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【完結】政略婚の向こう側〜この二人どうなるの〜  作者: かんあずき


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140 鉄の鎧と弓の矢

山岳地帯に近いグリモワール北部では、弓やクロスボウを扱う兵が多い。

反対に、オリヴィアンや南部では剣が主流だ。


アルフレードは海軍の訓練で弓を扱ったことはあるが、飛んでくる矢を避ける訓練は、ほとんど受けたことがない。


私――ヴィオラも、弓の訓練は受けていたものの実戦経験は皆無。得意とは言い難かった。


「もちろん避けられたら理想ですけどね。どちらかというと、弓の音や矢の軌道を感じ取って、体で守る方が現実的です」


そう言うリュカの声を聞きながら、私は訓練場に目をやった。


チェーンメイルをつけたアルフレードが、矢の音と同時に転がりながら盾で受け流す。

弦が鳴る――その一瞬のアルフレードの動きに、息を呑む。

見ているだけでも、あの反応速度は常人じゃない。


「……弦の音を聞く訓練なんて、初めて見たわ。エドガー王が見ておくように言ってくださったことに感謝だわ」


リュカに微笑むと、リュカが引き攣った表情をする


やっぱり、アルフレードったら昨日はかなりやらかしたのかしら?

周りがドン引きしてるじゃないの?


だが、今日のアルフレードは、昨日話をして少し不安が取れたのか、いつものアルフレードに近い。


動いている時は、訓練に集中して私に対しても、尊重はするが一人の兵の訓練のように扱うので周囲の安心感が伝わってきた。


昨日は、アンジェリカ王妃が亡くなって間もないのに、私が戦にでるから余計に不安定になっていたのだろう。

北部に来ると、空気やオリヴィアンに似た景色を感じさせるのだ。それは戦いがそばであることを意味していた。


ここで、自分仕様に作ってもらっていたプレートメイルをつけてもらう。重さ35kg。

重すぎる、体も上手く動かない。


「もう少し軽い方が良かったかしら?」


アルフレードはあの鎧で動けているのよね。


「アルフレード様は今、チェーンメイル(鎖の鎧)をつけてますがあれでも15kgぐらいあるし、結構体力を消耗します。練習にはいいですけど、実戦ではアルフレード様もチェーンメイルをつけないと思います。あれは水を含むと一気に重くなるし、矢に弱いんです。」


「そうなのね。」


あんなに日々練習したのに、動けないのはとても悔しい。

この重さでは一人で馬も乗れない。

でも、身を守る鎧は強固なもののほうがいい。


「避けるのは無理ですから、角度で受け流す訓練にしましょう。矢を斜めに受けるんです。恐怖には慣れるしかありません」


それを聞いて、頷く。

鎧そのものが盾のようなものだ。

鎧の中は、この季節、かなり熱がこもっていた。

動くたびに鉄の人間になったようだ。


「動きが...大変....」


(夏じゃなくてよかったとおもうべきなんでしょうね...)


「では、ヴィオラ様、いきますね」

リュカの言葉に兵が弦を引くと、ビンッという音が放たれた矢と同時に空気を割く。

反射的に、ヴィオラは肩をひねろうとするが、鉄板をかすめた矢が鎧の曲線にあたり地面に転がる。


――安全とわかっている矢でもかなりの衝撃ーー


動きたくても動けない。

兵に守ってもらわなければ、王は何もできない。

ただ、自分を守る。みんなのために倒れない。

それが仕事なのだと痛感する。


二つ目、三つ目、矢は容赦ないスピードで飛ぶ。

剣は、手を抜くこともあるだろう。

だが、矢はスピードがないと飛ぶことができない。

だから手は抜けず、容赦ない。


やはり、矢は当たる。

だが、今度は左に盾を出すことができるようになる。


「その盾の角度を変えてみてください」


わかったと頷くがほぼ動けないので伝わっているかどうか?

言われたとおり、盾の角度をかえる。

腕も重い。


「もっと筋力つければよかった」


後悔しても遅い。

鎧をつける体験がオリヴィアンでもほとんどない。

持っているけど重いし、戦闘になることもないのでつけることがないに等しかった。

しかも、王を名乗る立場でつけるなんて初めてだ。


「もっと斜めに、矢を逸らして!」

リュカの声が響く。

リュカは見た目は明るく社交的だが、アルフレードと同じく訓練になると目が変わる。


さすが副団長ね。ガスパーもリュカも強いわーー


思い切り盾を斜めにすると、矢の方向がぐっと変わる

体が動かないので、思い切り斜めにしたつもりでも、いい塩梅なのだろう


正面で受けてしまった矢の衝撃は強い。

だから、身をもって体感して、いかに矢を逸らすことができるかの重要性を体感できた。


「これでラストにしましょう」


ずっとひたすら矢を放たれてそれを防ぐ訓練をはじめてかなりの時間が経っていた。

リュカの指示で最後の矢が放たれる。


ヴィオラはもう力が続かず、立ち上がるのもギリギリだった。しゃがみ、膝をつく。


だが、しっかり盾を持ち上げ体を守る


矢が盾にあたり、それでも避けきれない勢いで、鎧にあたると、キーンという嫌な金属音が響いた。


「すごいな...」


リュカの迫力と容赦ない訓練に周りが息を呑む。

あの可愛らしい女の子が、何度も矢を受けても倒れない。


ただ、そこに存在するーー

自分は王になるーー


その気迫だけで立っている。

アルフレードは表情を変えず、その様子を見つめていた。


「覚悟は伝わりました。ヴィオラ様、リュカはあなたを必ずお支えします」


リュカの声に、ヴィオラはわずかに息を吐き、周りはどよめいた。リュカは力無いものに容赦はしない。


彼がその言葉を伝えると、周囲の士気が一気に上がったのだった


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