鹿角と槍、炎の試練
◇
レイズが樹洞の奥を覗くと、そこには。
「―――クワガタだ!? ってうわぁ!?」
その瞬間、レイズとヨザクラ、そしてクワガタが光に包まれる。
「これ、転移魔ほ―――」
二人と一匹はどこかへ消えた。
「…………ここは?」
そこはトンネルであった。
道には草が生え、壁にはツタが這っており、古びたトンネルのように見えた。
「あ! クワガタが攻撃してきま…………せんね」
クワガタは二人を攻撃しなかった。
それどころか、大顎で二人を持ち上げ、自身の背中に乗せたのだった。
「これって……」
「うん、あのときと同じだねぇ」
ハンミョウのときと同じ、導かれているような状況。
それは、歩む先に何かがあることを示していた。
暫く進むと、クワガタがピタリと止まる。そして、翅を広げ二人を地面に下ろした。
二人がクワガタの前に出ると、そこにはドーム状の空間が広がっていた。
「おお、すごいねぇ」
「神秘的ですね」
壁には窓が有り、日が差し込んでいる。
植物が生い茂り、無数の蜻蛉が飛んでいた。
そこに、通知音が鳴る。
ウィンドウが開き、文字が表示される。
『EXクエスト:炎の試練が開始されました』
◆
―――ゴクゴク。
【蜻蛉切:偽槍】をずっと展開していたのでMPが枯渇しかけたが、ポーションを飲んで全快だ。
これで準備は万端、今度はこっちが攻撃する番だ!
「つっても、空中にいる敵をどうやって攻撃するんだ?」
「手始めに……【アンリミテッド・ソーサリー】【レインフォースメント・マジック】【絶対零度】!!」
「答えになってな―――」
「【【【ピアシングアイシクル】】】!! 【【【レイジング・ブリザード】】】!! 【【【アイスキャノン】】】!!」
「何をブツブツ言ってんだ……?」
うるさい、できるだけ多く発動するためにこっちは詠唱に必死なんだよ。
うおおお頑張れ俺の滑舌……!!
【ピアシング・アイシクル】によって蜻蜓の上から氷柱が落とされる。
【レイジング・ブリザード】で生成された氷の礫が、蜻蜓へと飛んでいく。
【アイスキャノン】が、蜻蜓に向けて氷塊を発射する。
蜻蜓はそれらを全て避けた。そして、氷魔法の軌跡が氷として残る。
一つは氷の柱に。一つは柱への道に。一つは柱から柱への道に。
それは蜻蜓に攻撃をするための足場だった。
「ライズ! 合図したらアレを使ってくれ!」
「了解だ!」
ライラックが氷の足場を登っていく。
そして氷の柱の上に立ち、蜻蜓が来るのを待つ。
「こっちが行けないんだからあっちに来てもらうしかないよなァ!」
蜻蜓はライラック目掛けて急加速。
この小さな足場ではこれを避けることは難しいだろう。
しかし、【危機対好機】の効果により蜻蜓は【好機】状態にある。
つまり。
「蜻蜓が来るタイミングでこちらが先に攻撃する必要がある、か」
「っしゃ! 来いや!」
こちらが先に攻撃することで、【危機】状態になり、【危機対好機】が自動で発動され、蜻蜓の攻撃を避けることができるのだ。
槍を構え、向かってくる蜻蜓へと向ける。
蜻蜓が突進する。
ライラックがその槍を蜻蜓の頭部に突き刺す。
しかし槍は通らず、攻撃判定にならなかった。
「【串刺槍】【コンティニオス・スピア】!!」
スキルを発動し、やっとその槍は蜻蜓の頭部に傷を付けた。
ライラックが居た場所を高速で蜻蜓が通り抜ける。
蜻蜓はライラックの方を向くために回転する。
「今だ!」
「【縮小杖】!!」
【縮小杖】とは、以前のイベントの三位以内報酬である。
その効果は名前の通り、巨大化した昆虫を"縮小"させるのだ。
杖から放たれた光の弾は、蜻蜓が止まった一瞬を突き、蜻蜓に命中する。
100m程あった蜻蜓は、半分程の大きさになった。
昆虫豆知識コーナー
テイオウムカシヤンマは世界最大のトンボです。
その大きさは最大で16cmにもなるそうです。
ちなみに古代のトンボであるメガネウラは70cmくらいあったそうです。
え、このクワガタはなんなのかって?
ディディエール…………あとは分かるね?
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