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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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155 王都を離れて

ヘルマンとセレンがやっと帰ってきた。


だというのにーーーヴァルターは突然の指示に顔を上げた。


「今すぐ?」

「ああ。馬で行く。セレンは乗れるな?」

 頷くセレン。ヴァルターは露骨に顔をしかめた。


「えーっ!荷馬車じゃダメなのかよ」

「ダメだ。お前もいい加減馬車移動を諦めろ。」

5年間鍛え続けて、馬に乗れないわけじゃないのに少しでも楽をしようとする。

「ヴァルター、死にたいのか?」

そう伝えたら文句は言わないが...


「あとセレン、髪は束ねて帽子に入れろ。ヴァルター、服を貸してやれ。女が単騎で乗ってたら目立ってしまう」

「大丈夫です。」

セレンは、おもむろにガバッと髪を取る。


えっ!!


思わず声を上げてしまったが...ヘルマンとヴァルターは呆然とする。

この時代ーー長い髪は純潔の象徴だった。未婚女性で出家でもしない限り切らない

だが、セレンの髪は短く切られていた。


「ど...どうして」

ヴァルターは目を白黒させる。

「海軍に入って、髪は邪魔だなって。大丈夫、普段は、地毛でかつらを作ってる」

セレンは、目を逸らして話す。

三人に沈黙が流れるが、更に自分で男性用の服も準備していた。

「海軍で、ちょっとでも浮かないようにしようと思って男の格好してたんだけど、余計浮いちゃって...」


部屋の衝立の陰で着替え始める。

借りていた宿は個室だが、家族という設定上一部屋で過ごしていた。

着替えて出てくる。可愛い少年のようだ。


ヘルマンも少し考える仕草をしたが、セレンの姿を見て笑う。

「よし、完璧だな!おれの外套を貸してやる。これで、体のシルエットを隠せばヴァルターより男らしいんじゃないか?なあ、ヴァルター」

「俺の顔は母親譲りなんだよ。ヘルマン好みの顔だろ」

ヴァルターもふんっと笑う。

セレンは、二人の優しさを感じて「ありがとう」と小さな声で呟いた。


街道で馬を貸してくれる駅から駅へ、大体一駅が10キロから20キロ。二、三駅、王都から行ける限り離れよう。

一度でも兵に目をつけられたら、すぐ離れたほうがいい。


3人で馬を借りて、まず次の駅まで走る。

王都の街は、とにかく活気がなく女性の姿は特に見えない

女性に何か恨みでもあるのか?というぐらい、女性の行動が監視されているような閉塞感がある。


(最初から男の格好にしたらよかったかしら?)


だが、王都を抜けてヴァルトシュタイン中部に入ってしまうと、街そのものがあまり大きくないこともあり、少し女性も出歩いている姿が確認された。


王都にはあちこちに兵が立って、男女の行動を確認しているような様子があったが、中部、北部には兵がいない。


「どこかに拠点があるんだろうが...中部で聞き取りをするか」

宿は鉱夫が多い。真っ黒に汚れて、半裸の男性たちが大部屋で過ごす中で、ヘルマンたちは綺麗すぎる。

「あんたたちも国越えかい?」

宿で、そっと声をかけてくるのは宿の主人だ。

「いや、商人だが南部で何も売れなくてね。一旦、南部に荷物を置いて、先に中部と北部で入り用な物を先に把握しに来たんだ」

そうヘルマンが答えると、宿の主人はほっとしたように言う。

「最近は、国を越えようとする人が増えて取り締まりが厳しくなってる。この先の北部か山しか越えられないからな。」

「物が少ないって聞いて商売になるかと思ったんだがなあ」

「中部と北部は、食べるものは比較的あるんだが、それ以外の日用品がとにかく手に入らない。収入も良くないから、鉱夫で賃金を稼ぎに来ている人が多いんだ。怪我がつきものの仕事だが、医薬品は手に入りにくくて困ってるよ」

「医薬品か...俺たち商人でも、薬は手に入れにくいんだよな」


ヘルマンは、世間話のように話すと、亡命希望や国外逃亡ではないと安心した宿の店主は、長く話す人がいなかったかのように話し始めた。


「だけど、王都は男女で出歩くのも厳しいって聞いたぞ。鉱夫たちは、遊ばないのか?」

ヘルマンは困ったように眉を顰めて話すと、宿の主人も同調する。


「うちは、こう言う日雇いやおたくみたいな商人が中心だけど、ほかの宿では遊ぶようなところもあるよ。でも、いつ取り締まりを受けるかわからないから、よくそんな恐ろしい商売をするもんだと思うよ」

「そうか...だが前からそんなに厳しい国だったかな?」

「今の王が、前王妃に妹姫を殺された事件があっただろ。あの頃から、だんだんおかしくなっていったよ。」

「大変だったらしいな。その頃は違う国で商いをしていたから様変わりしてびっくりしたよ」


ヘルマンはそんな会話をしながら笑顔で手を振る。

「ありがとう、少し休んだらすぐ旅立つよ」

そう声をかけて、ドアを閉めて3人ではーっとため息をつく。


「なんか、ヘルマンさんすごいですね。」

「だから、セレン。ヘルマンのいうことの9割は嘘で固められていると思ったほうがいいぞ」

セレンとヴァルターはほっとベッドに足を伸ばした。

だが....


ベッド一つじゃないか!!

でかいベッドだ。

それをパーテーションのような布で仕切るスタイルだ。


だが、セレンは、躊躇わず、端に横になり疲れたのか数秒で眠りにつく。

「疲れてたんだな」

「女の子だもんな....」


そう言って当たり前のようにセレンの横で寝ようとするヘルマンを引き剥がす。

「油断も隙もないな!」

「俺は親子ぐらい離れてるけど、お前の方が歳が近いんだからアウトだろ!」

「なにいってるんだ。触れたと同時に、キスするような男を隣に居させて、安心して眠れるかってんだ」

「お前も、兄貴と似て変なところが純情だな。」

「その発言してる段階で、何かするって言ってるようなもんだろ。」


ヴァルターは、迷わず真ん中で横になる。

「大体、馬に乗りすぎて尻が痛くてたまらないのに、誰がそんな気になるか!」

そう言ってヴァルターも数秒で安眠する。


ヘルマンは、そっと小窓から宿の周辺の様子を観察する。

見張りやつけてきているものはいなさそうだ。

セレン嬢を見ると、ヴィオラ女王を思い出すが、一歳歳下なだけなのだから行動が似るのも当然か。


頑張っているが、海軍は特殊だ。

狭い船の中で、長く家族のように過ごす。

こんな未婚の女の子が安心していい環境ではない。

髪まで切って頑張っているが、ヴァレンティアの海軍も王族関係の子だと扱いに困っているんだろうな。



こんなに可愛くて、性格も血筋もいいのに……なんで縁談がまとまらないんだ?


隣のヴァルターをみる。こいつは、なまじ血筋が良すぎて、利用されてばかりだし、色々あるから生涯縁談がないのはわかるんだが...


ヘルマンは、困ったように子供のように眠る二人を見てため息をついた









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