表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/191

158 王の影を継ぐ者

ヘルマンは報告が済んだら出国しようとした、

だが次の行き先、ヴァレンティア城に行くのに馬車は必要だろうということになり、準備のため一晩はゆっくりグリモワールの王城で過ごすことになった。アルフレードは、ヴァルターと久しぶりにエール(中世のビールのような飲み物)を飲みながら、外を眺めていた。


「アルフレード、今幸せか?」

「そんなわけ無いだろう。ヴィオラとも子供とも離れてるんだぞ」


俺は、はーっとため息をついた。

ヴァルターはそうだよなと呟いた。


「俺、アルフレードの役に立ってない気がするんだ。ヘルマンは色々気を遣ってくれるけど、剣でも勉強でもそんなに出来ないからさ。」


少しだけ口を湿らすようにヴァルターはエールを口に含む。


「そんな急にはできないさ。俺は明確に体を傷つけられていたから虐められていたってわかりやすいけど、囲われて、閉じ込められて、他の人から学ぶ機会を奪われたお前だって、被害者なんだぞ。自覚してないようだけどな」


俺は、つまみにヴァレンティアから手に入れたチーズを口に含む。独特の臭みとしょっぱさとチーズの濃厚さが口に広がる。


「俺の目のことがなければ、俺とヴァルターは息子たちのように学び、遊び、喧嘩も剣も普通にやってたと思うんだ」


母上がヴァルターを城の外に出そうとしなかったのも、側に置いて安心しようとしたのも……全部、俺の病のせいなんだろうな。


「たしかに原因はそうかもしれない。でも、囲われてほっとしてた自分はいたと思ってるから、俺の責任だよ。

それに、急には出来ないと言っても、俺も二十三歳だよ。子供じゃない。

....あのさ、ヘルマンが怒ってたから聞いたんだ。俺にヴァルトシュタインの王になってもらえないかっていうんだろう?」


ヴァルターはふっと俯いた。

アルフレードはこうやって今まで二人で話すこともなく、急激に大人になっているヴァルターに驚くと同時に、チクリと罪悪感を感じていた。


「申し訳ないけど、俺が自分で国をなんとかするっていうのは無理だ。自分で考えた気持ちになって、結局、言いなりになって、すでに母上もクレア様も不幸にした。

母上やクレア様が俺の血筋を利用して、王の傀儡にしようとしていたと聞いても、正直怒りも湧かないんだ。俺が考えて治めることと、他の人から傀儡にされて治める結果に違いがあったとは思えない。悪意があったかなかったかだけで、結果は同じだよ。だから最初から本当に傀儡になれって言ってくれるなら、アルフレードの役に立てるんだし、別になってもいいよ。」


ヴァルターはコップのエールを一気に煽る。


俺は、こんなふうに過去を見つめているヴァルターをみたことはなかった。

明らかにヴァルターは変わっていると伝えたかった。だが、すでに達観してしまったような、全てを放棄してしまったような弟の姿に動揺していた。


「そうだろうか?かつてはそうだったかとしれない。今、色々考えて、いろんな人の意見を聞くヴァルターが同じ結果を出したとは思えないよ」


ヘルマンが、俺を怒ったのは、傷ついたヴァルターをこれ以上傷つけるなということかもしれない。

俺はレオポルト王の指示のもと、傀儡の王としてなら、ヴァルターでもヴァルトシュタインを治められると思っていた。


その行為は、かつて母上が負け戦にもかかわらず、ヴァルターを使って戦争の大義名分をつくったことやヴァルトシュタインの元王妃が自分たちの都合の良いようにしようとヴァルターを傀儡にしようとしたこととなんら変わりがない。


「アルフレード、今度のヴァルトシュタインの戦いは俺が旗頭になるよ。ヴィオラ様が以前言ってたんだ。剣がうまくても、旗頭になる人は重い鎧をつけるから動けなかったって。ただ、矢がくるのを凌ぐしかないって。それなら俺でもいいと思うんだ。」


「いや、旗頭になるやつは、王になるやつだ」


「だからさ、中身はなくても王にはなるよ。でも中身は、アルフレードの信頼おける人に頼んでよ。

アルフレードでも、俺でもいいんだろう?王家の血筋は。それなら戦に出るのは俺だ。アルフレードは、小さい子もいるし、奥さんもいるし、グリモワールもオリヴィアンも守らなきゃいけないんだから。」


そう言ってヴァルターは微笑んだ。

俺は...何がすごく間違ってしまった気がする。

でも、この返答が俺が望んだ返答だ。


俺は少し沈黙したあと、わざと軽い調子で話を変えた。


「……あ、そういえば。セレン嬢はどうだった?」


さらに聞かなくてもいいのに、聞いてしまうのは頭がすでに王になっているからだろうか?


「アルフレード、俺と引っ付けようとしているのかも知れないけど、俺はグリモワールで廃嫡された犯罪者のようなものだ。あの子がヴァレンティアで、行き遅れて辛い思いをしたとしても、幸せな結婚でなければ意味がない。グリモワールやオリヴィアンにも、剣ができる良い家柄の男はいるだろう。そっちを当たった方がいい。俺は、軽く遊ぶことはあっても、誰かと付き合ったり結婚する気はないよ」


今まで女性関係なんて聞いたこともないのに、突然女性のことを聞いたり、女性と一緒に任務につければ否応なく気づくか...


廃嫡されていても、ヴァルトシュタインの王になるなら、ヴァレンティアにとってもグリモワールにとっても二人の結婚は悪い話じゃないと思ったんだけど....って、またセレン嬢やヴァルターの思いじゃなくて王として判断してるな、


変わってしまっているのは俺なのかも知れない。

俺は自分の判断の変化に不安を感じ始めていた





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ