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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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174 初夜の誓いと湖の城

ヴァレンティアの王城はグリモワールのような大きさはないが、湖の中や浮かぶ物語に出て来そうな幻想的な城である。

特に、夜になり月明かりに照らされると、その雰囲気はロマンチックであった。


レオポルト王や王妃に出迎えられ、ヴァルターはセレンをエスコートしながら本日の結婚式のお礼を伝えていた。

「レオポルト王の助力がなければ、私たちがこうした幸せな関係を築くことはできませんでした。ありがとうございます。不束者ではありますが、今後もよろしくお願いします」


「いや、二人が幸せそうでほっとしたよ。」


微笑みを交わす二人の背中に、王は穏やかな眼差しを向けた。ヴァルターは武将としての才覚よりも、自然と漂う高貴な雰囲気を持つ王子だった。冷徹でもなく、力で示すタイプでもない。良くも悪くも等身大で、痛みも怖さも、好きなものもそのまま表に出す。


「嫌いなものを我慢して隠すのは、最近身につけたことです。以前はそれで、周囲を困らせてしまったので」


等身大で裏表のない言葉に、セレンは思わず心がほっと温まる。王妃も妹も、ヴァルターに夢中になるのがよくわかる。


ーー顔もいいからなあーーちょっと男としては嫉妬する

王妃も妹も、ヴァルターに夢中なのだ。


花嫁の父のカインなんて...思わず思い出し笑いしてしまう。

ヴァルターは剣が苦手である。

「こんなやつ、夫として認めない!!」

そう言ったのに、セレンと妻に怒られて肩身が狭くなった挙句、次にやらせた弓の腕前は騎士団でもトップクラス。

「なんで剣はそこまでダメなんだ!!」

「痛いじゃないですか?」

「.......」

会話が成立しなかった。

「少しだけリチャード騎士団長に同情するよ」

そう呟きながらも、リチャードが騎士団長である限り、ヴァルターを、守らないとな。一緒にオリヴィアンとなんかやれるもんかと誰よりも息巻いているのもカインである。


「二人は収まるところに収まってくれたが...ヴァルトシュタインをどうするかね」


レオポルト王は、エドガー前王が、アルフレードとヴァルターのことを心配していることを感じ取っていた。エドガー前王を知るものならみんな驚くだろう。

かつてのような強く恐れられた姿をではなく、純粋に孫の行く末を心配している祖父だった。

エドガーと話を詰める中で、アルフレードとヴァルターの面会から少しづつ再開してみようと考えていたのだった。



ーーー


そんな政治の裏話よりも、今のヴァルターとセレンには、思いっきり表話の初夜の儀が待っている。

二人には寝室が準備され、司祭や王、エドガーたちによって、ヴァルターが部屋に入るまで厳重に送られる。


「うーん、血の重要性を嫌でも認識してしまうな」


寝室に入り、ふーっとため息をつく。

よその国では、法廷で継承訴訟になったこともあるぐらい、初夜の証明が重要視されるもんな


「何をブツブツ言っているの?」

「いや...厳重だなって.......」

ヴァルターの目が、セレンの姿に釘付けになる。

薄いリネンの衣に、美しく飾られ、いつものふんわり香る汗の混じる姿とは異なるバラの香油が、セレンから大人の女性を感じさせた。


「ごめん、綺麗だから...ついじっと見てしまった」

ヴァルターがふいっと視線を逸らす。体が見えてしまう。

「そう、ヴァルターにそう思ってもらえるなら良かった。若くないから、恥ずかしいなって思ってたの」


十五、六歳が適齢期なのだ。

二十二歳の自分の歳では申し訳ない気持ちすらセレンの中では生まれていた。


「ぜんっぜん、恥ずかしくないよ。すごい綺麗だもの」

ヴァルターは、真顔で話す。

本当にそう思っているのだろう。そういうことを上手に繕える人ではない。

事実、雰囲気そっちのけで抱きついて来てるし....


「可愛い!化粧も似合うよ!大好き!」


まるで犬の愛情表現のようだ。

チュッ!チュッ!とリップ音がなる。

ただ、この格好で、そのスキンシップはむしろ、逆に恥ずかしい。


「友達じゃなくて、夫婦になれてもっと嬉しくなったよ。だって、もう抱きついても、キスしても怒られないんだよね」


そう言われると苦笑するしかない。

知ってる?私たちの仲はもう少し進展するのよ?大丈夫?って言いたくなるが、流石に言えない。


「そうね。わたしも嬉しいわ」


そう伝えると、すっとヴァルターの柔らかい目に獰猛な光が見える。えっ?とぞくっとした時には、唇は重ねられ、深く息も出来ないほど長く、繊細に重なっていく。

そのまま、ヴァルターの手は、セレンの頬、髪、背中を愛しそうになどっていった。


「んっ....」

思わずセレンから声が漏れると、獰猛な光を見せる目は静かに耳元で囁く


「セレン、距離はもう気にしないから自由にさせてもらうね」


耳元に息がかかり、小動物のようない穏やかな可愛らしいヴァルターの一面は、彼なりの処世術であったと初めて知る。

それを知っているのは、この世で私だけと思うと、セレンはヴァルターを抱きしめる背中に力が入る。


その夜、誰も知らないヴァルターの獰猛さと表に見せる優しさの入り混ざった愛を受けながら、セレンはヴァルターの妻になった。






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