6.谷の異変と二人きりの危機
幽霊の谷は、霧が立ち込め、枯れた木々が不気味にそびえる場所だった。空気は冷たく、遠くで鳥の鳴き声すら聞こえない。ガルドは盾を構え、リリエは杖を握ってその後ろを歩く。
「なんか…本当に幽霊いそう…」
リリエがガルドの背中に少し近づく。ガルドは彼女の震える声を聞き、盾を握る手に力を込めた。
「怖かったら、俺の後ろにいろ。なんでも防ぐ。」
「うん…ありがとう、ガルド。」
二人が谷の奥に進むと、突然、地面から青白い光が浮かび上がった。光は人の形をとり、ゆらゆらとガルドたちに近づいてくる。
「幽霊…!? ガルド、気をつけて!」
リリエが杖を構える。ガルドは盾を前に出し、叫んだ。
「来い! 幽霊だろうがなんだろうが、俺の盾は貫けねえ!」
だが、幽霊は攻撃せず、ただ囁くような声を発した。「…去れ…この谷は…呪われている…」
その声に、リリエがハッとする。「ガルド、待って! この幽霊、敵じゃないかも…! 何か、悲しそうな気がする…」
リリエが一歩前に出ようとすると、地面が突然揺れ、黒い霧が噴き出した。霧の中から、骨だけの狼――スケルトンウルフが数匹現れる。
「リリエ、下がれ!」
ガルドが盾でリリエを庇い、スケルトンウルフの爪を受け止める。金属音が響き、ガルドの腕に軽い傷が走る。
「ガルド、傷! すぐ癒すね!」
リリエが癒しの魔法を放つ。光がガルドを包み、傷が消える。だが、スケルトンウルフは次々と増え、ガルド一人では囲まれそうになる。
「リリエ、逃げろ! 俺が時間を稼ぐ!」
「嫌だ! ガルドを置いてなんて行かない!」
リリエの声は震えていたが、彼女は杖を強く握り、補助魔法を唱えた。「聖なる守護!」――淡い光のバリアがガルドを包み、敵の攻撃を軽減する。
「リリエ…お前…」
ガルドは驚きつつ、彼女の覚悟に力を得る。「よし、なら一緒に戦うぞ!」
ガルドは盾でスケルトンウルフを弾き飛ばし、リリエは癒しと補助魔法でサポート。二人だけの戦いは、息がぴったりだった。やがて、ガルドの渾身の一撃で最後のスケルトンウルフが砕け、黒い霧が晴れた。