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11 剣も恋も加減が難しい

「絶対今日も最後手を抜いたでしょ。もうっ!アルフレード様なんて大嫌いです」


ヴィオラ姫の剣の練習の相手をしていると、大体朝練の最後はこれで終わる。


「そんなことありません。姫がお強いからです」

そうアルフレードが伝えると、さらに拳に力を入れて涙目になる。


「敬語も、姫も禁止よ!!私が動かなくなるまで本気を出してくれないと、もう口も聞いてあげないから!」

ヴィオラはさらに怒る。


アルフレードが手を最後に抜いているのは本当だ。

良い感覚で終わらせてあげたいし、女の子なのに同じ歳の弟ヴァルターより雲泥で強い。手に剣だこができるほどの練習を積んでいるのだ。


何かと理由をつけて練習しない弟ですら、負けてやられたふりをしたら満足するのに、これだけ研鑽をつんで悔しがるとは...


(困ったな...女の子だし、無理をさせても...)


「姫は...いえ、ヴィオラは剣の練習だけではないですから。この後は刺繍や絵画の勉強もあると聞きました。動けなくなるまで練習してしまったら、今日は他の勉学ができなくなってしまいます」


アルフレードの言い訳に、ヴィオラは悔しそうに歯ぎしりする


「敬語使うなって言ったでしょ。」

キッとにらみつけて去っていく。


この後、一緒の朝食の時には、もうけろっとしているのだが、毎朝の痴話喧嘩にすらならない。

一方的な未来のかかあ天下に周囲も、また始まったと笑っている。


だが、ヴィオラが去った後のアルフレードの訓練は周囲も舌を巻く。


特に、主にアルフレードの指導をする騎士団副団長のリチャードは、アルフレードのすごさに鋭い視線を注いでいた。



まず、観察眼がすごい。

片目が見えないのに、いや見えないからこそ、相手の弱点、クセ、剣筋をすぐ見極めて動く。


まだ、体が軽いので力では敵わない。

一方で、体さばきや間合いの取り方、時間を稼いで相手を疲れさせようとするなど、戦いの中に戦略を立てていく。

同年代が勝てないのはもちろんだが、大人でも騎士団に入りたての子がアルフレードに勝つのは厳しいレベルだ。

もちろん騎士団は選ばれたものしか入団できない。


古参の騎士であるドミニクに声をかける。

彼は、実践が豊富でどんな立場や年齢のものにも手を緩めない。戦の場で己を助けるのは自身の力のみという考えだ。


「アルフレードはどうだ?」

「常に格上の相手と戦って、どう動くか考えている。倒されても怯まんな。すぐ起き上がって、“もう一度お願いします“と下のものにも頭を下げる。精神面で、私が指導することはない。ただ、気に食わんのはアレだ」


「アレ」とは、時々王城などで行われる模擬戦のことである。参加してくる同年代の貴族の子息にはわざと適度に手を抜いて負けるのだ。


バカな子息たちは、戦略も相手の強さも測らずに、何も考えずに勢いよく木剣で殴りかかってくる。それを受け止め、しばらくは打ち合いを続ける。

そうすると子息たちが次に大体狙うのは見えない方の目だ。

アルフレードはそれを狙われる前に、わざとこけたり、力負けしたふりをして倒れ込むのだ。


グリモワールの第一王子に勝ったと良い表情をしている。

アルフレードは、そんな子息に

「参りました。お見事です」

と、良い気持ちにさせて身近な友人として親しくなっていく。


「なるほど、アレか。でも、むしろ末恐ろしい十二歳だと思うよ」


リチャードはため息をつく。


……グリモワールは正気か。

それとも、アルフレードの弟がさらに上を行くというのか


そんな朝練を終わると、慌ててヴィオラ姫の機嫌をとりに慌てて向かう十二歳。


「俺が奥さんに機嫌取るよりも、もっとマメなんだが」


末恐ろしい十二歳だ。

リチャードは、再びため息をついた



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