12.リリエの秘密とガルドの決意
戦闘後、パーティーは遺跡の外で休憩を取った。キールは「いや~、俺の魔法、完璧だったな!」と自画自賛し、ミラは「はいはい、ガルドとリリエのコンビがMVPね」と笑う。
ガルドはリリエの隣に座り、彼女の疲れた顔を見る。
「リリエ、魔力、大丈夫か? 無理してねえか?」
「うん、ちょっと疲れたけど…大丈夫。ガルド、傷、ちゃんと癒すから!」
リリエが癒しの魔法を放つ。彼女の手から放たれる光は、いつもより少し弱い。ガルドはそれに気づき、眉をひそめる。
「リリエ、お前…何か隠してるだろ。」
「え、な、なに!? 隠してないよ!」
リリエが慌てて手を振るが、彼女の目は少し泳いでいる。ガルドは追及しようとしたが、彼女の疲れた笑顔を見て、言葉を飲み込んだ。
(…今は、信じるしかねえか)
その夜、キャンプを張った森の中で、ガルドは一人、焚き火を見つめていた。リリエの「心の傷もわかる」という言葉が、頭から離れない。
(俺の過去…話すべきか? リリエなら、笑わねえよな)
そこに、リリエがそっと近づいてきた。彼女は毛布を肩にかけ、星空を見上げている。
「ガルド、さっき…私のこと、隠してるって言ったよね。…ごめん、実は、ちょっとだけ、秘密があるの。」
リリエの声は小さく、どこか切なげだ。
「秘密?」
「うん。でも…まだ、話せない。ガルドに迷惑かけたくないから。…でも、いつか、ちゃんと話すね。約束する。」
リリエの瞳は真剣で、ガルドはそれ以上聞けなかった。
「…わかった。俺も、いつか話す。昔の、守れなかった話。」
二人は言葉少なに、星空を見上げた。焚き火の音だけが、静かな夜に響く。
ギルドに戻ったパーティーは、セリナに遺跡の報告をした。黒い水晶と瘴気の話に、セリナの表情がさらに厳しくなる。
「その水晶…魔王軍の『瘴気結晶』だわ。間違いない。ギルドマスターと相談して、緊急の会議を開く。ガルド、リリエ、キール、ミラ、準備しておいて。近日中、大きなクエストが来るわよ。」
ガルドは頷き、リリエの手をちらりと見る。彼女の小さな手が、今日も自分を支えてくれた。
酒場で、キールが「魔王軍復活とか、マジでやべえな!」と騒ぎ、ミラが「ガルド、リリエ、なんかいい感じだったよね?」とニヤニヤする。
「…ミラ、黙れ。」
ガルドは照れ隠しにエールを飲み干す。リリエは顔を赤らめ、そっと笑う。
(リリエの秘密…俺の過去…。これから、もっと近づかなきゃな)
ガルドは心の中で誓った。タンクとして、仲間を守る。そして、ガルドとして、リリエの心に近づく。