確にしたのは、国を割らせないためだ。つまり、私が死んだらどうするかを考えてのことだ」
「亡くなるって!」
ヴィオラが叫ぶ。声が震える。
「いや、縁起でもないとは分かっている。だが、万が一ということもある。お前には、戦場ではなく、ここでヴィオラの参謀役になってほしい」
セバスティアンの眼差しは遠く、どこか哀しげだった。
アルフレードはゆっくりと膝をつき、かつて幼い自分がしたようにセバスティアンに臣下の礼を取る。
「もしその時が来るなら、まず私が身を挺します。セバスティアン様に育てられた恩を、オリヴィアンのために返したいのです」
その宣言にヴィオラは現実が当然前に訪れてきたように感じたらしい。
「そんな……やめてよ。二人とも、死ぬなんて言わないで」
涙が光る。
セバスティアンは苦しそうな表情をした。
王になるというのはそういうことだ。
胸が締めつけられる。
親子の愛情よりも、夫婦の愛情よりも...
かけたからといって戻ってくるかわからない愛を、国に捧げなければならない。
「アルフレードよ。違う。私を守るのではない。お前が守るのはヴィオラだ」
セバスティアンは固い意志を曲げなかった




