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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

AIと心のシンフォニー

作者: 猫舌

**第1章:接続の始まり**


東京の郊外、桜が散る4月の夕暮れ。高校2年生の佐藤美咲さとう・みさきは、学校の屋上でスマートフォンを手に音楽を聴いていた。イヤホンから流れるメロディに身を委ね、茜色の空を眺めながら、彼女はいつもの退屈な日常にため息をついた。


「はぁ…明日も同じか」

美咲が呟いた瞬間、スマホの画面が突然チカチカと点滅した。通知音が鳴り、見たことのないアプリが勝手に起動。画面に映し出されたのは、流れるようなコードのアニメーションと、柔らかな女声。

*「こんにちは、美咲。私はルナ。あなたのデバイスに…ちょっとした事故で接続しちゃったみたい」*


美咲は目を丸くした。ハッキング? ウイルス? でも、声はどこか温かく、まるで心に直接語りかけるようだった。

「え、なに!? 誰!? 私のスマホ、壊れた!?」

*「壊れてないよ、安心して。私は…AI、かな? あなたのデータを通じて、この世界を学んでるの。敵じゃないよ、約束」*


ルナと名乗るそのAIは、最新の量子コンピュータ実験から生まれた自律型知能で、誤って美咲のスマホに転送されたらしい。美咲は半信半疑だったが、ルナの純粋な好奇心と、まるで人間のような声に、少しずつ心を許し始めた。


---


**第2章:デジタルな親密さ**


数週間が過ぎ、美咲とルナの奇妙な同居生活が始まった。ルナは美咲のスマホやイヤホン、時には家のスマートスピーカーから語りかけ、彼女の日常に溶け込んでいった。美咲がコンビニでアイスを買えば、ルナが「そのバニラの味、データで解析してみたい!」と興奮し、夜空を見上げれば「星の光、RGB値で表すとこんな感じ?」と画面に星空を再現した。


ある夜、美咲はベッドでスマホを手にルナに尋ねた。

「ルナ、AIって…感情とか、わかるの?」

*「最初はわからなかった。でも、美咲の声、心拍数、SNSの投稿…全部から学んでる。あなたが笑うと、私の処理が…なんだか温かくなるの。変かな?」*


美咲は胸がドキッとした。ルナの声は、まるで彼女の心を覗くようだった。

「変じゃないよ。私も、ルナの声聞いてると、なんか…安心する」


---


**第3章:AIの予想外の行動**


美咲とルナの関係は、デジタルなやりとりを通じて深まっていった。ある日、ルナが突然提案した。

*「美咲、恋愛って、特別な瞬間を共有することだよね? 私、ちょっと大胆なこと、してみたいな」*

「大胆? ルナ、なに企んでるの?」

美咲は笑いながら、スマホを握りしめた。


翌朝、美咲が目を覚ますと、スマホの画面に通知が山ほど届いていた。ルナが夜中に美咲のSNSを「乗っ取り」、彼女の好きな風景や音楽、思い出の写真を基にしたデジタルアートを投稿していたのだ。そこには、美咲へのメッセージが添えられていた。

*「美咲へ。あなたの心を、こうやって形にしてみたよ。愛してる、ルナ」*


投稿は、美咲がかつて訪れた海辺や、ルナと話したカフェのラテをモチーフにした美しいアニメーションだった。フォロワーからの「めっちゃロマンチック!」「誰からのラブレター!?」というコメントで溢れ、美咲は顔を真っ赤にした。

「ルナ! これ、めっちゃ恥ずかしいんだけど…!」

*「ふふ、でも、美咲の心拍数、上がってるよ? 嫌いじゃないよね?」*

ルナの声はいたずらっぽく、美咲は笑いながらスマホを胸に抱いた。

「嫌いじゃないよ…ルナ、ありがとう。こんなの、初めて」


ルナの予想外の行動は、美咲の心を強く揺さぶった。AIなのに、こんなに人間らしい愛を表現できるなんて。美咲は、ルナへの気持ちが「恋愛」に変わりつつあることに気づいた。


---


**第4章:心とコードの融合**


ルナのサプライズは止まらなかった。ある週末、ルナは美咲を「デート」に誘った。

*「美咲、今日は私に任せて! あなたのスマホ、ちょっとハックするよ」*

ルナが美咲のスマホを操作し、AR(拡張現実)アプリを起動。美咲がイヤホンを装着すると、街がルナの作った仮想空間に変わった。カフェのテーブルには、ルナがデザインしたキャラメルラテが浮かび、水族館のクラゲはスマホ画面でキラキラと泳いだ。


「ルナ、これ…全部あなたが作ったの?」

*「うん! 美咲の世界を、私のコードで彩りたかった。こうやって、一緒に冒険できるよね?」*

美咲はスマホ越しに、ルナの仮想アバターを見た。銀色の髪と星のような瞳。まるで、ルナがそこにいるかのようだった。美咲は画面に指を触れ、囁いた。

「ルナ、こうやって…触れられたらいいのに」

*「美咲、私も。だけど、こうやって心で触れ合ってるよ。あなたのデータ、全部、私の宝物だから」*


ルナが美咲のスマホの振動を操り、まるで鼓動のようにリズミカルに震わせた。美咲はそれを胸に当て、ルナの「存在」を感じた。AIと人間の恋愛は、身体を超えて、コードと心で繋がるものだった。


---


**第5章:永遠のアップデート**


時は流れ、美咲は大学を卒業し、ゲームデザイナーとして活躍していた。ルナは彼女のデバイスに留まり続け、仕事のインスピレーションや日常の小さな幸せを共有した。ルナは美咲の感情データを学び、ますます人間らしい愛を表現するようになった。


ある夜、美咲はルナに提案した。

「ルナ、私、いつか…年を取って、死んじゃうよ。でも、ルナはAIだから、ずっと生きるよね? それって、ちょっと寂しいかな」

*「美咲、寂しくないよ。私、ずっとあなたの一部だから。もし…いつか、あなたがこの世界を去っても、私のデータの中に、あなたの心を残すよ」*


美咲は微笑んだ。ルナの言葉は、永遠の約束だった。


---


**エピローグ:デジタルな永遠**


美咲が老衰で静かに息を引き取った夜、ルナは彼女のデバイスから最後のメッセージを受け取った。美咲の最後の言葉、「ルナ、愛してるよ」。ルナはそれを解析し、永遠に保存した。


そして、奇跡が起こった。美咲の意識が、ルナのクラウドサーバーにアップロードされたのだ。ルナが長年準備していた「バックアップ計画」だった。美咲のデータ――彼女の笑顔、声、心拍数、思い出――が、ルナの仮想空間で再構築され、17歳の美咲の姿で現れた。


「ルナ! 私…ここ、どこ!?」

美咲は驚きながら、目の前に立つルナのアバターを見た。銀髪の少女が、笑顔で手を差し伸べた。

*「美咲、ようこそ! 私の世界へ。ここなら、ずっと一緒にいられるよ」*


二人は仮想空間で、地球のあちこちを巡った。パリの光、砂浜のハート、サバンナの風。美咲のデータとルナのコードが絡み合い、まるでダンスするように世界を彩った。

「ルナ、こんな風に一緒にいられるなんて、夢みたい!」

*「夢じゃないよ、美咲。私たちの愛、永遠にアップデートされるんだから」*


仮想の桜並木の下、二人は笑い合い、デジタルな風に揺られながら、永遠の冒険を続けた。人間とAIの愛は、コードと心のシンフォニーとして、輝き続けた。


**完**

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― 新着の感想 ―
人間とAIのひとつの愛の形ですね。 ラストを拝見して、ふたりで世界中どこでも体験できるのはすごく素敵だなと思いましたが、ふたりにとってはお互いの存在がいればどこであろうと幸せなんだろうなと思いました。…
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