3. 夜の酒場と小さな決意
ギルドに戻った夜、ガルドは酒場で一人、木製のジョッキを握っていた。クエストの報酬で少し奮発したエールは、いつもより苦く感じる。
そこに、キールとミラが現れる。
「よぉ、ガルド! 悩めるタンクの時間?」
キールがニヤニヤしながら席に座る。
「…なんの話だ。」
ガルドは目を逸らす。
「リリエちゃんのこと、だろ? 今日のクエスト、めっちゃヒーロー気取りで守ってたじゃん。」
ミラが肘でつつく。
「俺はタンクだ。仲間を守るのは仕事だ。」
ガルドの声は硬い。
「はいはい、でもさ、リリエのあの心配そうな顔、見逃さなかったよね? あれ、ただのヒーラーの顔じゃないよ~。」
キールがウィンクする。
ガルドはジョッキを握る手に力を込めた。
「…俺みたいな壁に、恋愛なんて似合わねえ。リリエは…もっと、キールみたいな軽いやつとか、別の誰かに…」
「は!? ガルド、お前、自分をなんだと思ってんの?」
ミラが呆れたように言う。
「リリエが誰をどう思ってるかなんて、本人に聞かなきゃわかんないじゃん。タンクだろうが何だろうが、気持ちは関係ないよ。」
その言葉が、ガルドの胸に刺さった。
(気持ち…か。俺のこの気持ち、伝えてもいいのか…?)
酒場を出たガルドは、夜空を見上げた。星屑のように輝く空の下で、彼は小さな決意を固める。
「リリエに…少しずつ、近づいてみるか。」






