149 理性を越えて、三国の交渉へ
頑張ってお誘いをしたアルフレードは、一度目も二度目も、侍女の手でヴィオラが飾り立てられていたのを思い出し、飾り立てる時間が必要なのだろうかと悩んでいた。
俺はいらないんだけど...
要らないって言ったら、わたしって魅力ないの?っていわれそうだし。
飾り立ててっていったら、そのままじゃダメなのっていわれそうだし。
そんなふうに食後ギクシャクしていたら、そのままグイグイヴィオラに部屋に連れ込まれる。
「アルフレード、たまには欲望のままいきましょう」
「え?」
「え?じゃないわよ」
ヴィオラが眉を上げる。
「国を動かすような大仕事の時には迷いがないのに、わたしと二人になると挙動不審なのよ。手がかかる男ね」
ヴィオラは、迷っている俺に飛びつき、首に手を回した。
そのまま唇を重ねてくる。
唇を重ねられると、こっちもその気だったのだからそのまま、俺の手もヴィオラを求めはじめるのだがーー
「ね、わかる?これがあなたの欲望よ」
さあこれからスタート!!――と思ったら、ヴィオラの方が先に止めた。
「お誘いができない理由よ。私が理性の蓋をとってあげないと、欲望を押し込めちゃうんだから。」
そういいながら、俺の眼帯を外し、爛れた目に口づけをする。
「君はいつもそうやってくれるけどね。最近、ヴァルターみてると、やっぱり女性には爛れた目は嫌がられるよなって思うんだよ。そうすると、なんか君には申し訳なくなるよ」
俺も、ヴィオラの首筋から耳元に、唇を伸ばす。
甘い吐息が、ヴィオラから流れる。
だが、怒りの押し倒しがやってくる。
「それ...女の子にモテたいって言ってるの?私だけに愛されるのでは不満とか?」
「ちがうよ。モテる男の方がヴィオラは嬉しいかなって」
慌てて俺は首を振る。
言葉のチョイス、間違えてないよな?
今の流れ...なんで怒った?
「いいわけないでしょう。例えばヘルマンが彼氏だったら、嬉しいと思う?あなたはフィレンタでの女の戦いを見てないからそういうのよ。一人に誠実な人の方がいいに決まってるわよ」
「そ、それは自信あるよ!」
「なら、いいわ。理性を吹っ飛ばす訓練よ。さあ、かかってきなさい」
「それさ、毎日理性がなくなる場合どうしたらいいんだ?」
「毎日お誘いしたらいいじゃないの」
押し倒されて言われるセリフじゃないけど...
毎日...魅力的かもしれない。
「毎日...でもいいのかな?ほんとに」
「わたしかダメっていったら、無理強いしないでしょ。わたしがいいって言えばいいのよ」
「なるほど...なんか女王様だな」
「女王だもの」
二人で顔を見合わせて、ぷっと笑った。
「じゃあ、女王様、家臣は欲望のままいかせていただきます」
俺はそのまま手を伸ばし再び彼女と触れ合い、抱き合い、口づけを交わす。
お互い傷ついた心が癒せるまでは時間はかかるが、お互いの触れ合いが心の傷を癒していった。
ーーー
ヴィオラから言わせると、そんな手のかかる俺は、欲望の毎日を過ごしはじめ、精神的にかなり満たされていた。
グリモワールの宰相ローランと俺はヴァレンティアに三国同盟の交渉のため入国する。
馬車の中から見る街並みは、オリヴィアンに似ている。漁業も盛んだし、酪農も盛んだ。
オリヴィアンが羊毛など毛織物に優れていれば、ヴァレンティアは乳製品が盛んだ。ヤギや牛の乳だけでなく、バターやチーズも作る。
「許されるなら、ヴィオラにもいつか見せてやりたいな」
その呟きが聞こえたらしく宰相も感嘆の声を上げる。
「グリモワールとはやっぱり景色が違いますな。目で見ないとわからないことばかりです。」
お互いに、外の景色に夢中になる。
国民性も良いのだろう。
馬車に向けて手を振る国民もいる。
俺はつい、振り返してしまった。
「ヴァレンティアの国はとても落ち着いているようだな」
家督を巡って内紛の多い国の中で、いつ戦争に巻き込まれてもおかしくないこの国が、どこよりも平和に暮らしいているのがとても不思議に思えてくる。
レオポルト王ーーーどんな人なんだろうか?
馬車は王城に入っていく。
湖の中に浮かぶようにある王城。
「幻想的だな」
思わず俺は呟く
それを聞いたローランは笑う。
「エドガー様なら、どう攻めるか?を最初に口にするでしょうね。」
祖父と孫ーー教えを受けても、根っからの性格はお互い違うのだった。




