表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/71

17. リリエの過去と魔法の影

鉄鉱山脈への道は険しい。岩だらけの山道、冷たい風、時折聞こえる魔獣の遠吠え。馬車は揺れ、パーティーは2日目の夜、狭い谷間でキャンプを張った。

焚き火を囲み、キールが干し肉を齧りながら喋る。「なぁ、鉄鉱山脈って、昔、魔王軍の要塞があったんだろ? なんか、ロマンあるよな! 隠された宝とか、呪われた剣とか出てこねえかな?」

「宝より、生きて帰る方が大事でしょ。瘴気の話、本気でヤバそうなんだから。」

ミラがキールを睨む。

ガルドは黙って焚き火を見つめ、リリエは膝を抱えて座る。彼女の目は、炎の揺らめきを追うように遠い。

「リリエ、寒くねえか? 毛布やるぞ。」


ガルドが自分の毛布を差し出す。

「え、ううん、大丈夫! でも…ありがとう、ガルド。」

リリエが微笑むが、その声は少し弱い。ガルドは彼女の様子に気づく。

「…なんか、変だな。お前、昨日から考え込んでる。話せるなら、話してみろ。」

リリエが一瞬目を逸らし、ため息をつく。「…うん。実は、この山脈に来てから、なんか…変な感じがするの。私の魔法、いつもよりざわついてるっていうか…。」

「ざわついてる?」

ガルドが眉を寄せる。キールとミラも会話に耳を傾ける。


リリエがゆっくり話し始める。「私、前に話したよね。子どもの頃、病気で死にかけて、変な光に魔法を貰ったって。あの時の光…この山脈に近づいてから、また感じるの。遠くで、誰かが呼んでるみたいな…。怖いんだ。」

彼女の声は震え、ガルドの胸が締め付けられる。彼女の過去――その詳細を聞くのは初めてだ。

「リリエ、その光…どんなだった?」

ガルドの声は低く、慎重だ。

リリエが目を閉じる。「…覚えてるのは、青白い光。暖かくて、でも、どこか冷たい感じ。声はなかったけど、頭の中に直接響いてきた。『生きなさい。癒しなさい』って。それで目が覚めたら、病気は治ってて、癒しの魔法が使えたの。でも…その光、ただの奇跡じゃなかった。時々、夢で見るんだ。光の奥に、なんか…暗い影があるの。」

「暗い影?」


ミラが身を乗り出す。

「うん。…はっきり見えないけど、怖い。まるで、私の魔法を監視してるみたい。この山脈に来てから、その影が近くなった気がする。」

リリエが体を縮こませる。ガルドは彼女の肩に手を置く。

「リリエ、どんな影だろうと、俺がぶっ潰す。お前の魔法が何と繋がってても、お前は俺たちのヒーラーだ。それで十分だ。」

「ガルド…」

リリエの目が潤む。

キールが咳払いする。「おっと、感動的だけどさ、リリエちゃん、その影って、魔王軍と関係あるんじゃね? 瘴気とか、なんか似てる雰囲気するし。」


「キール、軽々しく言うな。…でも、可能性はある。」

ガルドがキールを睨む。

「ごめん、リリエ、怖がらせた! でも、俺の炎魔法で、どんな影も焼き尽くすから!」

キールがウィンクする。

ミラが笑う。「キール、ほんと口だけは達者ね。リリエ、ガルドがいるんだから、安心しなよ。あいつ、壁以上に頑固だから。」

リリエが小さく笑う。「うん…みんな、ありがとう。ほんと、みんながいるから、怖くても頑張れる。」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ