蜻蛉の導き
◇
「今度はカマキリ、ねぇ」
「大きいですね……」
そこに居たのは高さ20mくらいのカマキリであった。
二人はそんなに虫に詳しいわけではないので、何のカマキリかまではわからない。
「奥に道があるよぅ」
「でも、カマキリが邪魔ですね」
「じゃあ倒すしかないねぇ」
レイズが双剣を取り出し、カマキリへと近づこうとしたその時。
―――ヒュッ
―――ガッ!!
レイズの目の前に鎌が振り下ろされる。
「あっぶな……あと少し前に居たら脳天ぶち抜かれてたねぇ」
「今の攻撃……速すぎて見えませんでしたよ」
「【瞬身】で俺だけなら避けて行けそうだけどねぇ」
「…………」
「ほっ」
一歩踏み出し、すぐに後ずさる。
―――ガンッ!!
鎌が振り下ろされ、レイズが立っていた床に刺さる。
「はっ」
再び一歩踏み出し、すぐに後ずさる。
―――ヒュオッ!
今度は鎌が横に振られ、壁に突き刺さる。
「うーん、動きに反応して攻撃してきてるねぇ」
「じゃあ、ゆっーくり行けば気付かれずに行けるんじゃないですか?」
「ほふく前進でもするの?」
「します」
「まじでぇ?」
ヨザクラがほふく前進でゆっくりと進んでいく。
カマキリはヨザクラに気付いていないようだった。
「いい感じだねぇ、一応危なくなったら【瞬身】で注意を引くよぅ」
「ありがとうございます……」
ヨザクラは息を潜める。
カマキリが一瞬、ヨザクラの方を向く。
ヨザクラの息が緊張で荒くなる。
「危ない! 【瞬身】!」
レイズがすかさずスキルを使用し、カマキリの注意を引く。
レイズはその勢いで、道の入口までたどり着いた。
ヨザクラも遅れて道までたどり着く。
「でも、これで良かったのかねぇ」
「あ、そういえばクワガタは……?」
クワガタが動き出したと思うと、翅を広げ、一気にカマキリへ肉薄する。
鎌がクワガタを襲うが、クワガタはその大顎でカマキリの頭部を噛みちぎってしまった。
「このクワガタ強いねぇ?」
「ですね……あんな一瞬でカマキリをヤッちゃいましたよ」
追いついてきたクワガタに再び乗り、先に進んだ。
奥に進むとそこは部屋であった。
部屋の中央には魔法陣が有り、それ以外は何もない、普通の部屋だった。
『EXクエスト:動視の試練を完了しました』
『EXクエスト:鹿角の試練を完了しました』
『称号:鹿鍬の守護者を獲得しました』
クワガタが魔法陣に乗る。
二人と一匹は再び光に包まれる。
気が付けば大樹の根本にいた。
◆
「暇だなー」
「戦闘中に暇ってのもおかしいと思うが……」
「だって降りてこねぇんだぜ」
「まあそうだけどさ……」
そこに、知っている声が聞こえてくる。
「ライラックさーん!!」
「あ、二人が戻ってきて…………え?」
蜻蜓も異常に気付いたのか、ヨザクラたちの方を向き滞空している。
「なんだそのクワガタは!?」
「なんか……居たんだよねぇ、あそこに」
「なんかって何だよ」
「ディディエールシカクワガタじゃんか……いいなぁ」
「でぃでぃ……?」
「ま、四人と一匹で協力して倒そうってわけよ」
ヨザクラは言っちゃ悪いが戦力外……だと思っていたので、ここでシカクワが来てくれたのはありがたい。これでヨザクラもシカクワに乗れば機動力を確保できそうだ。
「空を飛べるのはそのクワガタしか居ないので……よしヨザクラ、蜻蜓を地上に降ろせるか?」
「やってみます」
「これでようやくまともな戦闘ができるなぁ」
「だな」
「何してたのぉ? 二人とも……」
「こっちのセリフだ」
ヨザクラを乗せたクワガタが空へと飛び立つ。
蜻蜓と見比べると小さく見えるが、それでも。
蜻蜓とクワガタが鉢合わせる。
クワガタは大顎で蜻蜓の胴体を挟んで動かない。
蜻蜓の大顎はクワガタには届かない。蜻蜓は必死に旋回し、クワガタを振り落とそうとしている。
「【創造せし道】」
レイズがそのスキルを発動させると、レイズは空を駆け始める。
「ん? レイズ?」
「空は飛べないけど、歩けはするんだよねぇ」
「いいなぁそのスキル……」
レイズは蜻蜓へと一気に駆け、その二つの刃を向ける。
「【内部麻痺】!」
レイズがその刃を刺した瞬間、蜻蜓が一瞬痺れ、動きが鈍くなる。
その時、クワガタが下に向かい全力で翅を動かした。
蜻蜓は慌てて翅を動かすも、高度はどんどん下がっていく。
「やべ、早く降りねえと」
ライラックとライズは急いで下に降りる。
蜻蜓が遂に地に着く。
「【レインフォースメント・マジック】【アンリミテッド・ソーサリー】【【【【【フリーズスタン】】】】】!」
「【重撃】【揺らぐ焔鎚】!」
二人の渾身のスタン攻撃が、蜻蜓に叩き込まれた。




