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16 十六歳の反抗、そして初めてのキス

それから6年の時が経った

ヴィオラは、憤っていた。


「どうして私も海に行けないの!?私だって、アルフレードみたいに船に乗って学びたいの!」


父セバスティアン王は、相変わらず聞き流す。


でも、ヴィオラの心はもう我慢できない。

今まで子供は私一人だから、男の子みたいに乗馬も剣も兵学も必死で頑張ってきたのに……!


十六歳になった今、もう小さくない。

アルフレードが初めて船に乗ったのは十二歳。あの頃、私は十歳でまだ小さいから危ないって諦めた。

でももう、違う。


初めてアルフレードが海から帰ってきた日のことは今でも忘れられない。


アルフレードの眼帯がなくなっていた。

式典以外では、もう日常でつけることがなくなったのだ。

まるで憑き物が落ちたかのように、顔つきまで凛々しく変わっていた。

勉強の熱の入れ方も、学び方も変わった。

そして、お父様や周りの家臣の人たちの対応も変わっていった。


貴族の女性たちの間では「目を隠したら美少年なのに」と話題になった。

お母様までも「眼帯をしたら?」と言った。

でもアルフレードは笑って言った。


「もう、隠してもみんな知っていることだし」


不思議なことに、それ以来、彼をバカにしていた人々まで、逆に目を出されると傷を気遣うようになった。

そのうち、見慣れたせいか、もう誰も何も感じない。


あんな短期間で、アルフレードを変えてしまった船に……私も乗りたい!


「アルフレード!!」

叫ぶヴィオラに、18歳になったアルフレードは、眉をひそめてめんどくさそうに顔をしかめる。


「なによ!最初の頃の、優しかったアルフレードはどこに行ったの!」

以前そう言ったこともあった。

でも、アルフレードに「それは嫌って言ったんだろ」と返されれば確かにその通りだ。



でも、私たちは婚約者なのよ!

これじゃ、ただ喧嘩ばかりの兄妹みたいじゃない!


「アルフレードも、お父様を説得してよ!私だって、海軍の勉強したいの!実地で学ばないとわからないことだってあるって、アルフレードだって言ってたじゃない!」


アルフレードは、約束通り自分が学んだことを教えてくれる。

二人で学ぶことが大事――特別扱いせず、私が分からないところは先生に質問してくれ、必要な座学の時間まで確保してくれる。


でも……!


「港から見送るだけなんて、もう嫌!私だって見送られたいの!」

「港の地形や、船が上陸できる場所の把握だって大事な勉強だよ」


ぐうの音も出ない。


さらに泣きながら怒ると、アルフレードは甘い声で、でもちょっと面倒そうに言った。


「船の上は血気盛んな男ばかりだ。逃げ場もない。そんなところに可愛いヴィオラを行かせるなんて、俺には無理」


「なによ!そんなこと思ってもないくせに!心配するようなことをする男がいたら、提督が黙っちゃいないわよ!もう!」


それでもアルフレードは、さらっと笑いながら言う。


「思ってるよ。手を出さなくても、そんな目で見られるのすら嫌なんだ。俺の姫でしょう?」


めんどくさいけど甘い――アルフレードのその言葉に、ヴィオラの怒りは少しずつ、でも確実に溶けていくのだった。

いいえ!ダメ!!

いつもこれで丸め込まれてる!!


「わかったわ! アルフレードがそうやって私を丸め込もうとするのはもう結構!!」


私は仁王立ちになり、机で勉強しているすましたアルフレードの襟元を掴む。


「ちょっ! ちょっと! ヴィオラ!! 淑女でもそれはないし、男なら拳を構えるレベル!!」


「ええ、私も男だったら――拳で殴りたいわ! 

でも、あなたのことをこうして見つめてるだけで、心臓がドキドキしてるのよ! アルフレードは私を馬鹿にしすぎよ!! 丸め込もうとするのは大間違いだって教えてあげる!」


私が真正面から睨みつけると、顔が近い。

アルフレードの顔が真っ赤に。

その瞬間――私の唇は、思い切って彼の唇に触れた。


「んっ!」


彼の目が大きく見開かれる。

「私のファーストキスなんだから! ざまあみろよ! こんなこと、予想もしてなかったでしょっ!」


アルフレードはへなへなと崩れ落ち、呆然としている。


私は勝った! 


そして心の奥で、ちょっとだけドキドキしていた。


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