バーチェル・レンジャー その6
「…………!!」
兵アリは氷によって体のあちこちを抑えられ、さらに氷でその部分が冷やされ、身動きが取れなくなっていた。
ライラックは【蜻蛉切:偽槍】のMPを一気に消費することで、一瞬だけ補正値を跳ね上げる。
そして兵アリの胸部目掛けて跳躍し、その槍の穂先を向けた。
ATK+10000、ATK10080から放たれるその一撃、否十連撃は。
「【コンティニオス・スピア】!!」
槍専用スキル【コンティニオス・スピア】は、一閃を十閃にする―――!!
ズガン、と轟音が鳴り、周囲には煙が立ち込める。
放たれた槍は、兵アリの胸部を大きく貫き…………そして杖に戻る。
兵アリは倒れ、消失した。
◇
「あれって……勝てるやつなの?」
「罠は効かなそうだね……ボクはやられる前に離脱するよ」
「うん、懸命な判断だと思う」
イベントはゲーム内で三日間あるが、今日はまだ一日目だ。
三回デスするとゲームオーバーなので、無駄死にするような真似は控えたほうが良い。
相手が女王アリで、兵アリも二十匹程居るなら尚更だ。
戦闘職のプレイヤーが続々と女王アリのところに集合する。
リオは勿論、グラパーも一応戦闘職なので戦うことにした。
「リーダー、あれ勝てますか?」
グラパーがカワセミに問いかける。
「【龍神大百足】はもう使えないが……勝算はある」
「ふん、何であれボコボコにするだけよ」
「あ、僕も硝酸ならありますよ」
「そのギャグは称賛できないな!」
「俺が前に出る! お前らは後に続けぇ!」
オオッ、と雄叫びが上がる。女王アリも戦闘開始に勘付いたのか、少し後ずさり兵アリを前に出す。
「【偽装展開:三本矢】……!!」
カワセミが持っていた弓から三本の矢が生成される。
「【光の矢】【フラウグ】!」
「【陰の矢】【フィーヴァ】!」
「【光陰矢の如し】【フレムサ】!!」
―――一本目の矢、【フラウグ】が白く輝きながら一匹目の兵アリに命中した。
―――二本目の矢、【フィーヴァ】が黒く影を纏い二匹目の兵アリに命中した。
―――三本目の矢、【フレムサ】が放たれたその時には。
それは既に女王アリの額に命中していた。
「【鏃地雷】」
三本の矢がそれぞれ爆発を起こし、そしてカワセミの元へ戻ってくる。
爆発は兵アリにはダメージを与えたが、女王アリには威力が低すぎた。
「前よりも大分スキルが増えてる……やっぱり化物か何かなんじゃないかな」
「その攻撃を耐えるあれも化物だと思うけど」
「間違いないね。勝てる気がしないし」
「おいおい、なに弱気になってんだ? 負けたらイベント脱落だかんな、しっかりやれよ」
「はい……じゃあ、意味あるかはわかんないけどッ!」
グラパーは目の前に居る兵アリに様々な物を投げつけ、または刺し、または燃やした。
辛うじて状態異常にすることができたが、それは動きを鈍らせるだけで、トドメにはなり得ない。
「ナイスアシスト!【轟く大剣】!」
しかしそれはアシストとしては最高だった。
動きが鈍った兵アリにリオが渾身の一撃を叩き込む。
既に弱っていたアリは、リオの一撃によって呆気なく倒れた。
「いいコンビなんじゃない?」
「そうかもね……ははは」
二人は次の獲物を探した。
グラパー「はぁ。僕はどうせアシスト役ですよ……」
アスロラ「じゃあ私って何なの?」
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