古の帝王
5万字……
「本当はカウンター的なものが欲しかったけど……まあいいか」
横から残ったトンボが突進してくる。
「ふんっ!」
真正面から槍を突き刺し、トンボが消失する。
『レベルが上昇しました』
おっ、きたきた。
二十体ぐらい倒してやっとLv:39か……あんまり経験値美味しくないな。
やっぱあのゲンゴロウの湖って結構良いところだったんだな……
「スキルは……【串刺槍】が増えてる! ああ、やっと攻撃スキルだ……これで少しは戦いやすくなったな」
そこへ、十時を過ぎヨザクラ達がやって来る。
「あれ、トンボが全然いませんね……?」
「ああ、それ全部倒しちゃった」
「!? そうなんですね……まあ行きましょう、桟橋にあるので」
四人で湖の桟橋に向かう。
桟橋に着くと、ヨザクラは一歩踏み出し、四人の先頭に立った。
「槍の―――に―――――――――たり、蜻蛉の――て、――に触れて――――ば、かくぞ―――る」
「何て?」
ヨザクラが謎の言葉を言うと、桟橋の先の水面が揺れ始める。
水面の下に影が見え、その姿を表す。
湖に小島ができ、その中央には槍が立てられていた。
「あれが蜻蛉切です」
「さっきの何だったの?」
「あれを言うとこの島が出てくるんですよ。最初に発見した人凄いですよね……」
「なぁヨザクラ、その情報ってどこまで出回ってるんだ?」
「え……でも、無料で教えてくれたんで結構出回ってると思います」
「で、まだここにあるということは、今まで誰も入手できてないんだよな」
「そりゃあねぇ」
「てことは凄く入手難易度が高いんじゃないか?」
「そりゃあねぇ?」
「……できるのか」
「さあな?」
「まったく……結局ライラック頼りなんだからしっかりして欲しいぜ」
―――ゴオオッ!!
「何だ!?」
突然、強風が四人を襲う。
この感じは、アレクサンドラトリバネアゲハのときと同じ―――
「テイオウムカシヤンマです―――!!」
世界最大の蜻蛉、帝王昔蜻蜓がそこに現れた。
蜻蜓は湖の奥に着地し、こちらを見つめる。
何なんだ?斑猫もそうだったけど何でこっちを見つめてくるんだ?
いや、そう感じるだけかも知れないが。
―――ボッ!
蜻蜓が飛び立つと、トンボの出す音とは思えない風音が鳴り響く。
「あっライズ!?」
目にも止まらない速さで蜻蜓はその六本脚でライズを掴み、上空へと連れ去る。
……これ倒せるの?
「えっと、まず皆さんに槍の入手条件を伝えます」
「あ、うん」
「条件はあの槍でとどめを刺すことかもしれないそうです」
「まさかの推測―――!?」
「待っ」
蜻蜓はライズとともに空中を旋回している。
そして段々と加速し、大樹に向かって一直線―――
ゴンッ、と鈍い音が鳴りライズは大樹に激突した。
蜻蜓はというと、直前にライズを手放し急停止していたので大樹にぶつかることはなかった。
「落ちてくるよぉ!?」
「キャッーチ!! そんで回復!!」
樹から落ちてきたライズをダメージの無いようにキャッチし、すぐに回復させる。
「目……目が回る……ぜ……」
「これ勝てんのか? しかもあの槍でとどめとか無理では?」
「それも確かじゃないんでしょお?」
「無理、ですよね……」
うーん、何か勝てる手はあるのか……?
まず掴まれるのが危険だ。なら、それを回避する手段……
「皆、樹の近くにいこう」
「何でだ?」
「また同じことされたいか?」
「いいや、お断りだ」
「じゃあ早く!」
まだ目が回っているライズがフラフラと走っている。不安だ……
取り敢えず樹の下に避難だ、避難。
「で、どうするんです?」
「どうするかはわからない。だが、ここなら体の大きいアイツは俺らを掴めない」
「なるほどねぇ」
現に蜻蜓は、樹の側にいる俺達を見つめるだけだ。
「ただ―――」
蜻蜓が高度を落とし、こちらに真っ直ぐ突進してくる。
嘘だろ、それじゃ蜻蜓も樹にぶつかるぞ!?
―――と思いきや、寸前で旋回し、その巨大な翅で四人を樹ごと薙ぐ。
「あっぶね……ヨザクラ!?」
ライズ、レイズ、ライラックは回避できたものの、ステータスが低いヨザクラは左足を持っていかれてしまった。
「まずいな……」
IIOでは、"損傷"した場合はポーションで回復することができるが、"欠損"した場合はそうではない。
琥珀騎士団にヒーラーは存在せず、現状欠損を回復させる方法がない。
「レイズ、ヨザクラを樹の上に避難させてくれないか?」
「いいよぉ」
レイズはヨザクラを抱えたまま、【盗賊】ならではの高いAGIを活かし、スイスイと樹の上の方へと登っていく。
蜻蜓は一度遠くへ離れる。
遠くから加速し、また同じことをするつもりだろう。
「何か作戦はあるのか?」
「ない! 当たって砕けろ!」
「それが作戦だな!」
再び翅攻撃が来る、そのタイミングに合わせて……
「【危機対好機】!!」
「【即時回避】!!」
二人は翅攻撃を避け、攻勢に出る。
一方で。
「ふう、ここまでくればいいでしょ」
「ありがとうございます」
そこは大樹の頂上付近にある、大きな樹洞だった。
「こんな丁度良い場所があるとはねぇ」
「ですね」
樹洞の前には枝が伸びており、さながらベランダのように足場になっていたのだった。
まさにそこは、家のようであった。
「奥に何かいる―――?」
その奥には黒い影が見えた。
―――鹿の角のような大顎を持つ甲虫が。
「―――クワガタだ!?」
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