126 旗を掲げる者
私は、壮大な話になり、ただただ驚いていた。
でも連邦国家になれるなら、それが一番だと思っていた。
結局、どの国も、いろんな人たちの犯した罪が、未来に継承されて、多くの犠牲を産んでいる。
私たちが出来ることで、未来に極力火種を作らないでいられるなら。
そして、連邦国家になったら、それらをアルフレードなら束ねることが出来ると自分も思った。
「その覚悟があるなら、いよいよお披露目だな。」
エドガー王はにっこり笑う。
「お披露目...ええと」
「もちろん、きちんとオリヴィアンで儀式を行った上での二人の結婚成立と、セバスティアン王の名を引き継いだ子供が産まれたことを、すべての国、そしてオリヴィアンの国民に伝えるんだよ」
私とアルフレードの顔が一気に明るくなる
「じゃあ、やっとセバスティアンは洗礼を受けて、この世に存在する子になれるんですね」
「ああ、遅すぎるぐらいだが、事情があったわけだからそこは大丈夫だろう。しっかり華やかにするんだ。そうすることで、オリヴィアンの国民の期待が高まる。みんなが立ち上がって、ヴァルトシュタイン兵を排除し、君が王であることを宣言さえすれば奪還は終了だ。」
「グリモワールの兵がヴァルトシュタイン兵を排除するのではないのですか?」
ヴィオラはキョトンとする。
奪還するとはいったものの、どう言う形が良いのか想像がつかない。今までの戦火は、数対数の勝負ばかりだ。
「そんなことをしたら、別の国に侵略されたら新たな別の国が襲ってきた。ということにしかならんよ。もちろんいくらか手は貸すが、あくまでもメインは君だ。自分たちでヴァルトシュタインを排除するんだ。その旗振りは危険だが、ヴィオラ、その役割は君しかいない」
一瞬、空気が凍った。
旗を振る――それはつまり、最前線に立つということだ。
もし誰もついてこなければ、私はそこで終わる。
アルフレードも、一緒に死ぬことになるかもしれない。
「セバスティアンは……?」
喉が震える。
「セバスティアンは、グリモワールとヴァルトシュタイン、両方の血を引く子だ。どちらの国も放ってはおかん。だから、もし君が倒れたときは――私が保護する」
エドガー王の目は、穏やかだが、鋭く、そして恐ろしく強い。
私は息を飲んで、アルフレードを見た。
「アルフレードを……ここに置いていきます。そうすれば、セバスティアンには父がいます」
「ヴィオラ!」
アルフレードの声が鋭く響いた。
私は震える声を押し殺して言い返す。
「セバスティアンを、親のいない子にしたくないの。あなたが一番、その辛さを知ってるでしょう?」
アルフレードの喉が詰まる。
その目に迷いと怒りと、どうしようもない思いが滲んだ。
エドガー王がふっと笑う。
「その覚悟も悪くないが……アルフレード。お前はグリモワールの王としてより、オリヴィアンの王配として戦いたいのだろう?」
部屋に重苦しい沈黙が流れた。
アルフレードは、深く頭を下げる。
「祖父上、申し訳ありません。俺はヴィオラを守るために、グリモワールの王になると決めたんです。
でも、このヴィオラの一番の危機にいないなら、王でいる意味がない。……祖父上、セバスティアンを頼みます。必ず、戻ります。」
エドガー王はゆっくりと頷き、にっこり笑った。
「そう言うと思っていたよ。――孫を死なせるような布陣にはせん。安心して行け」
重い部屋の雰囲気に、ようやく笑いが戻る。
でも、誰もがわかっていた。
その笑顔の裏にある覚悟が、どれほど重いかを。




