128 オリヴィアン奪還作戦
俺は、ヘルマンや海軍兵と打ち合わせをしていた。
「あれから、アンジェリカからはなんか連絡があったか?」
「ないな。かなり監視されてるんだろう。恋人を装って手紙を送ってくるぐらいだ。上手く連れ出せるんだかどうだか?」
ぶすっと返答しているが、ヘルマンがアンジェリカからの刺繍のハンカチを持ち続けていることをみんな知っている。
「布に罪はない。雑巾ぐらいにはなるからな」
そうは言ってたけど、他の女たちの刺繍のものは持ち歩いてないだろうに...
ヘルマンみたいなタイプだったら、アンジェリカも幸せな結婚生活だったのかもな...
いや、浮気性だから無理か。
アルフレードはため息をつく
「もし、連絡が入ったり、ヴァルターが保護できたら至急教えてくれ。ヴァルターは保護、アンジェリカは断首だ」
「......わかった。そうしてくれると俺もセバスティアン王やリリス王妃に顔向けできる」
ヘルマンは、笑顔で答える。
(だけど、会話に間があるんだよ。俺以上にヘルマンが動揺してどうするんだよ)
「今日、集まってもらったのはいよいよオリヴィアンを奪還することに決めたからだ」
俺の宣言にみんなが色めき立つ。
「だが、国民に立ち上がってもらい、ヴァルトシュタイン兵を国民の力で排除できなければ俺たちは負ける。今、国の状態はどうなってる?」
「地方のあちこちでヴァルトシュタイン兵に対して暴動が起きてる。せっかくできた作物も、国外に出せないし、騎士団も多数亡くなっているから治安も悪くなっている。あえて積極的にリチャード副団長も動いてないな。」
「ゼノス先生は?オリヴィアンにはいないか?」
「グリモワールに派遣した近衛兵とゼノスは、侵略の時に、防衛線に到着後シリル騎士団長たちの軍とヴァルトシュタイン兵を挟み撃ちにして戦ったそうだ。生き残った者たちが教えてくれた」
アルフレードは、その後、ゼノスの動きが聞こえないことから、戦死は覚悟はしていた。だが...やはり亡くなっていたか
「あの時、一足早く帰ってあげてくれなんて言わなければ..」
「そんなことを言ったら、あの時海軍でなければって思った海軍兵は多い。俺たちはまだ、姫を助けるという使命があったからなんとか奮い立てたが」
別の海軍兵が声をかけてくれる。
俺は頷くしかない。
「国民の不満の高まっているこの時に、俺とヴィオラの結婚を正式に国内外に告げる。そして、セバスティアンの誕生もだ。」
「それは、オリヴィアンの国民からしたらいよいよ盛り上がりますよ。だって、二人が帰ってくるのを信じてますから。しかも、お世継ぎまで。」
アルフレードは笑顔で頷き、続けた。
「そこで、フィレンタに来たオリヴィアンの海軍兵に、最近フィレンタで評判の手書き新聞のビラをまいてもらおうと思う」
「手書き新聞?なんですかそれ?」
「聞いたことはあるな。たしか、最近出来たお貴族や、商人、外交官などの金持ち向けの新聞だろ」
「それだ。すごく高いから新聞は庶民は読まないが、身分の高い奴らに周知もできるし、庶民用のビラも書いてくれる。それを街にまいてもらおう。後は、市場や商人にばら撒いてくれ。オリヴィアン国内に広く伝わるようにな」
「ヴァルトシュタイン兵は海軍の荷物に全くタッチしてないようだから、潜り込ませるのは可能だろうな。あとは、リチャード副団長に伝えて、口で広めてもらうか」
ヘルマンは思案する。
「リチャードには、これも伝えておいて欲しい」
俺は真剣な顔で伝えた。
「奪還の時は、正面から堂々と突っ込むつもりだ。ちゃんと俺たちが帰ってきたという旗を上げてな。だからみんなに、立ち上がってヴァルトシュタイン兵を排除し、ヴィオラを再び王座にと伝えてくれ。」
「いよいよなんだな」
集まった海軍兵の表情は、緊張しつつも明るい。
母国の土を踏める機会がやっと来たのだ。
望んでもないのにグリモワールに亡命するのは、悔しかったに違いない。
「でもさ、歯向かってきたやつは殺さなきゃダメだよな。ヴァルトシュタインの命令から逆らえずに攻撃させられる人っているんじゃないか?」
他の海軍兵は心配そうに声を上げる。
高齢者、女性や子供、人質をとられて強要されたものいろんな可能性が考えられるが...
「武器を持たないものは攻撃しないから、ヴァルトシュタイン兵に強要されて身動きがとれない場合は、戦う瞬間に武器を床に落とせと伝えて欲しい。
脅してくるヴァルトシュタイン兵がいるなら、どこにいるか大声で伝えろと。
みんなが一斉に攻撃し始めたらヴァルトシュタイン兵も自分達を守ることで精一杯だろうからな。
それなら、みんなも敵意があるかどうか判断つきやすいだろ」
みんなで顔を合わせて頷く。
「それで...だ。今話した通り、俺とヴィオラはいまさらではあるけど、結婚式をすることになったんだ。セバスティアンも洗礼するし。ここからは、本当に狙われる可能性が高くなるから、奪還までみんなあと少しだからよろしく頼むよ」
俺は改めて結婚と洗礼の報告をする。
みんなニヤニヤ笑っている。
「わかってます。アルフレード様からやっと殺気が減りましたもんね」
「殺気って。いや....そんなこと...あるかもな」
海軍兵はみんなヴィオラの警護につけるのに、俺は離れ離れの時期がとにかく長かったからやきもちを焼いていたのだ。
やっと一緒にいて当たり前でいられることが、妻と子供を堂々と自分の家族だと言えることが嬉しくてたまらなかった。




