呪いのように美しく 【月夜譚No.335】
恋も過ぎれば呪いのようなものだ。相手を想う気持ちが大き過ぎて、それこそこの身を焦がすのではないかと思うほど身体の中で何かが燃えているような感覚がする。
学校の屋上。そこで彼女は長い髪を風に靡かせて、赤く染まった夕陽を瞳に映していた。
この想いが生まれたのは、一年前。最初は小さかったそれが大きくなるのにそれほど時間はかからず、今は身の内に収まっているのかと疑いたくなるくらいに膨れた。
ここまでくると自分の気持ちを抑えることが難しく、半ば勢いで本人の前で全てを吐露した。しかし。
『ごめん』
すまなそうな、淋しそうな、そんな声が頭にこびりついて離れない。あんな顔をさせたいわけではなかった。謝らせたいわけではなかった。
赤が滲んで、見えていた町の景色が歪んで崩れる。大粒の涙は頬を伝って足許に落ち、夕陽を反射した。
あんな風に言われても、きっとこの気持ちは消えない。消えてくれない。
いっそ涙と一緒にこの身体も溶けてなくなってしまえば良いのに。
やがて姿を現した星々は彼女の願いを聞き届けることもなく、ただそこで輝き続けた。