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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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184/191

184 狙われた提督

北部の制圧は、2週間足らずで完了した。

雪は、本格的に降り始め、山は完全に積もっていた。


だが、こんなに後味の悪いものもない。

武器を落とした国民は助け、兵が散り散りになってからは民衆の保護に回ったが、それでも前線にいたものたちはかなり骸となった。


せめて安らかにと思っても、その北部の教会こそが兵と結託して、多くの亡命者を把握して兵に差し出していたのだからどうにもならない。


土が凍り始める中、大きな穴を開けて、できるだけ丁寧に埋葬するが、誰の墓かもわからない。

「安らかに眠って欲しい」

アルフレードは祈りを捧げるしかなかった。


オリヴィアンの兵は半分、グリモワールの兵は三分の一帰国して、雪に慣れているヴァレンティアの兵を中心に、防衛線を作り、さらに積雪に合わせて雪のバリケードも作る予定である。


北部の国民は冬が近づき、食料がなく飢餓状態にあるもの、衣服の確保ができないもの、暖炉の薪が準備できないものが多くいる。


オリヴィアンとヴァレンティアから、必要な食料の炊き出しや毛皮の供給、グリモワールからは山岳民族から買い取った薪を配り始める。


国民の恐怖に満ちた顔から、少し安堵が広がるが、多くの仲間が亡くなっている現状から、兵から目を背けるものも多かった。


教会で、亡命希望者を捕らえていた偽神官はすでに捕まえていた。

これから雪が降り積もるため、教会や逃げ出した貴族の邸宅などを中心に、兵の宿泊場を確保して、ヴァルターを領主とした街を作り始める。


「無事海軍も帰ってきた。無事、ヴァルトシュタインの海軍は制圧したんだが...その、ヘルマン殿が」

レオポルト王が先駆けをもらい情報を伝える。

「ヘルマン!何かあったのか」

アルフレードとヴァルター、ヴィオラは目を見開く。

「いや、無事なんだが、かなり危なかったらしい。海軍が、ヘルマン殿のみを狙ってきたらしくてな」


三人は顔を見合わせる。


ーーー


海軍の提督は、王の代理人という意味合いもある。

提督が乗る旗艦は、今回はオリヴィアンとヴァレンティアの二つの旗が並立する。 

これは、お互いの国が対等であることを示していた。



「ヴァルトシュタインの海軍、明らかに俺を狙ってきてるな」

ヘルマンは眉を顰める。

ヴァレンティアには全く見向きもしない。

ただ、俺の旗艦のみが執拗に狙われる。



ジュリアン王ーーーまだ、俺がアンジェリカの男だと思っているのか?



もちろん提督を狙えば指揮系統が一気に崩れるのが海上戦の特徴だが、数は圧倒的にうちの方が有利だ。

ヴァレンティア側の海軍も気づいて、ヘルマンを守る布陣に変えて行く。


それでも迷わず、相手は、とにかくヘルマンへ一点集中である。

隊列もない。


もう生きることを諦め、ヘルマンの首を取れば死出の武勲になるという感じだ。


船がぶつかってくるのを避けようと、艦首をぐっと曲げるが、左右どころか放射線状に一斉に襲ってくる。


「ヴァルターにはああ言ったものの、これは、死ぬ可能性は五分五分かな」


ヘルマンは、実は大規模な海戦経験はない。

長く海軍を巻き込む戦争はなかったからである。

それは、三国みんな同様である。

海軍戦は、数がイコール結果とは限らない。

提督がやられたら一気に崩れ、逆転もあり得る。

それだけに、とてつもない緊張感をはらむ。

更に、提督は、退避や逃亡は許されない。

逃亡は国家の敗北と、指揮系統の崩壊を意味する。


どの船も、まるで特攻のように狙ってくる。

そして、矢が何本も飛んでくる。


ヘルマンは目を凝らした。自分の直線上にーーいる。

相手の旗艦が見える。


笛を吹くーー進め、俺がやられても一気に進め!

一斉に、相手旗艦を目指し船のスピードをあげる。


すでに接舷され、船に乗り込もうとしているものを、弓兵が落とし、乗り込んできたものは、副官を中心に片っ端から切り倒していく。そのうち相手も一緒についてこようとするがヴァレンティアの船が後ろからどんどん火矢を放っていくので、消火に人手をさかれ、ついてこれず、逆に船に乗り移られて捕縛されていった。


ヴァルトシュタインの提督とヘルマンの目線が合うレベルまで近づいた。


「接舷の鉤を用意」


お互いに、鉄鉤が空を切った。と同時に、一斉に矢が降り注ぐ。盾と剣の音が響き渡る。

ヘルマンも盾と剣を持ち、最後の戦いに突き進む。


お互いの提督の喉を矢が狙い、互いの船から兵がなだれこむ。

だが、相手はヘルマン一点集中だったため、すでに布陣が崩れていた。一斉にオリヴィアンの船が、ヴァルトシュタインの旗艦を囲む。

旗を倒すもの、提督を狙うもの、それを防御するものが入り混じり、火のついた矢がお互いの船の甲板に突き刺さり焦げた匂いと血のにおいが混じり始める。


兵が一人踏み込んできたが、盾で抑え切り倒す。

操舵室の扉に血飛沫が飛んだ。


「相手提督打ち取りました!」

ヴァルトシュタインの旗が倒れ、一気に士気が上がる。

それでも、構わず最後までヘルマン一点狙いで、攻撃を続けるものが多かったが、ヴァレンティアの船も戦列に加わり、生き残ったヴァルトシュタインの船の捕縛を続けた。


結局聞き取りの結果、海軍の勝敗の有無に関わらず、ヘルマン提督の首をとったものには、褒賞が与えられるとジュリアン王から言われていたらしい。


あいつ、やっぱりまだ俺を狙ってやがったーー


この間の潜入捜査で何事もなかったから良かったが、そのしつこさにぞっとした。

もしくは、新しい情報を入れていないのか、受け入れないのか?一度でも気に入らないと認定したら、そのままなのか。



勝利はおさめたものの、そのジュリアン王の異様さに、ヘルマンはぞっとするのだった。










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