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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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2 十二歳の王子の手紙と、十歳の姫の決意

十歳になったヴィオラ=オリヴィアンは、両親が手紙をめぐって大騒ぎしている横で、胸をどきどきさせながら何度ももらった手紙を読み返していた。


差出人――自分の未来の夫になるという男性。

十二歳のアルフレード=グリモワール第一王子からだ。


(……どんな人なんだろう)


アルフレードの母アンジェリカと、ヴィオラの母リリスは異母姉妹。そして不仲だった。

だから、母はこの結婚話が出たとき、顔を曇らせていた。


「アンジェリカは苛烈な性格なの。なんとか婚期を遅らせたいのだけど……ヴィオラがいびられないかしら?」


リリスはとても心配していた。

それが婿になる。ということは??


「婿に来ることに変わったってことは……アルフレード様は、うちで暮らすのよね?」

ヴィオラの顔に笑みがこぼれる。


「ええ。ヴィオラは向こうへ行かなくていいの」

リリスは優しく頷いた。

その答えに、ヴィオラはほっと胸をなでおろす。

大好きな父母と離れずに済む。


アルフレード様のお母様のアンジェリカ様とも、顔を合わせなくて済む――


けれど、すぐに新しい不安が芽生えた。


(アルフレード様は……こんな騒ぎになって大丈夫なの?)


ーーー


父セバスティアンはアルフレードの手紙を読み、かわいい一人娘のヴィオラの結婚相手が片目が見えないことを知って激怒した。


将来はオリヴィアンの王か王配になるのに...


「事前にグリモワールから、何も知らされて来なかったんだぞ」

だが、その怒りをぶつけてもグリモワールのフェリックス王の反応は鈍い。


問いただした返事は「では内婿に」という一言だけだった。


大国グリモワールの第一王子が、小国オリヴィアンに婿入りする――

考えただけでも異常な話だ。


(……よっぽど、ひどい事情があるんじゃないか?)


父や家臣たちが噂している。

相手の手紙には片目のことも書かれている。

けれど、絶対それだけじゃないよな!

グリモワールはオリヴィアンを馬鹿にしている!!


なんだか、来る前からアルフレードは可哀想なことになっている。


でも...

ヴィオラが震える手で読み進めると、そこには丁寧で、心を込めた言葉が並んでいた。


――優しい人。私にはそう感じるんだけどな


来てもらうまでに、少しでもお互いのことを知りたい。

アルフレード様の好きな食べ物はなんだろう。

私は牡蠣が好きだけど、グリモワールは海が近くないから知らないかもしれない。


ええと、ホッケはどうかしら。

干物なら食べたことがあるかもしれない――


「母様。アルフレード様は、わたしの旦那様になる人なのよね?」


ヴィオラは周囲の反応が気になってきた。

彼はきちんと私には本当のことを告げてくれる人だ。

それなのに、こんな風に言われて可哀想!


「ええ。まだ二人とも子どもだから本当の結婚は先だけれど……アルフレード様はこの家で暮らすことになるわ」


母の答えを聞いたとき、ヴィオラは思わず拳を握った。


「きっと不安なはずよ。だって、突然こんな寒い国に来なくちゃいけなくなるんですもの。……二人とも、絶対、意地悪はしないでね。わたしがこの人と一緒に、この国を守っていくから」


リリスはヴィオラの強い眼差しに、はっと息をのんだ。


――オリヴィアンは小国だ。


けれど田畑は実り、海の恵みもある。

陸だけでなく、海の兵も育てることで、侵略から免れてきた。

冬は雪深く、助けを求められても動けない。


本来なら、大国グリモワールの第一王子が内婿に来るなんて、喜ぶ話だ。

だが片目を失っただけで、アルフレードは冷たく切り捨てられた。


――つまり、軍事的には価値がないと判断されたのだ。


それなのに、娘はすでに決めているらしい。


「あなたは、もうアルフレード様とこの国を守ろうとしているのね」


リリスはため息をつく。

ヴィオラはこうと決めたら動かない子だと知っているからだ。


ーーー


その頃――


手紙を書いたアルフレードは、母アンジェリカによる陰湿なしつけの最中だった。


手を下さず、城の家臣に自分を殴らせる。

食事も抜かれる。

城で力を持つアンジェリカに逆らうことはできない。

一方でアンジェリカに裏切られたら第一王子に危害を加えたといわれ処刑。家臣はガタガタ震えている。


「大丈夫。僕に危害を加えていいから……」

家臣に耳打ちする。


折檻が終わると、家臣たちはそっと食事を運び、傷を手当してくれる。


「何か言われたら、アルフレードが自分で怪我をしたと偽ればよいいから」


恩を返す機会はもうない。

せめて家臣の身を守れれば。


家臣たちは涙を浮かべながら、アルフレードを殴るしかなかった。


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