116 訓練場に響く剣音
アルフレードに剣先を向ける。
お互い、先を見計らっている。
剣先を当てるとカンという乾いた音が時々響く。
時々前に踏み込むが、アルフレード目線は全く動かず、簡単に私の剣を弾く。
その剣は、重く、速い。そして、踏み込むタイミングが力強く思わず怯んで引いてしまう。
その隙を見逃さず、わたしの面の寸前に剣を当てて止める。
これが真剣なら何度斬られてるかわからないわね
以前よりもさらに圧倒的に強く、訓練どころか一定の間合いにすら入れない。
何が私と違うのか?
少し体を捻り、この力強い剣を逃せないか試してみる。
だが、気づけば彼は正面を位置し、わたしの喉元をねらってくる。
(何とか、間合いに入れないかしら?)
思いきって、正面からいってみよう!
ドンと足を踏み込み、剣を振り払いながら間合いを詰める
木剣と木剣が重なりそれを振り払うたびに、音が鳴り、わたしの腕が痺れる。
いけっ!なんとか!一撃!!
だが、それも虚しく剣は弾かれ遠くへーー
カラン...虚しく剣が床に落ちる音が響いた。
アルフレードの剣先はわたしの喉元少し前で止まっていた。
「参りました」
やはり強い。悔しいけど、間合いにすら入れなかった。
その凄さにゲオルクとガスパー、海軍兵も目を見張り言葉を失っている。
アルフレードは一気に冷たい表情を解き、すぐ駆け寄ってくる。
「ヴィオラ!怪我ない?大丈夫??凄い勢いで、剣が速くなったけど、無茶しすぎだよ」
アルフレードはそう言った先から、もうわたしの肩を抱きながら喉と手を見ている。
「セバスティアンの世話もあるのに頑張りすぎだよ。もう!」
……さっきまでの冷徹な剣士はどこ行った?
周りは今度はそのアルフレードの甘い変貌ぶりに目を丸くする。
「あ、あの。わたしどこを直したらいいと思う?全くあなたの間合いに入れなかったのだけど」
「うーん、力で押してくるのはやっぱり失敗かな?力が強い男だと、今みたいに喉元を狙ってくるからやっぱり焦っちゃだめだよ。もう少し体力をつけて、相手の精神力をじわじわ奪ってチャンスを狙う方がいいな」
わたしのマメが出来た手を愛おしそうに撫でるので、流石に恥ずかしくなる。
みんなが固まってた理由はコレねーー触れる度合いが濃厚すぎるんだわ。
エドガー王に言われるまでオリヴィアンでは当たり前だったけど、冷静に周りの反応を見ると無茶苦茶恥ずかしいバカップルじゃないの。
「アルフレード、あの、あのね。指導も心配してくれるのも嬉しいんだけど手はやめましょう。」
そーっと、アルフレードから手を取り外そうとすると、アルフレードは目を釣り上げてゲオルクとガスパーを見た。
そして、手は外さず沈黙のままじーっと見る。
「あ、アルフレード様、ヴィオラ様とは普通の会話以外何もしておりません。」
「け、剣のお相手のみで、しかもヴィオラ様にはかないません」
二人はしどろもどろになりながらも、アルフレードが大切そうに掴むわたしの手を凝視する。
「当然だよ。ヴィオラの実力はすごいだろう?」
その笑みは、さっきの剣より鋭い
アルフレードの言葉にガスパーは頷く。
そして、目の前のアルフレードの強さにも驚愕していた。
兄と弟でここまで力が違うのか!と。
「アルフレード!恥ずかしいでしょ!これ以上ベタベタしたら口聞いてあげないわよ!!」
私は真っ赤になり、手を振り払い、その手でばしっとアルフレードの背中を殴る。
「い、いたいよ!ヴィオラ!君が可愛いから二人が間違えてヴィオラに一目惚れしたらどうしようかと...」
アルフレードがオロオロする。
言われる先から恥ずかしいわ!全く!!
「するわけないでしょ!アルフレード!しっかりしなさいよ!あんた、ここの王になるんでしょ。昼間っから、人前でベタベタと!!いい加減にしなさい!!!」
私はみんなの前で未来のグリモワール王のアルフレードを怒鳴りつける。
ヴィオラ様は可愛い顔をしているが、実は最強!!
そんな噂話が兵舎で流れていることなど私は知らない




