表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/191

188 王国を蝕んだ誓い

自分たちの知らない叔父のジュリアンの話がそこにはあった。


まだ、アルフレード、ヴィオラ、ヴァルターが生まれる前の話だ。でもその愛憎劇に、みんな巻き込まれていったのだ。


「王やクレア王妃の息のかかった貴族が、穏健派なのは、困らないからなのです。王に逆らう人間に、無実の罪を被せて、領地を奪えばいいだけ...」


「そんな横暴がまかり通っていたのか……」


アルフレードが息を呑むと、バルザック宰相は苦く頷いた。


「不満を口にしたのは、ただ一人。ジュリアン王だけでした。彼は王に不満を持つ貴族を集め、反体制の旗を掲げ始めたのです」


そして、ロウ騎士団長も語る。


「ジュリアン様は、密かに王に反発する貴族たちを集めて、グスタフ王と対立していきました。

その頃から、アンジェリカ様を経由してヴァルトシュタインの息のかかったものたちをグリモワールや都市国家群にも送り込み始めました。

アンジェリカ様も、グリモワールでは夫と別居になり、家督争いに頭を悩ませておられました。ですから、離れても、お互いの状況がそっくりな関係に連帯意識を持っていたのです」


ヴァルターは頷いた。

「この辺りは、俺も覚えがある。王城にかなりヴァルトシュタインの使用人がいたし、南部騎士団にも息のかかったものがいたよね」


グリモワールの王城の使用人に抱きつき、反応を見ていた頃だ。


抱きついたのに嫌がらず「どうされたのですか?」と根掘り葉掘り聞く奴は、だいたい母の息がかかった奴だ。

「寂しいんだ。僕」

と誤魔化して歩いた結果、刺繍をさせられるとは思わなかったが.....


そのうち、騎士団員にも息がかかっているものが多いことがわかり、元々嫌いな剣を交えるぐらいなら、一人で弓を射っていたほうがマシだった。

母から受ける勉強も、政治に関わるものも拒否するようになった。


バルザックとロウは決まり悪そうに頷いた。


「ジュリアン様の狙いはヴァレンティアと、将来的にはオリヴィアンでした。ヴァレンティアは資源豊富で海軍も強いですが小国ですから侵略も可能。領地も広げられます。更に、グスタフ王が亡くなれば、オリヴィアンも侵略可能という思いもあったようです。ただアルフレード様のことが誤算でした」


アルフレードの眉がピクリと動く。


「普通は嫡男が婿養子に行くなんて思いません。グリモワールがアルフレード様を助けるなら、オリヴィアンは攻めにくいと思っていたようだったのですが...」


そこで、ロウが苦しげに顔をゆがめた。


「――ですが、思ったより早く“その日”が来たのです。

 グスタフ王が、突然苦しみ始めて……亡くなられたのです」


彼の声だけが淡々と響く。


「痛み止めを服用された直後のことでした。

毎日飲まれていた薬。侍医が処方し、管理していた……。

ですから、本当に普通に病死だったと私どもは思っています。」


そしてロウは、遠い記憶を掘り起こすように語り続ける。


「その直後、ジュリアン様は王となりました。

クレア王妃を城から追放し、我々を任命したのです。

――バルザックを宰相に、私を騎士団長に」


「突然すぎるだろう。反発は?」


アルフレードが問いかける。

二人は、重く頷いた。


「ありましたが、政治も軍事も立ち行かなかった。

クレア王妃の影響力が、あまりにも強かったのです。

“洗い出せ。新しい王に従う者を見極めろ”――それが、ジュリアン様の命でした。

私たちは信じていたのです。歪んだ時代を終わらせられると」


ロウ騎士団長はそのように、ぽつりと話した。

そして、バルザックは悲しそうに言葉を呟いた。


「……即位の日、ジュリアン様は私たちに言いました。

“父の不倫のせいで、国が歪んだ。

俺の妻も、ばれていないと思って男を作っている。

俺はもう、アンジェリカ以外の女性は信用できない。

それでも、もし何かの間違いで、俺が父のように女に狂って国を壊すなら...そうだな、毒入りのワインを飲ませてくれ。そうしたら、私は自分が間違いを犯したのだと納得してそれを飲むから”と」


アルフレード、ヴィオラ、ヴァルター――三人は思わず顔を見合わせた。

それはヴァルターが最近、二人に語った言葉とそっくりだった。

しかも、ジュリアン王が命を落としたのは――オリヴィアンの毒入りワインによって。


「……まさか」


アルフレードの声が震えた。


ロウは、悔しげに拳を握る。


「王になってまもなく、すべてが崩れたのです。

ジュリアン王が突然、グリモワールとオリヴィアンへの侵攻を命じた……。私たちは、止められなかった。

王になった日、ジュリアンはあんなにも期待に満ちた顔をしていたのに」


アンジェリカが夫であるフェリックスを殺害したからだ。

ジュリアンは、グリモワールに侵攻せざるを得なくなってしまった。

唯一信じられる、妹アンジェリカを救うために。


「先日、グリモワールの発表により、私達はアンジェリカ様が、フェリックス王の愚行が許せず、殺したのだと知りました。でも、ジュリアン様は、そのことはおっしゃらなかった。

私たちには、今がグリモワールとオリヴィアンを抑える最高のチャンスだと言われたのみです。

でも突然すぎて、私達は、何がなんだかわからない。

ですから、てっきりグリモワールに侵攻し、フェリックス王を害したのだと思っていたのです。」


アルフレードは頷いた。

「そうだな。父王が私を害そうとしたことを知った母上がフェリックス王を殺したのだ。ジュリアン王と即位の時期がほぼ同じだったから、ジュリアン王も、この機に侵攻しようとしたようだな」


ロウは頷いた、

「はい。そしてあっという間にオリヴィアンも占拠しました。ですが、雪の進軍は、多くの騎士と兵の命を無駄にしました。“どうせクレアの息のかかった騎士ばかりだったんだからいいだろう”と。どんなに私が、進軍をお止めしてももう聞く耳は持たれませんでした」


バルザックも頷いた。


「突然人が変わっていくようでした。グリモワールに侵攻するのは、オリヴィアン侵攻の囮だといわれました。でも、最初に侵攻しグリモワールに残った騎士は見殺しになりました。

しかも、グリモワールからヴァルトシュタインの継承権を持つヴァルター様を保護したというのに、アンジェリカ様がグリモワールに残られたことをお怒りになられてしまいました。」


ヴァルターは頷いた。


「ジュリアン王に母上のことを聞かれたけど、俺は、戦争になって父上がやられたのでヴァルトシュタインに逃げるようにとしか聞かされてなくて、ヴァルトシュタインについたらジュリアンに叱られるし何のことかわからなかったよ」


ところが、しばらく軟禁が続いた後、ジュリアン王と面会した際ーー


「お前、なんでアンジェリカを連れてこない?お前の母親が父親を殺したから俺は動かなければならなくなったのに!!」


そうジュリアン王に怒鳴られて、俺はなんのことかわからず…


ただ、ジュリアン王の狂気に満ちた目をみて震えるしかなかったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ