最終話 四つの王国と選ばれた未来
最終話です。今まで読んでいただきありがとうございました。
もしよければ、色々調べまわって結構大変な作品だったので、星の評価かブクマをいただけると今後の創作活動の励みになります。よろしくお願いします。
「今度、山岳民族との話し合いで、山に馬車で国民が行き来できる道をつくることにしたんだよ」
ヴァルターがアルフレードに話す。
あれから十年の月日が流れた。
今日は、四国の王が集まる会議の日だ。
それ以来、月に一度は必ず顔を合わせ、交流と話し合いを続けてきた。
レオポルト王の後は息子のアルフォンスが王になっていた。ヴァルターやヴィオラよりは少し年下の王になる。
アルフレードが地図を広げ、指で四つの国をなぞる。
「道も海も人の行き来がスムーズになっただろう……そろそろ、四つの国が、それぞれ独立しながらも一つの国になる連邦制に移行してもいいんじゃないかと思うんだ」
アルフレードは静かに言った。
「意外と私たちが王である期間というのは短いのよね。やるなら今よね」
ヴィオラが呟く。
この時代ーー60から70歳がが王族の平均的な寿命でだった。
先日エドガーが天寿を全うした。
50代後半のレオポルト前王やヘルマンも、いつエドガーのように天に召されるかはわからない歳に近付いていた。
ヘルマンは海軍を退き、いまはヴァルトシュタインとオリヴィアンの間を船で往復しながら、まるで家族のようにヴァルターを支えていた。
そして今は、ヴァルターとセレンの三人の子どもの“お爺ちゃん”になっている。
「お姫様、爺の嫁になるかい?」
ヘルマンは相変わらず、三歳の姫にそんな冗談を飛ばしては叱られている。
「ちゃんと足を踏みつけて、手を払って“嫌”って言うのよ」
ヴィオラが、アンジェリカの教えを伝えて笑った。
そんなアルフレードとヴィオラの息子のセバスティアンはもう十六才である。
オリヴィアンは、そろそろ次世代に舵を切る準備を始めていかないといけない。
「国境はなくなったから、陸からも海からも行き来も盛んになったし、ヴァルトシュタインの状況も、飢餓で苦しむ人もいなくなった。10年だと思えば、早く持ち直した方じゃないかな。一つの連邦国になっても国民の間に抵抗は少ないんじゃないかな。」
ヴァルターは呟く。
あんなに男女が共に過ごすことが禁止されていたヴァルトシュタインは、今やその反動か?国境を超えて、他の三国の人と出会い、恋に落ち、結婚をする事例も見られ始めている。
特にヴァルトシュタイン北部と国を接するヴァレンティアでは、男女が出会う機会も多く、結婚に発展している数が増えてきていた。
「ヴァレンティアでは、すでにヴァルトシュタイン国民との結婚もちらほら出てきましたから、喜ぶ若者は多そうです。
ただ、王はどうするのですか?この中で一人がなるのですか?」
アルフォンスが、心配そうに言う。
「私たちが、王でなければならなかったのは、この血筋のためです。だけど、全ての国に血筋を持つ王はいません。
だけど、国民が教会を信仰する限り、王の権威は神から授かるものですから、四つの国がみんな一緒は無理なのでは?」
アルフレードも頷く。
「それぞれの国に王は残さないといけないだろうな。だから、最初は、軍や教育を一律化したり、国民の生活が便利になるものを四つの国の共有のものにするというところから始めてみてはどうだろうか?
将来的には、王が一人で全てを決めなければならないのではなくて、選ばれた国民がみんなで話し合ってこの四国を豊かにできるようにしたいと思っている。」
四人は静かに頷き合った。
すべてを一度に変える必要はない。
けれど、少しずつ歩み寄ればいい。
やがて一つの国――連邦国として結ばれる日を目指して。
その後、教会との衝突もあったが、最終的に「神に選ばれし支配者」ではなく「神に選ばれた王を束ねる統合者」として、アルフレードが四国を束ねる初代王となった。
それから彼らもこの世を去り、時が長く流れたーーー
四国は、連邦制となってから...
少しづつ統合できるものを増やしていった。
法律を一つにまとめ、各国から代表となる国民が選出される議会制になった。
王から国民に、権力がバトンタッチされ、王政と民主主義が続く。
残念ながら、国民が権力を握っても戦いの日々はまだ時に起こる。
それでも、誰か一人の過去に振り回されたり、一人の権力で物事が決められる時代から、話し合い自分たちで選ぶことができる未来に変わっていった。
決められた結婚ではなく、愛する人と結ばれてーー
男女問わず、好きな職業につきーー
親の過去を引き継ぐこともなく、
彼らの子孫は、選ぶ未来をつかむことができるようになったのだった。
《完》
《歴史背景》
中世では「王権神授説」と呼ばれる考えがあり、王の権力は神から直接授けられたものとされていました。
そのため、王に逆らうことは神に逆らうことと同じと見なされ、王家の血筋は「神に選ばれし家系」として尊ばれていたのです。
こうした思想のもとでは、血統の正統性こそが国を治める正当な根拠となりました。
また、教会も大きな影響力を持ち、王と教会はしばしば対立を繰り返していきます。




