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バーチェル・レンジャー その7


「なあライラック。思ったんだが……」


 兵アリを倒し、ヨザクラ達の元へ戻ってきたライラックにライズが問いかける。


「あのでかいアリも網で捕まえればよかったんじゃないか?」


「……ああ、その通りだな。だが……」

「あいつで試し撃ちをしたかった。それだけだ……」


「そう、か…………?」


 本当は脳裏にもなかった事は黙っておく。そうだよな、網で捕まえれば……いや、実際試し撃ちはしたかったし、網で捕まえるだけじゃつまらないので良しとする。


「それにしても、ライラックのお陰で大分楽になったねぇ。今だって戦わなくても大丈夫だし」


「そうですね……確かに、ライラックさんが居なかったら苦戦していたと思います」


「……それすごいの俺じゃなくて網じゃない?」


 そう、今は仲間にしたアリに戦闘を任せている。テイムすると少々ステータスが上昇するようで、何の問題もなく戦えていた。


 暫く談笑していると、仲間のアリ達がこちらに戻ってくる。アリの襲撃が終わったようだ。

それと同時に、四人に通知音が鳴り響く。

受信トレイを開くと、それはイベントに関するお知らせだった。



「第一ウェーブクリア……あ、これ第二ウェーブ、第三ウェーブってあるやつだな」


「おっ、下にそれについての説明が書いてあるぞ」


「何何……?」




 ウェーブに関して

・ウェーブ中は蟻が襲撃してきます

・ウェーブは十分から一時間の間続きます

・ウェーブ終了後三十分から一時間後に再びウェーブが開始されます

・ウェーブ終了後からウェーブ開始までの間、プレイヤーはアリのコロニーを発見次第、攻撃をすることができます

・ウェーブを重ねるごとにアリの数や強さが増加、上昇します





「ふーん、でもさぁ。網使えばなんでも勝てそうな気がするんだけど……皆はどう?」


「そう思うぜ」

「そう思います」

「じゃあそうなのか……?」


「なんで本人が一番不安そうなんだよ」


「いや、網で捕まえるだけのヌルゲーになって欲しくないし……」


「でも、敵が強くなると味方も強くなるから負けるはずないんだよねぇ」


「くっ……なら、網無し縛りするか……?」


「「それは駄目」」


 仕方ない……例えヌルゲーになろうとも、一位を獲る勢いで網を振ってやろうじゃないか。







 ―――カワセミの勝算とは、この一撃であった。


「―――【大自在天(マヘーシュヴァラ)】」


 カワセミの掌の上に一つの鏃が創り出される。


「【星天終末(パーシュパタストラ)】―――!!!」


 それは破壊の力であった。

それは宇宙の終末を意味した。

それは使われることは無かった。


 これは破壊の力であった。

これはまだ何も意味しない。

これは模倣品であるが故に、これは初めて使われた。


 鏃は空気を切り裂き、轟音と衝撃波と伴に真っ直ぐ飛んでいく。


 女王アリを庇おうとした兵アリが、一匹、二匹、三匹と、次々に貫通され力尽きる。

遅れて行動をとった女王アリが体をよじる。


 鏃は既に女王へ届いていた。

それは腹部に大きく、深い穴を開けていた。


 カワセミがその場に倒れ込む。

この技の対価はMPとSTMの全消費、そしてステータスの一時的な半減であった。


 女王は逃走した。


 迫る追手を兵に任せ、傷ついた体を引き摺って逃走した。


「クソっ! 逃げられるぞ!」


 兵アリの数は十六匹。最初からは数が減っているが、カワセミが戦えない以上、女王を追う暇はなかった。


「待てや! 俺らの100000pt!!!」


 女王アリを逃すということは、100000ptを逃すということ。

女王アリの出現率が未知数な以上、ここで逃せばもう二度と出て来ない可能性があった。


 しかし願いは通じず、女王の姿はどんどんと小さくなっていく。

今から追いかけることができても、もう間に合わないであろう。


「そんな―――」


 女王は安堵した。此処まで来ればもう追ってこないだろうと。

女王は背を向けて逃げていたが、振り返って追手が居ないことを確認する。


 ―――その一瞬が最大の隙だった。


「こんばんは。私が何をしたか分かる?」


「!?」


 女王は()()()()()存在に驚き、咄嗟に振り向く。


「そう。()()()()ってやつ」


 彼女は手に三本の矢を持っていた。


「私のデバフは……物でもつけられるんだよね」


 それは彼女だけの……アスロラだけのスキル。


「【万物に平等なる(アイクァリタス・)呪いを(マレディクティオ)】」


 ―――アスロラは矢に呪いを込める。


「【星の最期(スーパーノヴァ)】」


 三本の矢が眩しく輝き出す。

()()()()()()、矢が宙に上昇し、女王の方に鏃を向ける。


 矢は女王アリの体に白い軌跡を描き―――


 ―――爆ぜた。


「これでMVPは私ね」


 女王は消え、星になった。

超新星爆発で4んで、星になるというね……皮肉ってやつ?



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