バーチェル・レンジャー その7
◆
「なあライラック。思ったんだが……」
兵アリを倒し、ヨザクラ達の元へ戻ってきたライラックにライズが問いかける。
「あのでかいアリも網で捕まえればよかったんじゃないか?」
「……ああ、その通りだな。だが……」
「あいつで試し撃ちをしたかった。それだけだ……」
「そう、か…………?」
本当は脳裏にもなかった事は黙っておく。そうだよな、網で捕まえれば……いや、実際試し撃ちはしたかったし、網で捕まえるだけじゃつまらないので良しとする。
「それにしても、ライラックのお陰で大分楽になったねぇ。今だって戦わなくても大丈夫だし」
「そうですね……確かに、ライラックさんが居なかったら苦戦していたと思います」
「……それすごいの俺じゃなくて網じゃない?」
そう、今は仲間にしたアリに戦闘を任せている。テイムすると少々ステータスが上昇するようで、何の問題もなく戦えていた。
暫く談笑していると、仲間のアリ達がこちらに戻ってくる。アリの襲撃が終わったようだ。
それと同時に、四人に通知音が鳴り響く。
受信トレイを開くと、それはイベントに関するお知らせだった。
「第一ウェーブクリア……あ、これ第二ウェーブ、第三ウェーブってあるやつだな」
「おっ、下にそれについての説明が書いてあるぞ」
「何何……?」
ウェーブに関して
・ウェーブ中は蟻が襲撃してきます
・ウェーブは十分から一時間の間続きます
・ウェーブ終了後三十分から一時間後に再びウェーブが開始されます
・ウェーブ終了後からウェーブ開始までの間、プレイヤーはアリのコロニーを発見次第、攻撃をすることができます
・ウェーブを重ねるごとにアリの数や強さが増加、上昇します
「ふーん、でもさぁ。網使えばなんでも勝てそうな気がするんだけど……皆はどう?」
「そう思うぜ」
「そう思います」
「じゃあそうなのか……?」
「なんで本人が一番不安そうなんだよ」
「いや、網で捕まえるだけのヌルゲーになって欲しくないし……」
「でも、敵が強くなると味方も強くなるから負けるはずないんだよねぇ」
「くっ……なら、網無し縛りするか……?」
「「それは駄目」」
仕方ない……例えヌルゲーになろうとも、一位を獲る勢いで網を振ってやろうじゃないか。
◇
―――カワセミの勝算とは、この一撃であった。
「―――【大自在天】」
カワセミの掌の上に一つの鏃が創り出される。
「【星天終末】―――!!!」
それは破壊の力であった。
それは宇宙の終末を意味した。
それは使われることは無かった。
これは破壊の力であった。
これはまだ何も意味しない。
これは模倣品であるが故に、これは初めて使われた。
鏃は空気を切り裂き、轟音と衝撃波と伴に真っ直ぐ飛んでいく。
女王アリを庇おうとした兵アリが、一匹、二匹、三匹と、次々に貫通され力尽きる。
遅れて行動をとった女王アリが体をよじる。
鏃は既に女王へ届いていた。
それは腹部に大きく、深い穴を開けていた。
カワセミがその場に倒れ込む。
この技の対価はMPとSTMの全消費、そしてステータスの一時的な半減であった。
女王は逃走した。
迫る追手を兵に任せ、傷ついた体を引き摺って逃走した。
「クソっ! 逃げられるぞ!」
兵アリの数は十六匹。最初からは数が減っているが、カワセミが戦えない以上、女王を追う暇はなかった。
「待てや! 俺らの100000pt!!!」
女王アリを逃すということは、100000ptを逃すということ。
女王アリの出現率が未知数な以上、ここで逃せばもう二度と出て来ない可能性があった。
しかし願いは通じず、女王の姿はどんどんと小さくなっていく。
今から追いかけることができても、もう間に合わないであろう。
「そんな―――」
女王は安堵した。此処まで来ればもう追ってこないだろうと。
女王は背を向けて逃げていたが、振り返って追手が居ないことを確認する。
―――その一瞬が最大の隙だった。
「こんばんは。私が何をしたか分かる?」
「!?」
女王は背後に居た存在に驚き、咄嗟に振り向く。
「そう。待ち伏せってやつ」
彼女は手に三本の矢を持っていた。
「私のデバフは……物でもつけられるんだよね」
それは彼女だけの……アスロラだけのスキル。
「【万物に平等なる呪いを】」
―――アスロラは矢に呪いを込める。
「【星の最期】」
三本の矢が眩しく輝き出す。
それを合図に、矢が宙に上昇し、女王の方に鏃を向ける。
矢は女王アリの体に白い軌跡を描き―――
―――爆ぜた。
「これでMVPは私ね」
女王は消え、星になった。
超新星爆発で4んで、星になるというね……皮肉ってやつ?
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