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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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150 王の出迎え

ヴァレンティアの王城の正門に着いた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。

――まさか、レオポルト王自ら出迎えるとは。


普通なら宰相か侍従長の役目だ。

だが王は玄関前に立ち、微笑みながらこちらを見ている。

背後には近衛騎士たちが整列し、それだけで空気が張り詰めた。


「お初にお目にかかります。グリモワール国宰相、ローランにございます」


ローランが一歩前に出て、いつも通りの柔らかな笑みを浮かべた。


「王自らお出迎えとは光栄の極み。本日はどうか、実りある話し合いとなりますように」


俺も続いて頭を下げる。


「初めまして。オリヴィアン国王配にして、グリモワール王太子のアルフレードです。

このような場を設けていただき、ありがとうございます。どうか互いを知り、より良い未来を築けますように」


レオポルト王は小さく頷き、俺をまっすぐに見た。

一瞬、ほんのわずかに目を見開いたように見えた。


「初めまして、レオポルトだ。お二人の噂は聞いている。

少し気になったのだが……アルフレード殿の目のこと、こちらへ来るのに不便はなかったか?」


その言葉に、心の奥がわずかに痛む。

ヴァルトシュタインとの戦いの際、母が幼き俺に病を植えつけた――そんな話を自分が世に伝えた。

今更、否定することはできない。

こうやって母上は世の中でますます悪者になっていく。


だが、王の声音は冷たくなかった。

気遣うような、申し訳ないようにすら感じる口調だった。


「ご配慮ありがとうございます。幼い頃からのことなので、もう慣れております。

それに……道中、ヴァレンティアの人々の温かさに触れ、むしろ心が和みました」


レオポルト王の口元がふっと緩む。

「そうか。それを聞いて安心した」


そう言って、侍従長らしき男に案内を命じた。


……なんというか、あまりに“普通の人”すぎて驚いた。

祖父上がクセ強すぎなのか、セバスティアン王が賢すぎたのか、それともジュリアン王が乱暴すぎるのか。

目の前の男は、ただ“来たものを受け止める王”という印象だった。


部屋に案内されたあと、俺は小声でローランに聞いた。

「どう思う?」


ローランは軽く顎を撫でる。

「穏やかだが、見た目通りではないな。特に、アルフレード様の反応を見ていた。

さっきの“目”の話も、わざと踏み込んだ言葉だった。どう受け止めるかを試していたな。

エドガー王なら誇りのように語り、ジュリアン王なら怒りで返すだろう」


「じゃあ俺は、どう見えたと思う?」


「……それはまだ分からん。レオポルト王が何を見たいのかも、まだ掴めていない」


ローランの目が鋭く光る。

一方で、案内された客間を見て、俺は別の意味で息をのんだ。


こういった部屋では財力を示そうとすることが多いのに、金や銀はほとんどない。

だが、目を引く美しい刺繍のキルトが壁に掛かっていた。

テーブルには細やかなレースのクロス。職人の手仕事の温かさが感じられる。


見入っていると、侍従長が静かに笑った。

「素晴らしいでしょう。この刺繍は、ヴァレンティアの古い騎士譚をもとに作られたものです。

うちも寒い国ですから、冬の間はこうした手仕事が盛んでしてね」


その言葉に、俺は自然と微笑んでいた。

派手ではないが、誇りがある。

彼らは、自分たちの文化に“金と同じ価値”を見いだしているのだ。


……レオポルト王。

セバスティアン王の元婚約者の姫の弟、だったな。


セバスティアン王が三国同盟を提案した時、ヴァレンティアかオリヴィアンどちらにヴァルトシュタインは攻めてくるかわからなかった。当然、侵略してくる可能性もあった。


それでも王は、セバスティアン王の提案を蹴ったのだ。

こんなに、国民を財産だと思うような王なのにーー


――だからこそ、余計に不安になる。

それほどにセバスティアン王は彼らを傷つけてしまったのだ。

彼らを見ていると、政略結婚とはいえ結婚は人と人の結びつきだったのだろう。

果たしてヴィオラを受け入れてくれるだろうか。


俺は静かに息を吐いた。

だが、俺はオリヴィアンの王配だ。

その真意は聞いてみたい。そう思っていた。


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